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世論を主導し、大統領選候補者を左右…「プレーヤー」になった韓国世論調査

登録:2021-08-25 09:09 修正:2023-04-21 07:36
世論調査の裏面を見る
より高く!!より遠く!!より長く!!「大統領候補世論調査」//ハンギョレ新聞社

 「あの時、あの(世論)調査がなければ、私はここまで来ていない」

 大統領選挙出馬宣言翌日の6月30日、国会記者室にあいさつに立ち寄ったユン・ソクヨル前検察総長は、「世界日報」記者団にこのように述べた。「大統領選挙候補ユン・ソクヨル」を作ったのが世論調査であることを認めたのだ。ユン前総長が指摘した「あの時、あの調査」とは、ユン前総長が検察総長を辞任するおよそ14カ月前の2020年1月、「世界日報」の依頼でリサーチアンドリサーチが実施した創刊企画の世論調査だ。選択肢に「ユン・ソクヨル」という名前が初めて登場したこの調査で、ユン前総長は二桁(10.8%)の支持率を記録した。野党では首位だったファン・ギョアン自由韓国党代表(当時)を抜いた初めての調査だった。彼は当時、現職の検察総長として大統領選挙に対する立場を明らかにしたことはなかったが、約1年間続いた世論調査で、野党勢力で最も有力な大統領選挙候補の地位を固めた。

 このように世論調査に伴うバンドワゴン(大勢に従う現象)効果は、ユン前総長のような新人が一瞬にして有力な大統領選挙候補に急浮上する道となっている。パン・ギムン元国連事務総長は、任期後半期の2015年から世論調査に登場し、2017年の弾劾直後には保守勢力の代案として急浮上した。任期を終えて帰国する直前の2016年末には、文在寅元共に民主党代表に二桁以上の差をつけてトップを走り続けた。アン・チョルス国民の党代表も2011年、パク・ウォンスン弁護士にソウル市長補欠選挙の候補を譲ってから支持率が上昇し、翌年の大統領選挙に挑戦した。

低回答率の場合、政治高関与層の意見だけ反映され…世論を歪曲する結果になることも

 新人政治家が世論調査の高い支持率に後押しされ、現実の政界に入門するパターンは、韓国ではすでに一つの政治メカニズムとして定着したという分析もある。既成政治家に対する失望や疲労感、“政界慣れしていない”新人に対する期待心理が投影された反政治的な現象だという説明だ。議題と戦略グループ「ザ・モア」のユン・テゴン政治分析室長は「望ましい現象ではないが、すでに新人が政界入りする一つの現象として位置づけられている。現在の政界に対する不満の表出と言える」と述べた。ユン前総長は比較的高い支持率を維持しているが、大統領選挙に挑戦する意思を明らかにしてからわずか3週間で不出馬を宣言したパン前総長のように、現実政治に足を踏み入れると支持率が急落する場合もある。

 選挙を数カ月後に控えている状況で世論調査が世論作りを主導する背景には、大統領選挙候補たちが未来のアジェンダをきちんと示せない現実があると、専門家たちは口をそろえて指摘する。しかし、その逆の分析も可能だ。支持率調査に関心が注がれるあまり、政策や時代精神、社会的課題などが十分浮き彫りにならないということだ。アジェンダが不十分だったり浮上しない隙を突いて、世論調査が最も重要な“プレーヤー”の役割を果たすことになる。ハンギョレ経済社会研究院のハン・グィヨン研究委員は、「大統領選挙候補が議題をめぐり競争すべき局面であるのに、特に取り上げるべきイシューがないため、世論調査がその代わりになっているとみられる」とし、「組職と基盤がなく、十分に準備もできていない人たちが世論調査の支持率に担がされるおかしな現象が発生する」と述べた。

 大衆に検証されていない人たちが世論調査で過大評価されるのは倫理的な問題もある。出馬意思を明らかにしていない人物を大統領選挙の世論調査の選択肢に入れることが、果たして望ましいかという問題提起だ。ザ・可能研究所のソ・ボクキョン代表は「有権者は世論調査の選択肢にある人物が出馬宣言をしたかどうかを考慮して回答するわけではない。選択肢に入れるとき、少なくとも出馬の意思を明らかにした人だけに限定すべきだ」と述べた。このような点を意識して、盧武鉉財団のユ・シミン理事長は2019年、政治参加の意思がないとして大統領選挙世論調査から自分の名前を外してほしいという内容の公文書を中央選挙世論調査審議委員会に送った。チョン・セギュン前首相も昨年8月の首相時代に、職務遂行に不適切だとして世論調査機関に名前を除外するよう要請した。

