今月21日、SKが120兆ウォン(約12兆円)規模の半導体投資計画を発表した。龍仁(ヨンイン)の「半導体クラスター」に2022年から工場4つを建設する内容だ。これまで首都圏規制によって工場用地を得られなかったが、文在寅(ムン・ジェイン)政府の許可方針に従って道が開かれた。今年初めに本格化した文在寅大統領の「経済オールイン(総注力)」による結実といえる。大統領は約50日間、経済現場を直接訪問し、大企業、中小企業、ベンチャー企業に相次いで会い、投資と雇用の拡大を呼びかけ、経済活力向上に向けた政府の意志を強調した。小商工人、自営業者とも会って疎通した。まさに「民生経済立て直し」のための「総力戦」だ。
大統領府の関係者は、大統領の「経済オールイン」の動きについて、「2期目の経済チーム(ホン・ナムギ経済副首相-キム・スヒョン政策室長)」の役割を「危機管理」に圧縮した。目標は、大統領の支持率を上昇に転じさせ、支持率下落の最大原因に挙げられてきた民生経済で目に見える成果を上げることだ。現状では来年の総選挙も難しいと判断している。危機管理の核心手段は、大企業の投資・雇用の誘導と社会間接資本の投資拡大だ。このために社会的論議を甘んじて受け入れ、大々的な規制緩和、贈賄容疑で裁判中のサムスン電子のイ・ジェヨン副会長との会合、社会間接資本投資に対する予備妥当性調査の免除などの“正面突破”を選択した。
経済界の反応は肯定的だ。10大グループの役員は「これまで大統領が経済は後回しで、企業とも疎通しないという不満が多かった」と喜んだ。雰囲気の転換は、一部のグループの投資発表へとつながった。SKが代表的だ。現代自動車も「光州(クァンジュ)型雇用」の投資に署名した。サムスンが賛同する可能性も提起されている。イ・ジェヨン副会長の最高裁判決を控え、“誠意の表示”があるだろうということだ。政労使も19日、週52時間制の補完に向けた弾力労働制の単位期間拡大に合意した。経済社会労働委員会のパク・テジュ常任委員は「経社労委の発足後、最初の社会的大妥協であり、干天の慈雨だ」と述べた。
40%も危うかった大統領への支持率が、1月中旬以降反騰し始めた。第2回朝米首脳会談への期待ともあいまって、支持率が50%前後まで回復した。しかし、カギとなる民生経済での成果は現われていない。むしろ所得格差が広がり、失業者と失業率が上がるなど否定的な経済指標が続出している。匿名を要請した韓国開発研究院(KDI)のある博士は「企業・政府の投資発表が実際に執行される時期は数年後であり、世界経済まで停滞しており、大統領の「経済行動」がすぐに成果を出すとは最初から期待しがたかった」とし、「投資計画は政治的メッセージ」だと述べた。
民生経済が回復しなければ、大統領の支持率も揺れざるを得ない。保守陣営は一斉に「分配・雇用の惨事」といい、所得主導成長政策の完全放棄を要求した。一方、進歩陣営は大統領の「経済行動」について「改革をゴミ箱に捨ててはいないが、引き出しの中に入れたようなもの」(ある進歩陣営の関係者)と警戒する。歴代政府の“政策変身”は成功したことがほとんどない。朴槿恵(パク・クネ)政府は「経済民主化」を約束したが、執権から半年も経たずに「経済回復」に急変した。李明博(イ・ミョンバク)政府は「親大企業」を掲げ、執権2年目に「同伴成長対策」を打ち出した。しかし、2人とも成功したという評価を聞けなかった。政策の変身は、方向性の是非を離れ、政策の一貫性の喪失による不確実性の増加と推進動力の弱体化を避けられない。
原則を重視する文大統領の性向から見て、改革の完全放棄を宣言する可能性は高くはなさそうだ。ホン・ジャンピョ元大統領府経済首席も「大統領は経済活力も高め、改革も望んでいる」と述べた。しかし、今後「危機管理」基調が強化されれば、改革がさらに後回しにされる可能性もある。その場合、文在寅政府が前政府の二の舞になる危険性も増しかねない。文大統領の「経済オールインへの歩み」は、果たしてどうなるだろうか。