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[ニュース分析]全斗煥氏、裁判でヘリ射撃が認められれば有罪…自衛権論理も崩壊

登録:2020-04-28 07:08 修正:2020-04-28 08:14
全斗煥裁判の意味と展望…一審は9月に判決の見通し 
ヘリ射撃が立証されれば“有罪”…自衛権論理も崩壊 
検察、専門家証人3人を申請…射撃の立証に注力 
一部では「裁判所、5・18調査委の活動終了まで判断見送るかも」
全斗煥元大統領が、妻のイ・スンジャ氏とともに今月27日午前、光州地方裁判所で開かれる裁判に出席するため、ソウル西大門区延禧洞の自宅を出て車に乗り込もうとしている//ハンギョレ新聞社

 27日、1年ぶりに光州(クァンジュ)法廷を再び訪れた全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領(89)は自身の回顧録で、5・18民主化運動当時、戒厳軍がヘリコプターから射撃を行ったと証言した故チョ・ビオ神父を「破廉恥な嘘つき」と非難した容疑(死者名誉毀損)で裁判にかけられた。裁判の争点は大きく分けて2つだ。ヘリコプターからの射撃が実際にあったかどうかと、全氏がこのような事実を知りながらも、回顧録でチョ神父を非難したかどうかだ。5月18日にヘリコプターからの射撃があり、全氏もこれを知っていたとすれば、チョ神父に対する死者名誉毀損罪が成立する可能性が高く、逆にヘリコプターからの射撃がなかったと判断されれば、無罪になる可能性が高い。全氏は当時ヘリコプターからの射撃はなく、「破廉恥な嘘つき」という表現は「文学的表現」だと主張してきた。

 全氏の裁判は、形式的には故人の名誉を傷つけたかどうかを判断するものだが、5・18光州民主化運動の実体究明に関しても重要な意味を持つ。40年間明らかにされなかった新軍部の発砲命令と関連があるためだ。全氏ら新軍部は、戒厳軍の発砲は市民軍に対抗する「自衛権の発動」だと主張している。しかし、市民軍と衝突した状況で行なわれた地上軍の発砲と異なり、空中で行われる一方的な攻撃であるヘリコプターからの射撃は、自衛権の発動とは程遠く、ヘリコプターから射撃があったと認められれば、新軍部が主張してきた論理が崩れる。

 2018年、国防部5・18特別調査委員会(特調委)は、1980年5月21日と5月27日に戒厳軍のヘリコプターから射撃が実際行われたと結論づけた。チョ神父が目撃した5月21日のヘリコプターからの射撃が、戒厳軍の残虐性と犯罪性を表す証拠だと判断したのだ。特調委は5月21日に戒厳司令部が戦闘兵科教育司令部(戦教司)に下したヘリコプターからの射撃指針などの軍文書や、武装ヘリコプターが光州に出動したという航空部隊関係者の証言、目撃者、全日ビル銃弾の跡などを根拠に挙げた。

1980年の5・18光州民主化運動当時、戒厳軍の残忍な鎮圧に抗議するデモが起きた光州市内上空を軍ヘリコプターが飛行している=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 被害者側の法律代理人のキム・ジョンホ弁護士は「戦時のような条件で認められるヘリコプターからの射撃は、自分を守るために発砲したという自衛権発動論理を一挙に崩す証拠だ。21日のヘリコプターからの射撃は、事前にヘリコプターの投入計画を立て、武装しなければならないため、事前に(戒厳軍首脳部レベルの)発砲命令があったと見るべきだ」と述べた。

 しかし、多くの証言に加え、ヘリコプターからの射撃関連の作戦指針と事前計画文書まで出たが、実際に射撃が行われたという記録が発見されなかったため、ヘリコプターからの射撃が行われたかどうかをめぐり、激しい法理争いが繰り広げられている。裁判に出席したヘリコプターのパイロットは、「武装して出撃したものの、射撃はしていない」としてヘリコプターからの射撃を否定した。2007年に国防部の過去事真相究明委員会調査官として活動したノ・ヨンギ朝鮮大学教授は「軍と国家を掌握した全斗煥が、自分に不利な記録を残したはずがない。全氏の名誉毀損罪を立証するためには、検察が論理でアプローチしなければならないが、裁判所がどう判断するかについては予測がつかない」と話した。

 これと関連して26日にハンギョレが入手した「戦教司忠正作戦計画」には、戒厳司令部が1980年5月27日に光州一帯を武力で鎮圧する光州再進入作戦(忠正作戦)に、500MD武装ヘリコプター5機を編成したと記されている。5・18鎮圧作戦全般に武装ヘリコプターが投入された可能性を示す資料だ。

1980年5・18当時、光州錦南路の全日ビル周辺に戒厳軍ヘリが飛んでいる様子=5・18記念財団提供//ハンギョレ新聞社

 検察はヘリコプターからの射撃を立証するため、関連専門家と目撃者を証人として申請した。全日ビルの銃弾の跡を調査したキム・ドンファン国立科学捜査研究院銃器研究室長やキム・ヒソン全南大学5・18研究所研究教授、ヘリコプターからの射撃を目撃したデビッド・ドリンジャー元米国平和部隊員らだ。裁判所は職権で国防部5・18特別調査委の調査結果報告書作成者を証人として採択した。

 従来どおり3週間に1回裁判が開かれると仮定すれば、一審判決は今年9月頃言い渡されるものと見られる。裁判部が現在進行中の5・18真相究明調査委員会の活動が終わるまで、判断を先送りする可能性もある。

 これに先立ち、2017年4月に5・18記念財団と遺族は、チョ・ビオ神父に対する死者名誉毀損の疑いで全氏を刑事告訴し、光州地検は2018年5月に全氏を在宅起訴した。法廷に姿を現さなかった全氏は昨年1月、裁判所が拘引状を発給してからようやく出廷した。その後、再び健康問題を理由に欠席したが、裁判長が代わったことで被告人の身元を再確認する認定尋問が決まったことを受け、再び法廷に出頭した。

キム・ヨンヒ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/area/honam/942178.html韓国語原文入力:2020-04-28 02:41
訳H.J

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