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前検察総長から野党第一党の大統領選候補に転身…ユン・ソクヨルはどんな人物か

登録:2021-11-05 23:00 修正:2021-11-06 06:43
国情院捜査で朴槿恵政権と対立 
国政壟断関連特検後、現政権で破格の昇進 
 
チョ・グク元法相の捜査、チュ・ミエ前法相との軋轢で存在感高め 
検察総長辞任から3カ月で政界入り 
保守層の反文在寅世論に政権交代の熱望を投影
韓国の野党「国民の力」のユン・ソクヨル大統領候補が今月5日午後、ソウル龍山区の白凡・金九記念館で開かれた「国民の力」第2回党大会で壇上に向かっている=国会写真記者団//ハンギョレ新聞社

 「国民の力」のユン・ソクヨル大統領選候補は、これまで「前検察総長」と呼ばれてきた。文在寅(ムン・ジェイン)政権の検察総長から政権交代を目指す野党第一党の候補に転身したのだ。朴槿恵(パク・クネ)政権時代、「政権に立ち向かう検事」として名声を得た彼は、文在寅政権との軋轢を肥やしにして、「政治家」に生まれ変わった。

 学者の父親を持ち、裕福な成長期を送ったのち、ソウル大学法学部に入学したユン氏は、9回の挑戦の末、1991年に司法試験に合格した。1994年に大邱(テグ)地検で検事として働き始め、8年後に辞表を出して大手法律事務所に入ったが、1年後、再び検察に戻ってきた。検察庁を訪れた際、エレベーターから漂ってくるジャージャー麺の匂いが、以前徹夜で捜査していた頃の郷愁を刺激したという。彼は最高検察庁中央捜査部1課長、ソウル中央地検特捜1部長などの特捜通の検事として要職を経て、朴槿恵政権初年度の2013年4月、当時のチェ・ドンウク検察総長によって国家情報院による政治介入事件の特別捜査チーム長に選ばれた。本人が「運命だった」と言う捜査だ。

 ユン氏はチェ総長の辞任後も、検察首脳部の反対を押し切って国情院による政治介入事件の捜査を強行し、2013年10月には国政監査で捜査への外圧を暴露した。「人(チェ・ドンウク元検察総長)への忠誠を尽くしているだけではないか」というチョン・ガプユン当時セヌリ党議員の質問に「人に忠誠を尽くさないからこそ、(外圧について)申し上げている」と反論した。「硬骨漢」のイメージを大衆に印象づけた瞬間だった。高等検察庁に左遷され、閑職を転々としていた彼は、朴槿恵政権が終わった2016年12月、国政壟断特検に合流し、華やかな「復活」を遂げた。文在寅政権の「積弊清算」捜査で先頭に立った彼は大田(テジョン)高等検察庁検事からソウル中央地検長へ、さらに検察総長へと破格の昇進を繰り返した。

 しかし、検察総長任命直後の2019年8月、チョ・グク法務部長官候補者一家を捜査したことで、文在寅政府との「蜜月」が一瞬にして破られた。チュ・ミエ法務部長官との激しい対立過程は逆説的に、ユン氏が政治的に存在感を高める契機になった。昨年10月に行われた最高検察庁に対する国政監査は「政治家ユン・ソクヨル」の可能性を高める舞台になった。ユン氏は「ユン・ソクヨルの正義は選択的な正義だ」と述べた共に民主党のパク・ポムゲ議員の質問に対し、「選択的な疑いではないか。以前は私にそのような疑いは抱かなかったのでは」と反論した。翌日の国政監査でも、彼は「政界入り」に関する質問に、「それは私の口からは申し上げられない。退任したら、韓国社会と国民のためにどう奉仕すればいいのか、その方法をゆっくりと考えてみる」と答えた。検察組織のトップとしての「一線」を超える発言だとして、批判の声が高まった。

 憲政史上初の懲戒対象となった検察総長に「反文在寅世論」の支持が集まった。検察の政治的中立のために検察総長は退任後も政治から遠ざかるべきという原則論も、高まる「政権交代への熱望」の前では力を発揮できなかった。ユン氏は今年3月、突然総長を自ら辞任した後、6月29日に大統領選挙への挑戦を宣言した。直接作成した大統領選出馬宣言には「常識を武器に、崩れた自由民主主義と法治、時代と世代を貫く公正の価値を必ず立て直す」という抱負が込められていた。朴槿恵前大統領と李明博(イ・ミョンバク)元大統領、サムスン電子のイ・ジェヨン副会長、チョ・グク元法務部長官を同時に狙った検事時代の履歴をもとに、「法治と公正の象徴」となったのだ。

 「政治家ユン・ソクヨル」は「検事ユン・ソクヨル」に集まった期待を下回った。数々の舌禍で国政哲学の乏しさを露呈したという批判もあったが、ユン氏に集中する政権交代の熱望を根本的に揺さぶることはできなかった。熾烈な予備選挙の末、名立たる重鎮たちを抑え、「国民の力」の大統領選挙候補に選ばれた。政界入り4カ月の新人が40年の伝統を持つ野党第一党を手中に収めたのだ。

イム・ジェウ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/1018125.html韓国語原文入力:2021-11-05 18:47
訳H.J

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