2017年、アイドルグループ「SHINee」のメンバーのジョンヒョンから最近起こった歌手のソルリまで、アイドルの自殺が相次いでいる。アイドルが自ら命を絶つほどストレスに脆弱な理由としては、絶え間ない競争とインターネット上の悪質なコメントなどが挙げられる。
6年間にわたりアイドル練習生たちの相談を受けてきた臨床心理専門家のキム・ジヒ氏は「練習生たちは心理的に成熟する時期の青少年時代から親元を離れて、慣れない環境で競争に追い込まれたため、欠落感を抱えやすい」としたうえで、「デビュー以降も続く競争と些細な日常にも悪質なコメントが殺到する環境にあるため、自尊感が薄れ、憂うつ感と無力感に苦しむ場合が多い」と説明した。大衆音楽評論家のパク・ヒア氏は「芸能界は階段式ではなく、一気に上り詰めたかと思うと、急に転げ落ちるようなところ」とし、「特にアイドルは10代でデビューし、10~20年間にわたって経験しなければならないことを早ければ3~5年、契約期間の7年以内に全て経験するため、外部の攻撃に弱くなる」と話した。また、「練習生の年齢がますます若くなる一方、アイドルの数は増えるため、この分野の特殊性をよく知るカウンセラーが必要だ」と付け加えた。
専門家らは芸能人の極端な選択を防ぐため、芸能プロダクションと政府レベルで地道に定期的な心理相談プログラムを実施すべきだと助言する。韓国コンテンツ振興院は2011年、大衆文化芸術人支援センターを設立し、芸能プロダクションと連携して、心理相談を支援してきた。初年度には相談件数が40回にとどまったが、2013年に107回、2015年に139回、2017年に167回、2019には年164回(10月現在)で、徐々に増えている。芸能人も芸能プロダクションも心理相談の重要性を認識しており、8年間で4倍以上増加した。韓国コンテンツ振興院は最近、「芸能人になりたい子どもを持つ親が知るべき基本知識説明会」を開き、保護者を対象に心理相談の重要性を強調した。
芸能プロダクションも芸能人の心理状態をサポートするために努力している。中堅・大手芸能プロダクション10社を取材した結果、ほとんどのプロダクションで教育プログラムなどを運営し、芸能人としての態度や困難を経験した時の対処法などを教えていた。また、所属芸能人が心理的に困難を訴えれば、心理相談センターで相談を受けるようにしたり、臨床心理士を会社に招く場合もあるという。
しかし、芸能プロダクション自ら専属心理カウンセラーを雇ったり、定期的な相談プログラムを設けるなどの体系的な管理はないのが実情だ。芸能人も外部の視線を気にして、うわさが広がるのを恐れ、自分の状態について正直に打ち明けられない場合もあるという。ある芸能プロダクションの関係者は、「外部の人に芸能プロダクションの内部事情を話すのが負担となり、 “ストレスの多い会社”という印象を与えることを恐れて、相談プログラムの運営を躊躇う側面もある」と話した。
臨床心理専門家のキム・ジヒ氏は、「自殺などの極端な選択をする前に、シグナルを送る場合が多いため、関心を持って心を読み取ろうとすれば(最悪の事態は)防げる」とし、「持続的かつ地道な心理相談が重要だ」と指摘した。さらに、「青少年の相談に応じる際に親の相談が欠かせないように、マネジャーや担当職員もどのように芸能人の面倒を見るべきか、教育を受ける必要がある」と強調した。