気候変動による極端な天候には、どのような動物が持ちこたえるだろうか。寿命が長く子どもを少なく産む動物は、寿命が短く子どもを多く産む動物に比べ、日照りや暴雨などの極端な天候から受ける影響が小さいという分析が出てきた。
デンマークの南デンマーク大学とノルウェーのオスロ大学の研究チームは24日、「全世界の哺乳類157種に対する10年以上の個体数変動の資料をもとに、同期間の気候および天候資料を比較分析した結果、寿命が長く子どもを少なく産む動物は、寿命が短く子どもを多く産む動物に比べ、極限の天候には強いという明確な傾向を発見した」と明らかにした。研究チームの論文は学術誌「eLife」最新号に掲載された(DOI:10.7554/eLife.74161)。「eLife」は2012年に米国のハワード・ヒューズ医学研究所、ドイツのマックス・プランク協会、英国のウェルカム・トラストが共同で創刊したライフサイエンス分野のオープンアクセスジャーナル(無料ジャーナル)だ。
論文共同著者である南デンマーク大学生物学科のオーウェン・ジョーンズ教授は、「寿命が長く大きな動物は苛酷な環境に耐え、寿命が短い小動物に比べ長く生存し子どもを産んで育てることに成功してきた。前者に該当する代表的な動物としては、ラマ、長生きするコウモリ、ゾウなどがあり、ハツカネズミ、フクロネズミ、珍しい有袋類(哺乳類の1系統)であるフサオネズミカンガルーなどが後者に該当する」と述べた。ラマは妊娠期間が1年で子どもを1頭産み、15~20年まで生きる。フクロネズミは妊娠期間が約30日で寿命は2~4年、子どもは6~12匹産む。
相対的に大きな動物は、1頭の子どもにエネルギーを集中したり、状況がよくなることを待つことができる一方、寿命が短い小さなげっ歯類は、短期間に大きな個体数の変動を経験する。げっ歯類は脂肪の貯蔵量が少ないため、長い日照りによってエサの供給の大部分を占める花や虫などが失われると、飢え死にすることになりうる。
厳しい天候の影響に相対的に強い哺乳類の例としては、アフリカゾウ、チンパンジー、シベリアトラ、シロサイ、アメリカバイソン、ハイイログマ、ラマ、大キクガシラコウモリなどがある。相対的により脆弱な哺乳類としては、アビシニアングラスラット、チリマウスオポッサム、カナダレミング、ツンドラハタネズミ、ホッキョクギツネ、フサオネズミカンガルーなどがある。
極限の天候に脆弱であるといっても、必ずしも絶滅の脅威に直面するわけではない。研究チームは「小さな哺乳類の場合、極限の天候には脆弱だが、環境が良好な時に子どもを多く産むことで個体数を大幅に増やすことができる。したがって、極限の天候に対する脆弱性と絶滅の危機を同一視してはならない」と明らかにした。論文の第1著者である南デンマーク大学の博士研究員ジョン・ジャクソン氏は、「人間による生息地の破壊、密猟、汚染などが、気候変動よりも動物の絶滅にいっそう脅威となる」と説明した。
研究チームは、今回の研究結果は動物種が気候変動によって気象状況と生態の景観が変わり続ける場合にどう対処できるかについての洞察を提供すると述べた。ジョーンズ教授は「気候変動は将来、よりいっそう極端な天候を引きおこすと予想される。動物はつねにそうしてきたように、その極限の天候を克服しなければならない。したがって今回の研究分析は、多くの動物種が彼らの一般的な特性をもとに、将来の気候変動にどう対応するのかを予測することに役立つはずだ」と述べた。