国防部直轄部隊である国軍心理戦団が、2023年10月から昨年12月3日の非常戒厳の直前まで、北朝鮮向けビラを直接散布していたことを、この作戦に参加した将兵が証言した。この話が事実であれば、昨年5月の脱北者団体の無分別なビラ散布を通じて始まったとされていた南北間の「北朝鮮向けビラ・汚物風船」攻防の背後では、軍が緻密かつ広範囲に秘密作戦を行っていたことになる。この対立をきっかけに、一時中断されていた拡声器放送が再開され、9・19軍事合意が廃棄されるなど、南北関係は極度に悪化した。ついには、非常戒厳の「決定的な名目」を作るために、平壌(ピョンヤン)への無人機浸透作戦まで試みられた。北朝鮮を刺激して軍事挑発を引き出そうとする尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の計画が、これまで知らされていたよりも早い時期に、広範囲に実行されていた可能性が高くなっただけに、疑惑を明確に究明するための徹底した捜査がなされなければならない。
1日付のハンギョレの報道によると、2023~2024年に国軍心理戦団で服務したAさんは、2023年10月中旬、部隊員とともに北朝鮮向けビラを積んだ大型風船10個ほどを初めて北朝鮮に飛ばし、2024年11月までの1年ほどの間、2カ月に1~2回、100個ほどの風船にそれぞれ10キログラムほどのビラをぶら下げて北朝鮮に向けて飛ばしたと証言した。作戦が始まったのは、憲法裁判所が2023年9月に北朝鮮向けビラの散布を禁止する「北朝鮮向けビラ散布禁止法」に違憲決定を下した直後のことだった。
Aさんによると、心理戦団は軍事地図に北朝鮮の軍事基地、空港、主要都市の座標を記し、風向きや風速などをリアルタイムで計算して、最適な地点から風船を飛ばした。さらには、軍の動きが露見しないよう、民間団体が北朝鮮向けビラを飛ばす日に合わせて作戦を遂行し、Aさんが所属した部隊だけでなく他の部隊も中部・西部戦線一帯で同様のことを行ったという。Aさんは「国軍心理戦団の北朝鮮向けビラの散布が非常戒厳を狙った意図的な挑発だったことが次々と発覚したため、私が隠しておく理由はまったくないと考えた」と述べ、証言を決心した理由を明らかにした。
これまで尹前大統領の外患疑惑を捜査してきたチョ・ウンソク特別検察官チームは、昨年10~11月ごろに行われた平壌への無人機浸透に捜査の焦点を合わせていた。しかし、軍がその前からさらに広範囲に動いていた可能性を示す新たな証言が出てきただけに、関連者に対する追加捜査は不可避になった。軍の存在理由を裏切り、国家と国民に危害を加えようとした者たちを、このまま軍組織に残しておくわけにはいかない。