 世論調査の影響力が正確さに比べて肥大化した側面もある。今のように回答率が低い状況では、政治に関心の高い政治高関与層の意見が大きく反映される可能性があるというのが世論調査の盲点だ。先月、自動回答システム(ARS)方式で行われた世論調査31件の平均回答率は、5.11%に過ぎなかった。ソウル大学政治学科のパク・ウォンホ教授は「回答率が低いほどランダムなサンプル(無作為で得た標本)というよりは答えたい人だけが答える可能性が高い。回答率が低くなれば、実際の誤差範囲より誤差が大きくなる」と指摘した。

 政党内の予備選挙や候補一本化の過程で世論調査を活用することは、もはや当然のこととして受け止められている。しかし、世論調査間の偏差が大きい状況ではギャンブルに等しいという懸念もある。世論調査の質問項目などによって結果に差が生じる可能性があるからだ。国民の力で一部の候補が逆選択防止条項を入れるべきだと主張するなど、本格的な予備選挙のルールをめぐる神経戦が始まったのもそのような理由からだ。ソウル大学言論情報学科のハン・ギュソプ教授は「予備選挙に世論調査を導入するのは、危険なだけでなく選挙の原則にも合わない」とし、「調査機関ごとに差が10ポイント以上開く状況では、有権者も信頼できず、当事者も承服できない」と指摘した。

 大統領選候補たちがそれぞれ気に入った世論調査を活用しながらも、不利な調査は選挙工作だと攻勢をかける「炎にして付き寒にして棄つ」態度も世論調査に対する不信感を高めている。チェ・ジェヒョン前監査院長陣営は17日、韓国社会世論研究所(KSOI)の次期大統領選挙候補適合度調査から除外されたことを受け、「世論調査が選挙に大きな影響を及ぼす状況で、なぜこれほど恣意的な調査を行うのか。何か背景があるのではないか」とし、「世論調査機関がドゥルキングのように(世論操作の)疑惑を受けてもいいのか」と強く批判した。KSOIは立場を発表し、「『次期大統領選挙候補適合度』に入る候補10人は、前回調査の『汎進歩圏』、『汎保守圏』の候補適合度でそれぞれ上位5位までの候補を集めて、本項目の選択肢を構成する。チェ候補は汎保守圏で6位となり、選択肢から除外された」とし、「根拠のない疑惑を提起して世論調査機関の信頼を損ねようとしたことに対し、深い遺憾を表明する」と反論した。

不利なら抗議、有利なら広報する大統領選候補たちの「我田引水」

 ユン前総長側も自分の支持率が高かった世論調査が中止されたという報道に対し、「特定候補側と支持者たちが、ユン・ソクヨルに大きく差をつけられる世論調査結果が続いたことを受け、報道機関と世論調査機関に強く抗議して、マスコミが大統領選挙世論調査を突然中止させた」という疑惑を提起した。しかし、この世論調査機関は他の報道機関とともに世論調査を進めている。国民の力のホン・ジュンピョ議員も先月、韓国ギャラップの調査で自分に不利な結果が出たという理由で「選択肢から外してほしい」と要求し、法的対応を予告したりもした。共に民主党のイ・ナギョン陣営では毎週日曜日の定例ブリーフィングで3強(ユン・ソクヨル、イ・ジェミョン、イ・ナギョン)構図を強調するなど、イ候補に有利に出た世論調査を積極的に広報している。

 質問項目数を減らすため、リアルメーターや全国指標調査など大半の機関では、与党のイ・ジェミョン候補やイ・ナギョン候補と、野党のユン・ソクヨル候補に限定し、二者対決調査を行っている。オピニオンライブのユン・ヒウン世論分析センター長は「二者対決は事実上、陣営同士の戦いなので、誰を対決させてもユン・ソクヨル対イ・ジェミョン程度の支持率が出る」と話した。実際、今月19日に発表された全国指標調査の大統領選挙候補適合度調査で、イ・ナギョン元首相の支持率は10%で、イ・ジェミョン知事(26%)やユン・ソクヨル前総長(19%)との差は大きいが、二者対決の場合ユン前総長(36%)とわずか1ポイントしか差がない。各候補同士の対決というよりも、事実上は陣営対決と見られるのもそのためだ。チョン・セギュン陣営の関係者は「候補が世論調査の仮想対決の機会さえ与えられないため、有権者の視点からは完全に群小候補に転落したというイメージが強化される点で、非常に残念だ」と述べた。

チャン・ナレ、ノ・ジウォン、ソン・チェ・ギョンファ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/1008832.html韓国語原文入力:2021-08-24 14:20
訳H.J

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