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慰安婦裁判で国家免除を否定した裁判部「日本帝国主義の反人道犯罪、韓国に裁判権」

登録:2021-01-09 07:57 修正:2021-01-09 09:50
慰安婦被害者、8年を経ての勝訴判決 
「憲法・国連人権宣言で保証する 
裁判を受ける権利の実効性を認めるべき」
故ペ・チュンヒさんなど日本軍「慰安婦」被害者12人が日本政府を相手に起こした損害賠償請求訴訟でソウル中央地裁が「原告1人当り1億ウォンを賠償せよ」と原告勝訴判決を下した8日午前、正義記憶連帯のイ・ナヨン理事長が立場を明らかにしている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 8日、韓国の裁判所が故ペ・チュンヒさんら12人が日本を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で原告勝訴判決を下したのは、反人権的犯罪行為に対しては「他国の主権行為は裁判できない」という国家免除論を適用してはならないという点を初めて認めたという意味がある。日本軍による「慰安婦」被害を、長きにわたる慣習法で固まった国家免除論ではなく憲法的権利と人権問題とみなし、司法的責任を問うたのだ。

 この事件が2013年に初めて司法的判断の対象になったのち、一審判決までおよそ8年を要したのも、日本の「国家免除論」の主張に関連する。慰安婦被害者であるペさんらは、2013年8月に日本政府を相手取り原告1人当りそれぞれ1億ウォン(約950万円)の慰謝料を請求する調停申立てを初めてソウル中央地裁に出した。これは、2011年の憲法裁判所の決定によるものだった。憲法裁判所は、慰安婦問題に関して政府が問題解決のための具体的な努力をしないのは、被害者の基本権を侵害するもので違憲だと判断した。これに対し被害者は、双方の当事者の交渉により紛争を解決する調停を申し立てたが、日本政府は国家免除論を理由に数年間調停に応じなかった。その間、ペさんやキム・ウェハンさんなどが亡くなった。結局、被害者の要請により事件は2016年1月、正式裁判に回付された。昨年1月、裁判所は日本政府への公示送達により訴状を出して訴訟が開始されたとみなし、被告(日本政府)席が空いたまま、4回の弁論の末に一審を宣告した。これに先立ち、1998年の慰安婦および勤労挺身隊被害者が、日本の山口地方裁判所下関支部で起こした損害賠償請求訴訟(「関釜裁判」と呼ばれる)の一審で一部勝訴した事例はあるが、今回の場合のように、韓国の裁判所で他国の主権的行為に対する賠償責任が全面的に認められたのは初めてだ。

 裁判部は韓国憲法を根拠に、この事件で最大の争点となった被害者の「裁判を受ける権利」を認めた。日本が反人権的犯行を犯した事件であるにも関わらず、国家免除論を理由に訴訟の提起を認めないのは憲法に反するという趣旨だ。裁判部は「憲法27条(裁判請求権)と国連世界人権宣言も裁判を受ける権利を明らかにしている。権利救済の実効性が保障されなければ、これは憲法上の裁判請求権を空虚なものにしてしまう」として、重大な人権侵害を被った被害者の実質的な権利救済を強調した。

 裁判部はまた、慰安婦被害者に対する性的搾取や暴力などの不法行為は、国際法上の強行規範(絶対規範)に違反したため、このような犯行まで国家免除を理由に責任を減じることはできないとも判断した。「国家免除理論は、主権国家を尊重し、むやみに他国の裁判権に従わないようにする意味を持つものだ。国際強行規範に違反し他国の個人に大きな損害を負わせた国家に、国家免除理論の後ろに隠れ賠償と補償を回避できるような機会を与えるためのものではない」ということだ。

 裁判部は、韓国での今回の裁判が被害者としては“最後の手段”である点も強調した。「慰安婦」被害者らは、日本と米国などの裁判所で何度も民事訴訟を起こしたが、すべて棄却されたり却下されたりした。日本は、1965年の請求権協定により賠償責任を負う理由がないという立場であり、日本の最高裁判所も被害者の主張を認めなかった。2015年の韓日慰安婦合意も被害者が排除された両国間の協議であり、憲法裁判所もこの合意が被害者の被害回復のための法的措置ではないという趣旨を明らかにしている。これに対し裁判部は「請求権協定と2015年合意も、被害者個人に対する賠償を包括できなかった。交渉力や政治的権力を持てない個人にすぎない被害者としては、この訴訟以外には損害賠償を受ける方法は手が届かないところにある」とした。

 故クァク・イェナムさんらの損害賠償請求訴訟を代理するイ・サンヒ弁護士は、「これに先立ち、ドイツのナチスの犯行についてイタリアでも似た判決が出た」とし、「これは被害者個人の人権をさらに重視しなければならないという国際法的な流れを強固にしたもので、これを出発点にして、この件を人権の観点から未来志向的に解決する案を論議しなければならない」とした。

チャン・イェジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/977992.html韓国語原文入力:2021-01-09 02:05
訳M.S

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