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韓国人が最も多く死亡する年齢…男性85.6歳、女性90歳

登録:2022-05-12 05:19 修正:2022-05-12 15:49
[イ・チャンゴンの政策オデッセイ] 
韓国保健社会研究院のウ・ヘボン博士 
1970年代以降の最頻死亡年齢を分析 
統計庁は公式分析を出さない 
男女の寿命格差が減少…4年に 
「高卒以下」「大卒以上」で3年の格差 
学歴が低いほど、死亡時期が不確実
ピクサベイ//ハンギョレ新聞社
イ・チャンゴンの政策オデッセイ//ハンギョレ新聞社

 体は個人と社会を記録する。体に刻まれたしわと習慣、大小の傷、そして最後には死に至らせる疾患は、体の主の人生、すなわち生涯の跡だ。同時に体には、共同体の変遷と明暗、ある社会の歴史が投影される。寿命は、そのような体のメカニズムと変化を内蔵している。例えば、寿命の増加はある社会の歴史的成就と進歩を証明する。しかし、所得や教育などの社会経済的地位に応じてそれぞれ異なる寿命の格差は、構造的不平等を示す。

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2020年に生まれた赤ちゃんは、何歳まで生きるのか

 「期待寿命」は、0歳の新生児の期待余命だ。すなわち、生まれたばかりの赤ちゃんがあと何年生きることが可能かを推定した期待値であり、特定年度の年齢別・性別死亡率は、その年に生まれた子どもたちが死ぬまで適用されると仮定した統計値だ。「平均寿命」は統計学的には使われない用語だが、一般には期待寿命のような意味で通用している。ならば、2020年に生まれた赤ちゃんは、何歳まで生きられるのだろうか。

 統計庁によると、韓国人の期待寿命(2020年時点)は平均83.5歳。男性は80.5歳、女性は86.5歳だ。これは、大韓民国の女性は概して男性より6年長く生きるという意味だ。50年前の1970年はどうだったのだろうか。この値は、男性は58.7歳、女性は65.8歳で、平均は62.3歳だった。50年間で寿命が21.2年増えた。毎年、平均で0.4年増加したのだ。多くの要因が作用した結果だが、何より所得増加と技術インフラが嬰児の死亡を大きく減らしたおかげだ。

 期待寿命の上昇は、韓国社会が注目に値する成長を成し遂げ先進国になり、同時に速いスピードで超高齢化社会に向かっていることを示す。ところが、私たちが見慣れているこのような期待寿命の指標と議論は、韓国社会の高齢化現象の実体を正確に示すには限界がある。時には実際より過小推定するリスクも高い。

 理由は明瞭だ。先進国では、寿命に直結する死亡が、通常は老年期の狭い年齢区間にわたって集中的に発生するが、期待寿命指標はあくまで平均を示すだけであり、集中的な死亡区間、すなわち寿命の実際の「中心」を完全には示すことはできないからだ。

最頻死亡年齢の推移 //ハンギョレ新聞社

 このような理由から、私たちが注目しなければならない指標は最頻死亡年齢(Mode of age at death)だ。死亡頻度が最も多い年齢を意味するこの指標は、ある社会の大多数の構成員が実際に最も多く死亡する「中心」地点を示すだけでなく、韓国社会の高齢化と死亡不平等の現住所を、既存の期待寿命指標よりはるかに体感できるよう表現する。

 韓国保健社会研究院のウ・ヘボン研究委員は今月初め、注目に値する新たな最頻死亡年齢統計を出した。1970年代以降の韓国社会の最頻死亡年齢の傾向と性別格差などを分析し、結果を出したのだ。その結果によると、韓国人の最頻死亡年齢(2015~2019年の期間の5年平均)は、男性は85.6歳、女性は90歳だった。自殺や事故などで早く死亡する人たちを除く大多数の女性は、すでに期待寿命の85歳を超えて90歳まで生きると推測できる値だ。男性も期待寿命は80歳だが、すでに85歳を超えて生存するという推定が可能だ。指標を越えた現実では、もちろんそれ以上に生きる人たちもいる。

 注目しなければならない点は、最頻死亡年齢が示す韓国人の高齢化の姿だ。大多数の韓国人は、80歳前後で死亡するのではなく、すでに90歳近くで死亡しており、韓国社会の高齢化は期待寿命が示す姿よりはるかに深刻であり、より長い目での老後対策が必要だということを示している。したがって、個人の老後設計はもちろん、健康保険や国民年金などの高齢期社会の政策デザインも、そのような現実に合わせて点検する必要があることを示唆している。

