国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、韓国は新型コロナウイルスの拡散を防ぐことに成功したものの、一部の措置は個人のプライバシーと人権を侵害しているとの評価を発表した。
ニューヨークに本部を置く国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは13日(現地時間)、約100カ国の人権状況を検討した『2021年世界報告書』を発行した。同報告書は、新型コロナ、▽性的指向と性的アイデンティティー、▽女性の権利、▽北朝鮮の人権、▽労働権などの分野ごとに、各国の人権実態を点検している。
同報告書は韓国について「昨年3月、韓国政府は大規模検査とデータに基づく距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)を強調し、コロナ拡散を緩和することができた」としつつも、「携帯電話の位置情報、クレジットカードの使用内訳を追跡し、確定感染者の移動経路情報を提供したが、こうした措置の一部は個人のプライバシーを侵害した」と指摘した。報告書は、コロナ関連の過度な個人情報公開を懸念する国家人権委員長の声明などに言及しつつ、「いくつかの地方自治体では依然として一部(感染者の)移動経路を公開している。個人情報公開を通じて人々は確定感染者を特定でき、確定感染者はいじめや個人情報さらしに苦しんだ」と述べている。そして「コロナ禍で韓国人は時に、性的少数者、外国人、一部宗教団体の信徒に対し烙印を押し、根強い差別の素顔をあらわにした」と指摘してもいる。
また同報告書は、兵役中に性転換手術を受け、その後も女性軍人としての服務の意思を明らかにしたピョン・ヒス下士(階級名)に、陸軍が心身障害との判断を下し、強制転役(除隊)処分にしたことに言及し、「韓国の性的マイノリティーの権利運動は成長しているにもかかわらず、軍内の性的マイノリティーに対する敵対感情と深刻な差別は続いた」と評価した。
同団体は、イギリスの経済専門誌『エコノミスト』が毎年発表する「ガラスの天井指数」において、韓国が昨年、経済協力開発機構(OECD)加盟国で最下位だったことに触れ、「韓国では女性に対する差別が広く見られる」と指摘した。報告書は政府の対北朝鮮ビラ散布禁止措置などを例に挙げ、「北朝鮮の人権状況に対する韓国政府の批判は弱まった」と評価してもいる。