3カ月前に出産したAさん（32）は、妊娠期間を思い出すと今も息苦しくて頭が痛くなるようだという。Aさんは妊娠中、つわりとともに頭痛があったが、新型コロナ感染防止のためにマスクをつけなければならず二倍に苦しんだためだ。彼女は「息も苦しく、頭もさらに痛くなるので、妊娠期間中は外出を最大限減らした」と話した。ママカフェなどオンライン・コミュニティでは、「マスクのせいで息が苦しい」といって薄いマスクを求める妊婦の書き込みが今も掲載されている。
Aさんのように辛く苦しい妊娠・出産・産後ケアを「コロナ時代」に経験しなければならない妊産婦は、感染予防と安全な出産という「二兎」を得るために孤軍奮闘している。彼女たちは感染に対する恐怖、防疫規則による不便さ、家族と離れなければならないという心配などで「二重苦」を負う。
病院によって事情が異なるが、ほとんどの妊婦がマスクをつけて出産する。大型病院の場合、妊婦に出産時にマスクを着用させるだけでなく、手術室、分娩室、保育器など、妊婦と子どもが移動するすべての動線に陰圧設備を設置している。妊婦も出産3日前に新型コロナ検査を受けなければならず、緊急手術を受けることになる場合は、全ての医療スタッフが全身防護服を着て手術を行う。
ソウルのある大手大学病院の産婦人科専門医のB氏は、新型コロナ感染予防のため、妊産婦と医療スタッフはみな苦痛に耐えるしかないと話す。彼は「急な陣痛で緊急出産を取り行ったことがあるが、出産後に母親にコロナ陽性反応が出たため、国家指定病院に搬送され隔離治療を受け、子どもと離れて過ごしたことがあった。また最近も保護者から医療スタッフがコロナに感染したケースがある」とし「こうした危険性を最大限に減らすために、出産過程での防疫に徹底的に備えている」と説明した。ママカフェなどインターネット上のコミュニティでは、「息をするのがひどく苦しかった」など「マスク出産」のレビューがたびたびあがってくる。出産した母親たちは「マスクをつけていて呼吸がうまくできず、力が入らなかった。赤ちゃんも出てくる時は大変だったと思う」「マスクをつけて分娩中に過呼吸で息が苦しくなり、医療スタッフがマスクを外してくれた」と出産当時の苦痛を伝える。
妊娠と出産の過程で苦労した妊産婦は、出産後は病院や産後調理院（産後のケア施設）での保護者の訪問制限に頭を悩ませる。病院ごとに指針は異なるが、大型病院の場合は通常、常駐保護者は1人のみ可能▽常駐保護者は最近3日以内の新型コロナ検査結果用紙を持参▽常駐保護者の外出自制など、妊産婦の保護者に対する規則を強制している状況だ。常駐保護者を除くその他の面会や訪問は、全てテレビ電話を通じてのみ許可される。
新型コロナ感染を遮断するために必要なことなので、妊産婦と家族は当然受け入れているが、不都合を感じる時がある。Aさんが出産後に訪れた産後調理院でも、防疫のため訪問者を統制しており、夫や両親になかなか会えなかったという。Aさんがいた産後調理院は、コロナ検査で陰性判定を受けた人で指定された1人の保護者のみの出入りを許可したが、この保護者が出た後はまたコロナ検査を受けなければ入ることができなかった。両親が来る日には、夫は調理院に入れなかった。Aさんは「ほかの調理院は全く保護者を入れない所が多かったのでまだましだったが、実家の母や夫にいてほしいこともあったので不都合な時もあった」と話した。昨年9月に出産したというあるブロガーは、「調理院でコロナのため産後ヨガなどのプログラムが中止になり、子どもと一緒に過ごす母子同室ができないという点も残念だった」と話した。ママカフェなどには「コロナのせいで部屋の外に出られず、母親同士で情報を共有したり労わりあう親睦会もできず残念だ」という書き込みもあがっている。
このような状況から、妊娠を検討している人たちの間では、「選べるなら新型コロナが弱まるか、なくなる来年に出産したい」という声も出ている。少子化の流れが続く中、新型コロナ以降に新生児の出産が減ったという分析も出ている。統計庁の「3月の人口動向」によると、第1四半期の全国の出生児数は7万519人で、昨年同期に比べ4.3％減少した。1981年に統計を取り始めて以来、最も少ない数値だ。合計特殊出生率も昨年の第1四半期の0.91より減った0.88と集計された。昨年の第2四半期から4期連続で0.8人台以下となっている。
訳C.M