 最頻死亡年齢をもとにしてみえる男女間の寿命格差の様子も、期待寿命の値とは少し違って現れた。1970年代初期(70~74年)の男性の最頻死亡年齢は67.50歳であり、女性は80.96歳に至った。産業化時代には、性別死亡格差は約13.46年になり、男性は女性より13年以上先に死亡した。この差は、1980~90年代の韓国社会の高度成長期を経て急速に減少し、90年代初期(1990~1994年)には、男性は76.16歳、女性は83.13歳となった。男女間の最頻死亡年齢格差が7年程度に縮まったのだ。2000年代初期(2000年~2004年)には、男性の最頻死亡年齢も80歳を初めて超えた。この時期の最頻死亡年齢は、男性は80.08歳、女性は85.31歳で、差はいつのまにか5.23年にまで減った。ついに近年(2015年~2019年)になると、男女間の性別死亡格差は、男性は85.60歳、女性は90歳を記録し、4.40年にまで減った。期待寿命指標で生じる性別格差が6年になったことを考慮すると、さらに1.6年縮小したかたちだ。

 最頻死亡年齢でみられるように、男女間の性別死亡格差は毎年小さくなり、「女性は男性よりはるかに長く生きる」という世間の通念より少ない4年程度だという事実がわかる。このように差が縮められ続けるのであれば、いつの日か「百年偕老」(夫婦がともに100歳まで生きること)という言葉が、単なる決まりの祝いの言葉ではなく、現実の言葉になる日が来るかもしれない。

 1970年以来、他国ではどのような変化があったのだろうか。代表的な超高齢化社会である日本の最頻死亡年齢をみると、1970年代初期は、男性は78.23歳、女性は82.32歳だった。そして、20年前の2000年代初期の日本女性の最頻死亡年齢は、すでに90歳を超えた。当時の男性も85歳を超えた。近年(2015~2019年)は、男性は87.66歳、女性は92.49歳を記録した。同期間のフランスは、男性は88.16歳、女性は91.18歳で、スウェーデンは、男性は85.89歳、女性は90.15歳。米国は男性は86.01歳、女性は89.85歳となった。

 ウ研究委員は「最頻死亡年齢の分析の結果、韓国社会の高齢化は、私たちが考えるより生涯自体が長く、深刻だということをみせている」としたうえで、「生存期間の平均値に相当する期待寿命指標に加え、最頻死亡年齢をさらに生産し管理する必要がある」と述べた。統計庁は、期待寿命は毎年発表するが、最頻死亡年齢はこれまで公式には出したことがない。。

秋夕を控えた2020年9月27日午前、仁川富平区にある仁川家族公園を訪れた市民が墓参りをしている=仁川/パク・ジョンシク記者//ハンギョレ新聞社

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高卒以下と大卒以上の寿命の差?

 期待寿命と最頻死亡年齢の増加は、所得向上など韓国社会のめざましい成長と成就によるものだが、別の角度からみると、“もう一つの話”が明らかになる。それは、社会内部の所得水準と教育、地域などによって生存期間が違って現れる「死亡不平等」だ。

 ウ研究委員は、そのなかでも、特に教育水準別の死亡格差を分析した。教育は、生涯過程で社会の構成員の社会経済的地位を決定づける重要な要素だ。特に高等教育は、労働市場に関連して機会の不平等に大きな影響を及ぼす。概してより高い教育を受けた人々は、より多くの所得と資産を得る機会を持つ。中上位層でみられる「スペック(資格や語学能力、対外活動経験など)を積む」ことは、教育のそうした特性に起因する。

 ウ研究委員は、1985年から2015年までの教育水準別の期待余命(30歳時点)の格差を調べた。その結果によると、大卒以上と高卒以下の集団の期待余命の格差は、2015年時点で男性は4年、女性は2年だった。

 大卒以上の男性は、高卒以下の男性より4年長く生き、大卒以上の女性は高卒以下の女性に比べ2年長く生きるという意味だ。この教育水準別の死亡格差は、1985年では、男性は6.8年、女性は2.92年だった。過去30年間で全体的に寿命は著しく増加したが、教育水準別の死亡格差は相対的にわずかに減ったということだ。このような傾向は、最頻死亡年齢分析でもまったく同じように確認された。2015年時点の高卒以下の最頻死亡年齢は83.96歳だったが、大卒以上は86.90歳であり、3年の格差を示した。

 教育水準が低い階層は、高い階層に比べて寿命も短いが、特に高学歴層に比べて死亡時点が特定の区間に集中しておらず、健康がより良い状態で過ごせる期間(健康期待寿命)も短いことが確認された。低学歴階層は、教育水準が高い階層に比べて元気ではない状態で生きる期間がより長く、生存期間と死亡時点もより不確実だと、ウ研究委員は解説した。ウ研究委員の今回の分析結果は、韓国保健社会研究院の最新報告書『韓国の死亡率の変遷と死亡不平等』に詳細に収録されている。

イ・チャンゴン先任記者兼論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1042352.html韓国語原文入力:2022-05-11 11:06
訳M.S

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