6日のサムスンのイ・ジェヨン副会長の電撃的な謝罪文発表は、国政壟断破棄差戻し審裁判で減刑を狙った側面がある。同日の謝罪文発表は、サムスン遵法監視委員会(遵監委)の勧告によるものだが、これに先立ち、破棄差戻し審裁判部が遵法委員会の活動の実効性の有無を量刑に酌量すると発表したからだ。しかし、同日の謝罪文の発表がイ副会長の裁判に及ぼす影響は制限的だろうというのが法曹界の大半の見解だ。
イ副会長の謝罪文発表を控え、法曹界の関心は「イ副会長が自らの経営権継承の過程で行った違法行為に対する責任を、どのくらい具体的に認めるか」だった。しかし、謝罪文には「過去の違法行為に対する責任を認める」ことが欠けていた。裁判に影響を与えることがあり得る「中身」が抜けただけに、今後の裁判に及ぼす影響は限定的なるだろうということだ。
イ副会長の「経営権継承問題」発言は、未来に重点が置かれている。彼は、過去に裁判を受けたサムスンエバーランドとサムソンSDS事件、現在進行中の国政壟断関連「贈賄容疑裁判」に言及しながらも、自らの責任には言及しなかった。代わりに「経営権継承問題でこれ以上議論が生じないようにする」として、「未来」に飛び移った。まだ裁判が進行中の「犯罪」の容疑をどのように整理するのかは省略したということだ。
イ副会長の謝罪を肯定的に考える見方もある。財閥捜査に詳しいある弁護士は「あえて意味を探そうとするならば、イ・ジェヨン副会長が継承関連の違法行為があったという“前提”で発表したということ」だと語った。イ副会長は国政壟断賄賂事件の破棄差戻し審の被告人であり、サムスン物産合併とサムスンバイオロジクス(サムスンバイオ)会計詐欺事件の被疑者の身分だ。これらの事件は、全てイ副会長にサムスングループの経営権を継承する過程で起きた「違法行為」と疑われている状況だ。イ副会長が今回の謝罪文で「継承問題」に関連して「法を破ること」や「便法を講じるとか倫理的に指弾されること」をしないと言及したが、過去にはそのような違法や便法があったということを前提とする文章ということだ。
しかし、経営権継承をめぐる違法行為の具体的な内容と責任の所在が欠けているうえに、現在捜査が進行中のサムスン物産・第一毛織合併疑惑、サムスンバイオ会計詐欺に関しては全く言及がなく、謝罪の真正さを疑われている。イ副会長は少なくともここ7~8年間、サムスンの最終的な意思決定者だった。その過程で起きた違法行為に関して本人が報告を受けたのか、そうでなければ役職員たちが自ら行ったことなのかを正確に明らかにし、それに対する責任の所在と問責の意思を示さなければならなかった。しかし、イ副会長はこれに関する言及は全く行わなかった。
謝罪が過去に対する抽象的な反省に留まっただけに、今後の破棄差戻し審裁判と検察捜査に及ぼす影響は限定的であると見られる。国政壟断破棄差戻し審が特検の忌避申立てにより空転中のうえ、「中身の抜けた謝罪」で遵監委の機能への疑問がさらに大きくなることがあり得るからだ。ソウル中央地検経済犯罪刑事部(部長イ・ボクヒョン)は、サムスン物産合併と会計詐欺の「最終受益者」であるイ副会長の召喚日程を見計らっている。パク・ヨンス特検チームは、遵監委設置など今回の謝罪の契機を作った破棄差戻し審の裁判長(チョン・ジュニョン部長判事)に対する忌避申立てに集中するなど、イ副会長に賄賂犯罪の厳格な責任を問うための控訴維持に最善を尽くす計画だ。