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北朝鮮の核、「抑止手段」から「先制攻撃手段」に変わったのか

登録:2022-11-28 10:11 修正:2022-11-28 11:27
北朝鮮の「核武力政策法」採択の意図、異なる解釈 
北朝鮮、新型短距離ミサイルを開発、戦術核を増強
北朝鮮の金正恩労働党総書記兼国務委員長が9月8日、平壌の万寿台議事堂で開かれた最高人民会議第14期第7回会議で施政演説を行っている/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 北朝鮮は2019年2月のハノイでの朝米首脳会談決裂以降、迎撃回避能力と打撃の精度が向上した新型戦術誘導兵器を開発している。具体的には、不規則に上下に動き迎撃が難しい北朝鮮版イスカンデル(KN23)、北朝鮮版戦術地対地ミサイル「ATACMS(KN24)」、超大型多連装ロケット砲(KN25)などの新型短距離弾道ミサイルと、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射している。これらの兵器には戦術核弾頭を搭載することができる。北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発を通じて米本土に対する報復能力の確保(報復的抑止)に力を入れてきたが、韓国に向けた戦術核能力も着実に発展させている。

 特に、北朝鮮が9月8日に採択した「核武力政策法」をめぐり、北朝鮮の核が米国に対する「抑止手段」から、韓国に向けての「先制攻撃手段」になったという報道が多くなされた。北朝鮮に対する非核攻撃に対しても核を先制的に使用できると規定し、「先制核攻撃」の基本原則が明文化されたということだ。特に、核武力政策法が明らかにした「核兵器使用の5つの条件」を根拠に、北朝鮮核教理(核ドクトリン)が非常に恣意的で攻撃的であり、急進的だという懸念が広がった。また、「核兵器またはその他の大量殺戮兵器による攻撃が強行あるいは差し迫ったと判断される場合」まで核兵器使用の敷居を下げ、誤判断や事故による偶発的な核戦争勃発の危険性も高まったという指摘がある。

 核武力政策法を通じて、北朝鮮が核兵器を使って実際の戦争で勝利を図る核戦争遂行能力(nuclear war-fighting capability)を裏付ける使用条件と指揮統制分野を具体的に明示したという解釈も出ている。朝鮮労働党の金正恩(キム・ジョンウン)総書記兼国務委員長が9月25日から10月9日にかけて、北朝鮮軍の戦術核運用部隊・長距離砲兵部隊の訓練での様々な核弾頭運搬手段の実戦運用態勢を点検したことで、こうした解釈がいっそう後押しされた。

 これとは異なり、核武力政策法は「戦争抑止」を基本としつつ、抑止に失敗した時の決定的勝利のための「作戦的使命」を遂行すると明示しているなど、大きな枠組みで抑止戦略の一環とみなすべきだという主張もある。国防部の企画調整室長を務めた世宗研究所のキム・ジョンソプ副所長は、「北朝鮮が核ドクトリンを法制化し公開を明らかにしたのは、いつ、どんな条件で、どんな方法で核が使われると公言することで不必要な誤解と危機の高まりを防ぎ、核抑止力を確実にするという意図」だと述べた。

 キム・ジョンソプ副所長は「非核攻撃に対して核兵器を先制使用できるという核ドクトリンは、敵対国と国境を接していて通常戦力が劣る核保有国が常に採択してきた」とし「冷戦時代のNATO、冷戦終結後のロシア、インドと紛争中のパキスタンの核ドクトリン」だと説明した。異例で急進的という通念とは異なり、北朝鮮の核ドクトリンは冷戦時代から形成されてきた核抑止の普遍的論理と歴史的経験を踏襲したものだということだ。

クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1069072.html韓国語原文入力:2022-11-27 21:14
訳C.M

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