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世界最大の半導体受託生産（ファウンドリ）企業であるTSMC=新竹（台湾）/ロイター・聯合ニュース

（1の続き）

台湾経済の象徴TSMC…世界10大企業へ

　サムスン電子と共に世界の半導体産業を代表する企業のTSMCは、台湾の電子部品中心の経済の成功を象徴している。システム半導体を受託生産するファウンドリ分野でシェア50%を越える独歩的企業であるTSMCは、2019年末にサムスン電子の時価総額を越え、抜きつ抜かれつを繰り返した末、2020年3月からはリードを続けている。今月4日の時点でTSMCの時価総額は594兆ウォン（約61兆円）で、455兆ウォン（約46兆7000億円）のサムスン電子を圧倒している。電子製品の需要の爆発でシステム半導体の需要が急増し、安価で安定的な受託生産で頭角を現したTSMCが注目を集めるようになったのだ。メモリー半導体分野で最強のサムスン電子の株もまた、2020年1月初めには1株5万5500ウォン（約5700円）だったものが4日現在では6万7900ウォン（約6970円）にまで上昇しており、コロナの恩恵を受けた株とされるが、TSMCは2020年1月の1株当たり339.5台湾ドル（1万4560ウォン、約1490円）から4日現在では534台湾ドル（2万2900ウォン、約2350円）と、大幅に上昇している。

　TSMCはサウジアラビアの石油企業サウジアラムコと共に、時価総額世界10位以内に入る2つのアジア企業の内のひとつでもある。台湾にはTSMCの他にもUMC、メディアテック、リアルテックなど、最上位圏の半導体企業が少なくなく、アップルのiPhone（アイフォン）を受託生産するフォックスコンも台湾の企業だ。

中国の台湾侵攻可能性は高いというが、全く「変数」にならず

　結局、コロナ禍が始まった2020年の台湾の経済成長率は3.36%で、世界の主要国の中で最も高いかった。これは、コロナ防疫に成功したと評価される韓国の成長率（-0.9%）はもちろん、ゼロコロナ状態をかなりの期間維持した中国の成長率（2.2%）よりも高い。台湾が経済成長率で中国を上回ったのは1991年以降で初めて。コロナ禍が本格化した2021年にも、台湾は6.45%という高い経済成長率を達成した。同年の韓国の成長率は4.0%で、中国は8.1%だった。韓国と中国の成長率は2020年の低成長のせいで高くなっている一方、台湾は純粋な成長だ。

　米中対立の激化により中国の台湾侵攻の可能性がいつにも増して高まっているとする懸念の声があがっているものの、台湾の経済成長にとってそれは全く変数になっていない。台湾の対中国輸出額は2019年の1321億ドルから2021年には1888億ドルへと42.9%増加している。台湾の輸出増加の大半が中国によるものだ。台湾の輸出全体に中国が占める割合も、2019年の40.1%から2021年には42.3%へとむしろ高まっている。台湾にとって第2の輸出相手である米国に対する輸出額は、2019年の462億ドルから2021年には656億ドルへと42.0%増加しており、輸出額に占める米国の比率は14.1%から14.7%へと小幅に上昇している。韓国より台湾の方が確実に「米国に安保を任せ、経済は中国に密着する」という、いわゆる「安米経中」を実践しているわけだ。

「半導体業界だけが恩恵」台湾市民に不満も

　台湾政府は「韓国を追い越す」という見通しを主要な政治的成果として宣伝しているが、一部の市民は不快感を示している。1人当たりのGDPが急増して韓国を追い越したとしても、台湾の一般市民の実際の月給や生活水準は上がっていないというのだ。台湾の今年の最低賃金は時間当たり168台湾ドル、約7200ウォン（約739円）だ。これは今年の韓国の最低時給9160（約940円）ウォンの78.6%だ。

　経済成長が主に電子産業分野で実現していることで、恩恵は特定分野の従事者だけが受けているに過ぎず、全体に均等に行き渡ってはいないとの指摘もある。台湾メディア「中国時報」は昨年12月17日、市民が「何の役に立つのか。みな半導体業界が稼ぐ金だ。他の業界は死にそうだ」と不満をぶちまけたと報じている。