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アジア幸福指数1位、「この国」の秘訣は

登録:2022-07-01 08:56 修正:2022-07-01 09:49
国会未来研究院、分析報告書を発表 
コロナ禍でも高い経済成長率を記録 
「開かれた政策」で信頼と自由を拡大 
2013年以降、下り坂の韓国とは対比を成す
台湾の首都台北の様子。台湾はここ数年間、幸福指数でアジア地域の首位を守っている=ピクサベイ//ハンギョレ新聞社

 3月に発表された国連世界幸福度報告書で、台湾は中東を除くアジア地域で最も幸せな国に選ばれた。

 台湾の幸福指数は6.512点で、全146カ国中26位。中国(72位)はもちろん、日本(54位)や韓国(59位)にも大差をつけた。今年が初めてではない。2018年以降4年間、このような流れが続いている。

 国連幸福度報告書は幸福度を説明する指標として、1人当たりの国内総生産(GDP、購買力平価)や社会的支持(問題が生じた時に助けてくれる人がいるかどうか)、期待寿命、人生における選択の自由、寛容(この1カ月間で寄付したかどうか)、腐敗に対する認識(腐敗が蔓延していると考えるかどうか)の6つを採用している。台湾はこのうち、社会的支持と寛容、選択の自由の3項目で韓国よりランクが高かった。幸福度調査とともに実施するギャラップの肯定的・否定的感情に関する調査でも、前日楽しいこと、興味深いことがどのぐらいあったかを評価する肯定的感情において、台湾は41位で、韓国(117位)を大きく上回った。

 台湾が最初からアジア1位だったわけではない。2013年の幸福報告書では、韓国と台湾はともに幸福指数6.2点台で世界40位圏だった。しかし、その後、両国の方向が分かれた。韓国は幸福指数が大幅に下落し、ランキングが下がった一方、台湾は指数とランキングが共に上昇気流に乗った。

台湾の幸福指数上昇を牽引した3つの要素

 中国の軍事的脅威と経済的圧迫が日増しに強まる中でも、台湾人の幸福指数が上昇した秘訣はどこにあるのだろうか。

 国会未来研究院暮らしの質データセンターは28日、台湾の幸福度が上昇した原因を分析した「国民幸福フォーカス」報告書を発表した。

 これによると、転換の契機になったのは2016年の国民党から民主進歩党への政権交代だった。報告書は、2010年代初めまでは若者たちが台湾島を鬼に呪われた島(鬼島)と呼ぶほど、台湾人の間では不満が広がっていたと指摘した。しかし、蔡英文総統が政権について以降、最低賃金法など庶民寄りの政策と半導体のような中核産業の戦略的育成を通じて、経済と社会の活力が再び蘇り始めた。

 暮らしの質データセンターのホ・ジョンホ・センター長は「6つの幸福指標の変化を年度別に調べた結果、台湾人の幸福指数の上昇を牽引したのは物質的生活水準と社会的支持、そして選択の自由の3つであると推定できることが分かった」と話した。

 最も目を引くのは、高い経済成長率による生活水準の向上だ。コロナ禍にもかかわらず、台湾はこの2年間、過去最長で最高の輸出実績を上げた。韓国が2020年にマイナス成長を記録するなど、経済が動揺している間にも、台湾は2020年3.1%、2021年6.28%と高度成長を続けていた。世界1位の半導体ファウンドリー(受託生産)企業TSMCがけん引した半導体輸出の好調が大きな役割を果たした。これに支えられ、台湾では1人当たりのGDPも近いうちに韓国を追い越せるだろうという期待が高まっている。国際通貨基金(IMF)の統計によると、2021年現在の台湾の1人当たりのGDPは3万3775ドルで、韓国(3万4801ドル)に迫っている。

 新型コロナウイルス感染症の拡散初期に強力なコロナ防疫政策を展開した政府に対する信頼が一層高まったことも、幸福指数の上昇に一役買った。

 台湾政府はマスクが品薄だった際に、いち早くデジタルマスク配給システムを作るとともに、このシステムに市民開発者が作った「マスクマップ」を結合させて効率的に対応した。これは韓国の「マスク5部制」のモデルにもなった。「ウィズコロナ」へと防疫政策を切り替えたことで、最近では新型コロナウイルス感染症の新規感染者が大幅に増加しているが、ジョンズ・ホプキンス大学コロナウイルス感染症資源センターの集計によると、現在人口10万人当たりの新型コロナウイルス感染症の死亡者数は27人で、韓国(48人)よりはるかに少ない。

 報告書は「2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の経験に基づいた迅速な防疫対応、堅固なウイルス検査、厳しい水際対策、適切な個人保護装備の配分、ウイルスについての透明な情報伝達、高い保健意識などが複合的に働いた結果」だと分析した。「開かれた政府」を掲げた蔡英文政権の透明な政策と意思疎通に対する信頼が上昇し、市民が積極的にマスク着用、外出自粛などで協力したということだ。

 報告書は「新型コロナウイルス感染症の初期、マスク品薄状態の中でソーシャルメディアなどを通じて市民の『我OK、你先領(私は大丈夫だから、先にどうぞ)』運動が起き、危機状況によく対処することができた」と評価した。

台湾のネットユーザーの「我OK、你先領」マスク運動。出典:台湾マスク運動ページ=国会未来研究院提供//ハンギョレ新聞社

「ヘル朝鮮」韓国社会に与える示唆点

 第三に、改革的措置を通じた社会統合と自由の拡大だ。

 台湾政府は高い経済成果をもとにセーフティネットの強化に努め、最低賃金や育児手当て引き上げに乗り出す一方、ジェンダーやマイノリティなどアイデンティティ政治でも開放的な態度を示し、市民の社会的自由を拡大した。例えば、台湾は2019年、アジアでは初めて同性結婚を正式に認めた。

 報告書は、台湾が外部では中国と敵対的関係を維持しながらも、内部の民主主義と自由実現を強調したことを意味付けた。2021年に米国のフリーダムハウスが発表した世界自由指数によると、台湾の自由指数は世界7位に上昇している。国境なき記者団(RSF)が発表した2021年の世界報道自由度ランキングでは、韓国(42位)に続き43位となった。今年2月には英国のエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が付けた「2021年民主主義指数」でも、世界で8番目に強力な民主主義国家に選ばれた。

 報告書は一時「鬼島」と自嘲していた台湾の幸福度が上昇したのは「ヘル朝鮮(地獄を意味するヘルと朝鮮を組み合わせた言葉で、特に若者たちにとって厳しい現実を表す)」と自嘲する韓国社会に示唆するところがあると強調した。

 ホ・センター長は「コロナ禍の統制から抜け出し日常生活に復帰しつつある今、韓国の幸福度の向上のためには世界的景気低迷の被害を最小化すると同時に、政府の政策に対する信頼を回復し、社会統合と自由拡大のための政策的努力を傾ける必要がある」と話した。

クァク・ノピル先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/science/future/1049075.html韓国語原文入力:2022-06-3014:05
訳H.J

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