台湾、今年中に韓国に追いつくか…３年早まった「経済追い越し」（１）
「再び『アジア四小龍』の先頭になるだろう」
昨年10月10日、台湾の建国記念日である双十節の演説での、台湾の蔡英文総統の発言だ。2000年代に入ってからはあまり使わない単語である「アジア四小龍」を蔡総統があえて口にしたのは、台湾経済が近いうちに韓国を追い越すと見込まれているためだ。アジア四小龍とは、1970年代以降に経済成長を成し遂げた韓国、台湾、香港、シンガポールの4国を指す。香港とシンガポールが人口1千万人に満たない都市国家であることを考えれば、事実上は台湾が韓国をまもなく追い越すという宣言だった。台湾の人口は2300万人で、5100万人の韓国の45%ほど。
IMFの見通し、2025年から2022年に3年前倒し
蔡総統の発言は、予想より早く実現する可能性が高まっている。国際通貨基金（IMF）は昨年10月12日に発行した「ワールド・エコノミック・アウトルック」で、台湾の1人当たりの国内総生産（GDP）が2025年には韓国を上回るとの展望を示した。それから半年後の先月25日に発行された「ワールド・エコノミック・アウトルック」では、その時期を3年も前倒しし、今年には台湾（3万6051ドル）が韓国（3万4994ドル）を上回ると予想した。IMFは、昨年10月には韓国と台湾の2022年の成長率を両者同じく3.3%とみていたが、今年4月には韓国を2.5%、台湾を3.2%に修正した。韓国は大きく低下、台湾は小幅に低下するとみて、両国のGDP見通しにも変化が生じたのだ。
両国の経済状況を比較する代表的な指標である1人当たりのGDPで、台湾が今年韓国を追い越すとの発表に対し、台湾政府は歓呼し、韓国では懸念の声があふれた。この見通しがその通りに実現すれば、台湾は2003年以降初めて1人当たりのGDPで韓国を上回ることになる。
コロナ防疫の成功・電子部品中心の産業構造「ウィンウィン」
台湾の経済成長で最も重要な要因は、新型コロナウイルス防疫の成功と半導体を中心とした電子産業の善戦だと分析される。2015年からコロナ禍直前の2019年までの台湾の成長率は1～3%台だったが、コロナ禍のただ中である2020年と2021年には輸出全体の半分を占める電子分野の輸出が急増し、経済が大きく成長した。
台湾のコロナ防疫の実績は統計によく現れている。国際統計サイト「アワー・ワールド・イン・データ」の資料によれば、2020年12月31日時点の台湾の累計のコロナ感染者数は799人で、1年後の昨年末時点での累計感染者数は1万7029人。オミクロン株まん延のさなかの今月3日時点での累計感染者数は17万3942人。同時期の韓国の累計感染者数は2020年末が6万1769人、2021年末が63万838人で、今月3日が1740万人。累計死者数は、今月3日の時点で台湾が868人、韓国が2万3007人。
コロナ防疫の成功は、台湾特有の電子製品中心の産業構造と相まって輸出を勢いづけた。2020年に始まったコロナ禍は世界経済に途方もない打撃を与えたが、スマートフォン、ディスプレイ、コンピューターなどの家庭・事務用電子製品の需要を爆発させた。台湾は電子部品と通信・ディスプレイ製品の2品目が輸出全体に占める割合が52.2%（2021年）で、半分を越える。
台湾財政部統計処の資料によれば、特に半導体を中心とした電子部品の輸出額が、2019年の1125億ドルから2021年の1719億ドルへと急増している。わずか2年で実に52.8%増加したのだ。台湾の総輸出額に電子部品の輸出額が占める割合は、2019年の34.2%から2021年には38.5%に上昇。1000ウォン分を輸出したとすると、385ウォン分は半導体などの電子部品であるという勘定だ。2017年から2019年までの台湾の電子部品の輸出額の増加が5%（1071億ドル→1125億ドル）だったのと比べれば、注目に値する成長だ。（2へ続く）
訳D.K
