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尹大統領「懲罰の政治」…貨物連帯をひざまずかせる対応、なぜ

登録:2022-12-10 01:48 修正:2022-12-10 08:51
歪んだ労働者観 
支持層の結集狙う
尹錫悦大統領が先月29日、ソウル龍山の大統領室庁舎で行われた国務会議に入場している/聯合ニュース

 民主労総全国公共運輸社会サービス労働組合貨物連帯本部(貨物連帯)のストライキが半月目をむかえた8日、野党は「政府の安全運賃制3年延長案」を受け入れるとして仲裁に乗り出したが、大統領室が強硬対応基調を確認したことで出口はふさがってしまった。労組を敵とみなす尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の歪んだ労働者観と支持層結集の雰囲気がかみ合った結果だ、との批判の声があがっている。

 尹錫悦大統領は貨物連帯によるスト開始直後の先月28日の首席秘書官会議で「違法を通じて得られるものはない」述べ、自ら主宰した翌日の国務会議ではセメント分野の貨物運送労働者に対し業務開始命令を下すなど、一貫して「法と原則」を強調してきた。

 政府がこの日に行った業務開始命令の鉄鋼と石油化学分野への拡大も、「処罰を公言した法治」が貨物労働者の業務復帰などの一定の効果をあげているという判断に沿ったものだ。

 労働界に対する尹大統領の「強攻ドライブ」は、支持層結集を導くのが政治的目的だとする分析が示されている。このところ尹大統領の支持率は上昇傾向を示している。リアルメーターが「メディアトリビューン」の委託を受けて先月28日から今月2日にかけて全国の2507人の成人に対して実施した世論調査では、尹大統領の国政遂行を「評価する」とした人の割合は38.9%を記録した。前週から2.5ポイントの上昇で、特に保守層では4.5ポイントも跳ね上がった。大統領室の関係者は尹大統領の最近の支持率上昇について「支持層が尹大統領に期待していた『原則的対応』基調が通じたため」と指摘した。

尹錫悦大統領が4日、龍山の大統領室で行われた貨物連帯のストについての関係長官会議で発言している=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 野党は尹大統領の「法に則って」との姿勢が対立をより一層あおっているとして反発した。共に民主党のパク・ホングン院内代表はこの日、国会で記者団に対し、「(政府与党間の協議を通じて安全運賃制3年延長を推進していた)政府与党が、2週間もたたないうちになぜ突然口をつぐみ、だめだと言うのか。答えは尹大統領だ」とし、「大統領には、この機会に『労働界と貨物連帯に完全に思い知らせてやろう。たたきつぶしてやろう』という考えがあるようにみえる」と述べた。

 専門家は尹大統領の「懲罰リーダーシップ」に懸念を示した。朝鮮大学政治外交学科のチ・ビョングン教授は本紙の電話取材に対し、「国民の要求と声に気を使うのではなく、自分の考えている自由民主主義の原理を推し進めることだけが大統領の役割だと勘違いしているようだ」とし、「社会対立の解消に努めるのではなく、懲罰しようという独断的なリーダーシップを固守しているという点で、懸念される」と述べた。仁川大学政治外交学科のイ・ジュンハン教授は「経済に及ぼす悪影響ばかりに注目する発言は、尹大統領の労働者観が既存の政治家たちとは異なる次元にあることを意味する」と述べた。尹大統領は大統領候補時代に「週120時間であろうとしっかり働けるようにしなければならない」、「手足による労働はアフリカとかがやること」という発言で何度も話題になった。

 「ストロングマン」のイメージの固定化は、長期的には尹大統領の足を引っ張るだろうとする分析もある。リアルメーターのペ・チョルホ首席専門委員は「スト対応は保守層結集を狙ったもの」としつつも「長期的には社会対立の調整と統合、トレランス(寛容)を追求する姿勢が必要だ。刀を振りまわし続けるイメージでは反発が生じうる」と述べた。

キム・ミナ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1070868.html韓国語原文入力:2022-12-09 03:00
訳D.K

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