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デルタ株の増殖スピードは1260倍、潜伏期は2日短い…今も変身中

登録:2021-07-16 03:27 修正:2021-07-16 08:07
中国の研究陣、昨年の初期ウイルスと比較分析 
初期増殖スピードは最大1260倍…潜伏期間は6日→4日
デルタ株は初期の新型コロナウイルスに比べて増殖が速く、潜伏期間も短くなっていた//ハンギョレ新聞社

 中央防疫対策本部は先月、新型コロナウイルスのデルタ株が最初の変異株であるアルファ株に比べて1.6倍の感染力を持ち、入院率は2.26倍にのぼると把握していることを発表した。変異前のウイルスに比べると、感染力は実に3.2倍となっていると推定される。デルタ株は現在までに発見されている変異株の中で最も感染力が強い。インド、英国をはじめとするいくつかの国では、すでに最大を占める優勢種となっている。韓国でもデルタ株が急速に広がり始めている。新規感染者に占めるデルタ株感染者の割合は、1週間で10%から23%台へと2倍以上になっている。

 デルタ株の強い感染力はどこから来るのだろうか。

 最近、中国の広東省疾病予防管理センターの研究陣が、こうした疑問を解消しうる一つの糸口を見つけ、ウイルス学分野のオンラインフォーラム「バイロロジカル(virological)」に発表した。同研究陣が感染者についての疫学、血清、遺伝子データの分析を通じて発見した強い感染力の原因は二つだ。

 一つは、デルタ株の増殖スピードが初期ウイルスとは比較にならないほど速いということ。もう一つは、潜伏期間が短いということだ。

 中国でデルタ株の感染者が初めて確認されたのは5月21日のこと。研究陣は、その日から6月18日までに広東省の省都広州で確認された感染者167人のうち、デルタ株への感染者62人と、2020年初めの元祖新型コロナウイルスへの感染者63人のウイルス検出量を比較分析した。

 その結果、感染者がデルタ株に感染し、体内での増殖を経て陽性反応を示すまでにかかる時間は平均4日だった。デルタ株は体内の増殖を通じて検出可能な水準に達するのに、平均で約4日かかるということだ。これは、昨年のコロナ禍初期のウイルスの平均6日より2日も短い。検出が可能だということは、ウイルスが体外に飛び出す準備ができていることを意味する。また、この時のウイルス濃度は、変異前の新型コロナウイルスの最初の濃度より最大で1260倍も高かった。このようなデータは、デルタ株の方が感染の初期段階において感染を広げる危険性が高いということを示していると研究陣は述べる。

 蔚山大学医学部のチュ・チョルヒョン教授(微生物学)は「査読を経た論文ではないものの、実験方法や結論などに特に無理はなさそうだ」と評価した。

右側のグラフを見ると、デルタ株感染から最初の陽性反応が出るまでの期間(茶色)が昨年(青色)より非常に短くなっていることが分かる=バイロロジカルより//ハンギョレ新聞社

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分析期間中にも絶えず微細な変異が発生

 研究陣はまた、同じ期間内に全感染者の75%に当たる126人から抽出したウイルスの遺伝的多様性を分析したところ、1カ月足らずで31人のウイルスで微細な変異が発生していたことを確認した。1つのウイルスから最大で4つのヌクレオチド(RNAを構成する最小単位)が異なるものに変わっていた。研究陣は、このうち10種のウイルスは宿主に安定的に定着し、そのうちの一部は他人に感染する可能性があることも確認した。

 チュ教授は「126人の感染者に対する遺伝子分析を通じて、多様な微細変異が出現し続けており、この中で感染に有利なものが絶えず選択されているということを確認させてくれる研究結果」と述べた。

 昨年にはドイツの科学者たちが、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)以来16年ぶりに登場した「SARSコロナウイルス2(新型コロナウイルスの正式名称)」の感染初期の増殖スピードはSARSの1000倍に達するという研究結果を発表している。デルタ株はこれに匹敵する大きな変身をわずか1年で成し遂げたことになる。これは、新型コロナ拡散の早期遮断の失敗が、ウイルスが1億人を超える人間の宿主の体内で変異を繰り返し、進化を加速させる契機を作ってしまったということを示唆する。

 デルタ株(B1617.2)は、インド発の変異体(B1617)の3つの下位類型の一つで、2020年12月に初めて発見された。コロナウイルスの外皮に突出しているスパイクタンパク質の3カ所で変異を起こしたウイルスだ。スパイクタンパク質は、コロナウイルスが細胞に侵入する際に、その突破口を切り開く道具として使われる物質だ。デルタ株は今年に入ってインドの第2波中に急速に広がり、他の下位類型を抜いて3月からインドの優勢種となっている。13日に発表された世界保健機関(WHO)の週間ブリーフィングによると、現在までにデルタ株感染者が確認されている国は111カ国にのぼる。

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1003612.html韓国語原文入力:2021-07-15 10:10
訳D.K

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