北朝鮮は4日、韓米合同空中演習「ビジラントストーム」の期間延長に反発し、「自主権と安全利益を侵害しようとする敵対勢力のいかなる企図も絶対に黙過せず、最後まで超強力対応で応える」と述べた。ビジラントストームをめぐって南北が強対強の対峙を続け、朝鮮半島の緊張が急激に高まっている。特に最近は、南北の対抗措置がほぼ即時で行われ、偶発的な衝突の懸念が高まっている。
北朝鮮外務省はこの日、朝鮮中央通信に公開した報道官声明で、「米国は軽挙妄動してはならない」とし、このように明らかにした。前日、韓国政府がビジラントストーム演習をさらに1日延長すると、「取り返しのつかない大きな失敗」(パク・ジョンチョン労働党中央軍事委員会副委員長)だと直ちに反発し、4日午後まで武力示威を行ったのに続き、国連安全保障理事会公開会議(韓国時間5日午前4時)を控えて追加対応を警告したのだ。 北朝鮮はまた、最近朝鮮半島の緊張が高まっていることについても、「明らかに米国と南朝鮮が我々に対する『圧倒的対応』を云々し、史上最大規模の合同空中打撃演習によってもたらされたもの」だとし、韓米側に責任があると主張した。
北朝鮮は先月31日に始まったビジラントストームを「侵略型戦争演習」(31日、外務省報道官談話)と非難し、前例を超える強力な武力示威を繰り広げてきた。
北朝鮮は2日、分断後初めて東海(トンヘ)の北方限界線(NLL)以南に弾道ミサイルを発射した。北朝鮮は同日、このミサイルを含め計25発のミサイルを発射したが、一日に発射したミサイルとしては最も多かった。
3日には今年5月に続き5カ月ぶりに大陸間弾道ミサイル(ICBM)と推定される長距離弾道ミサイルを発射した。韓国側も同日、NLL以北の海上に空対地ミサイル3発を発射して対抗した。南北は共に9・19南北軍事合意を破ったわけだ。
特に韓国側が4日まで予定していたビジラントストーム演習を5日まで一日延長したことを受け、北朝鮮は同日夜、短距離弾道ミサイル3発と砲弾80発余りを発射するなど、事実上、朝から深夜まで一日中武力示威を行った。
4日にも北朝鮮は午前11時頃から約4時間にわたり、多数の戦闘機と爆撃機を動員して戦術措置線以北(北朝鮮領空)の内陸と東海・西海(ソヘ)上などで空対地射撃や爆撃などを行い、F35Aなど韓国の戦闘機が緊急出撃した。
北朝鮮が韓米合同空中演習に特に敏感な反応を示すのは、韓米に比べて格段に劣勢の空軍力のためだ。特に今回のビジラントストームは、韓米の航空戦力240機あまりが参加する最大規模であり、北朝鮮の反発はいっそう大きくなった。北韓大学院大学のヤン・ムジン教授は「北朝鮮は、戦略資産が展開される韓米合同演習に対して、北朝鮮を直接攻撃する『斬首作戦』とみなしている」と述べた。
韓米合同演習に対する北朝鮮の「敏感な反応」は、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が2019年8月5日、ドナルド・トランプ大統領(当時)に送った親書でもよく表れている。 当時、金委員長は「実務級2カ国間交渉を控えて挑発的な合同軍事演習が取り消しあるいは延期されると信じていた」とし、「私は気分を害しており、これを閣下(トランプ)に隠すつもりはない」と強く抗議した。
ビジラントストームは5日に終了する予定だが、南北の緊張は長期化する兆しを示している。韓米軍当局は3日(現地時間)、ワシントンで開かれた年次韓米安保協議会(SCM)の共同声明で、「北朝鮮が核の使用を企てた場合は、金正恩政権は終末を迎えるだろう」と警告し、「合同演習の定例化」など北朝鮮にとって極めて敏感な内容に合意した。
キム・チャンス元大統領府統一秘書官は、「北朝鮮はこれまで、対南・対米交渉の前提として合同演習の縮小・中断を掲げており、北朝鮮が最も激しく反応するのが体制安全問題だ」とし、「北朝鮮が最も敏感に思っているこれら2つの問題に、SCM共同声明が同時に触れたわけだ。朝鮮半島情勢緊張のピークに向けた極限の対決にエンジンがかかったようだ」と述べた。