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尹錫悦流の「価値観外交」宣言…蘇った李明博流「非核・開放3000」

登録:2022-05-11 02:29 修正:2022-05-11 07:04
就任演説で見た外交・安全保障 
「平和的解決のための対話」に言及し 
非核化を前提とした対北朝鮮経済支援 
李明博政権時代の構想そのまま
尹錫悦大統領が今月10日、国会前広場で開かれた第20代大統領就任式で、就任演説を行っている=国会写真記者団//ハンギョレ新聞社

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が10日、就任演説で「一時的に戦争を回避する脆弱な平和ではなく、持続可能な平和を追求する」という対外政策の方向を示した。北朝鮮核問題に関しては非核化を前提に支援を行うとし、李明博(イ・ミョンバク)政権の「非核・開放3000」と酷似した解決策を打ち出した。

 尹大統領は就任演説で「朝鮮半島だけでなくアジアおよび世界の平和を脅かす北朝鮮の核開発に対しても、平和的解決に向けた対話の扉を開いておく」としたうえで、「北朝鮮が核開発を中止し、実質的な非核化へと舵を切るならば、国際社会と協力して北朝鮮経済と北朝鮮住民の生活の質を画期的に改善できる大胆な計画を用意する」と述べた。

 尹大統領の北朝鮮核問題の解決策は、北朝鮮の核放棄を前提に対北朝鮮経済支援を行うという李明博政権の「非核・開放3000」と類似している。李明博元大統領は2008年の就任演説で、「北朝鮮が核を放棄して開放の道を選べば、南北協力に新しい地平が開かれるだろう」とし、「国際社会と協力して10年以内に北朝鮮住民の所得が3000ドルに達するよう支援する」と述べた。尹錫悦政権の参謀陣には、李明博政権の外交・安全保障ラインの中心だった高麗大学のキム・ソンハン教授と成均館大学のキム・テヒョ教授が、大統領室の国家安保室長とその傘下の1次長に布陣している。

 「非核・開放3000」は安全保障と経済を交換する構想だが、「非核」に進展が見られなかっただけではなく、「開放」と「3000」においても成果をあげられなかった。安全保障環境に変化がない状態で、経済支援の約束だけで北朝鮮が非核化に乗り出す可能性は低いことを考えると、尹大統領も李元大統領同様の課題を抱えることになる。

 尹大統領が「一時的に戦争を回避する脆弱な平和ではなく、自由と繁栄が花咲く持続可能な平和を追求していかなければならない」と述べた点も目を引く。「脆弱な平和」は、大統領選候補時代から尹大統領が文在寅(ムン・ジェイン)政権の「朝鮮半島平和プロセス」を批判する際に好んで使った表現で、新政権ではより強硬な北朝鮮政策基調を維持する意思を明らかにしたものと言える。

 尹大統領は、南北関係の改善に関するビジョンは示さなかった。北朝鮮の核危機が最高潮に達した状況で選挙を行い、政権引き継ぎ期間もなく就任した文前大統領は就任演説で「朝鮮半島の平和定着のために私にできるすべてのことをする。条件が整えば平壌(ピョンヤン)にも行く」と述べ、南北首脳会談への意欲を示した。朴槿恵(パク・クネ)元大統領も「韓民族皆が幸せな統一時代の基盤を作る」と述べた。

今月10日、京畿道坡州市の接境地域から眺めた臨津江沿いの北朝鮮軍の監視警戒所に人民共和国旗(北朝鮮の国旗)が掲げられている/聯合ニュース

 尹大統領は「国際社会で責任と役割を果たす国」を対外政策の基調にすると明らかにした。これは3日、政権引継ぎ委員会が提示した「自由と平和、繁栄に貢献するグローバル中枢国家」と同じ脈絡であり、ジョー・バイデン米大統領が掲げた「価値観外交」と類似している。尹大統領は「自由と人権の価値に基づいた普遍的な国際ルールを積極的に支持し、守護することにおいて、グローバルリーダー国としての姿勢を持たなければならない」と述べた。尹大統領が言及した「価値観外交」の根底には、韓米同盟や韓米日協力は強化する一方、中国やロシアとは距離を置くという意味が込められていると見られる。北朝鮮にも人権問題を主な基準として突きつける可能性もある。

チョン・インファン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1042336.html韓国語原文入力:2022-05-1021:22
訳H.J

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