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韓米同盟の危機管理の範囲、「米国本土」まで拡張されるか

登録:2019-10-30 07:41 修正:2019-10-30 08:49
戦作権返還後の未来連合司令部の危機管理改訂を協議 
「朝鮮半島有事の際」から「北朝鮮による米国の脅威」まで 
 
北朝鮮のミサイルが米国本土を脅かす状況を想定 
同盟の対称性を強調、韓国の役割拡大に繋がりかねない
北朝鮮が10月2日、新型の潜水艦発射弾道弾「北極星3型」を試験発射して成功したと朝鮮中央通信が翌日、発射場面を公開した=資料写真//ハンギョレ新聞社

 米国が、戦時作戦統制権(戦作権)を韓国に返還して韓国軍大将が司令官を引き受けるようになる、いわゆる「未来連合司令部」の危機管理の範囲を、現在の「朝鮮半島有事の際」から「北朝鮮による米国の脅威」にまで拡張する方案を提示したことが29日分かった。北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)と潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)が米国本土を脅かす状況を想定したものと見られる。韓国は、このような対応が、ともすれば北朝鮮に対する先制攻撃の議論に繋がることがあり得るという点を指摘し、憂慮を示したと伝えられた。

 国防部と軍関係者の言葉を総合すると、韓米は戦作権返還の後、未来連合司令部の連合防衛および危機管理体制を規定した「韓米同盟危機管理覚書」の改訂を協議している。覚書は、局地戦勃発など平時危機状況での連合司令部の対応指針を盛り込んだ文書である。米国はこの過程で、連合司令部の危機管理範囲を「朝鮮半島有事の際」に限定した現在の文言を、「朝鮮半島有事の際と北朝鮮による米国の脅威」に替える方案を提示したことが伝えられた。

 連合司令部の危機管理範囲は、1994年に平時作戦権が韓国軍に移ってから「連合権委任事項」(CODA)で規定されている。危機管理を始め、作戦計画樹立および発展、連合演習など全6項目について、連合司令官が権限を行使する。危機が発生した時に戦時に繋がるかを判断する権限も、連合司令官に与えられている。

 米国の提案は、未来連合司令部の危機管理範囲を、事実上米国本土にまで拡張しようということだと解釈される。北朝鮮の大陸間弾道ミサイルの火星15型が、グアムとアラスカを含む米国西部を射程圏に入れており、潜水艦発射ミサイルを搭載した新型潜水艦の開発が行われる状況を反映したものと見られる。これまで連合司令部の危機管理の範囲は「朝鮮半島有事の際」と表現されており、韓米相互防衛条約に基づく韓米同盟の武力抑止範囲も「太平洋地域」に限定されていた。ある消息筋は、「米国の提案は、危機管理の時点から米国本土に対する北朝鮮の脅威を想定しようということ」として「結果的には、韓米同盟の対応範囲が、太平洋から米国本土に拡張されることになる」と語った。

 韓国は、連合司令部の危機管理範囲を米国本土にまで拡張する場合、北朝鮮に対する先制攻撃の根拠になり得るという点を憂慮したことが分かった。北朝鮮の大陸間弾道ミサイルや潜水艦発射弾道ミサイルの試験発射に、米国が危機管理のレベルで先制攻撃の必要性を提起する場合、朝鮮半島の危機が高まることになり得るからである。「北朝鮮による米国の脅威」が曖昧で、脅威の実体について韓米間で意見の相違が生じることがあり得るとの指摘も出ている。

 米国の提案は、防衛費分担金の大幅引上げなど、韓国により多くの同盟費用の負担を要求するドナルド・トランプ大統領の立場に通じる。一部では、このような「同盟の対称性」に対する要求が、今後の韓国軍の紛争地域派兵の要求などに拡がることになり得ると指摘する。米国の脅威に対する同盟の貢献が強調され、ホルムズ海峡や南シナ海など、米国の軍事作戦領域にまで韓国が引き込まれることがあり得るということだ。中国の封鎖を狙った米国のいわゆる「インド太平洋戦略」は、韓国と日本など同盟国の役割拡大を中心としている。しかし、チェ・ヒョンス国防部スポークスマンは、「戦作権返還後、米国が危機と判断する海外紛争地域にわが軍を送る状況が発生することが起こり得るという指摘は、事実ではない」と述べた。

ユ・ガンムン先任記者、ノ・ジウォン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/915006.html韓国語原文入力:2019-10-30 02:39
訳M.S

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