韓日外交次官が25日に会談し、強制動員被害者賠償問題など両国の主要懸案について集中的に議論したが、明確な結論は出せなかった。しかし、先月の韓日首脳の「略式会談」以後、両国の外交当局者が相次いで会い、「具体的な解決策」を打ち出すために議論に拍車をかけている。
チョ・ヒョンドン外交部第1次官は同日午後5時40分から約90分間、東京千代田区の帝国ホテルで森健良外務省事務次官と両国間の最大懸案である強制動員被害者賠償問題などについて話し合った。チョ次官はこの場で、自ら主宰した韓国官民協議会(4回開催)での議論と被害者の立場など、韓国側の全般的な状況について説明した。具体的には、日本企業の謝罪や賠償金作りへの被告企業の参加など被害者の要求事項を伝え、日本側の「誠意ある対応」が必要だという点を強調したという。外交部当局者は会談後、記者団に対し「強制動員被害関連の最高裁判決に対する履行主体や財源問題、解決案の適用範囲など、官民協議会で議論された多様な案を日本側に伝え、議論を深めることができた」と述べた。チョ次官は26日に予定されている第11回韓米日外務次官協議会に出席するため、東京を訪れた。
韓日外交当局は最近、この問題の解決策として「併存的債務引受」(債権者の同意有無と関係なく、第三者が債務者と約定を結び、ひとまず債務を返済すること)を検討しているという。共同通信は23日、韓国の「日帝強制動員被害者支援財団」(以下財団)に敗訴が確定した日本企業の賠償金を肩代わりさせる案を中心に、両国政府が本格的な協議に入ったと報じた。日本政府はこの案なら「受け入れられる」という立場を示しているという。
だが、韓国の財団が日本企業の賠償金を肩代わりするような「果敢な解決策」に踏み切るためには、被害者と遺族の同意が必ず必要だ。また、高齢の被害者たちがこの解決策に同意するためには、日本企業が彼らに会って謝罪するなど誠意ある姿勢を見せなければならない。そのためか、チョ次官は同日、羽田空港で記者団に「(併存的債務買収は)一つのオプションに過ぎず、決まったことはない。(日本政府と)話し合いの過程にある」と述べるにとどまった。
チョ次官は交渉を急がないという立場も重ねて示した。チョ次官は「高齢の被害者を考えれば早く解決した方が良いが、解決のために考慮すべき点が多い。ある時点までにやらなければというふうには急がない」と語った。さらに「日本政府の態度は今の政権になってから前向きだが、まだ被害者が望んでいるほどの反応とは言いがたい」と付け加えた。 同日も長い間議論が続いたが、依然として韓国が期待する水準の反応はなかったものとみられる。
韓日は来月予定された国際会議を契機に首脳会談を試みるなど、対話の流れを続ける通しだ。 11月にはASEAN首脳会議(10~13日)や主要20カ国・地域(G20)首脳会議(15~16日)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議(18~19日)など主要会議が相次いで予定されている。 この機会を利用して、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と岸田文雄首相が会うことになれば、交渉に弾みがつくだろう。両国政府は北朝鮮の核とミサイルの脅威に対応するためには協力が欠かせないと見ている。
だが、日本が直ちに企業の謝罪を受け入れるなど「誠意ある対応」に乗り出す可能性は低いとみられる。安倍晋三元首相の死去後に浮き彫りになった旧統一教会問題で岸田首相の支持率が急降下したためだ。岸田首相が韓国と妥協する姿を見せれば、支持率がさらに下がる可能性がある。