本文に移動

12年間で死者35人のうち29人が下請け…現代製鉄はなぜ外注労働者の“墓場”に?

登録:2019-02-22 11:21 修正:2019-02-22 15:20
最近、人権委に「現代製鉄唐津工場の元-下請け差別が深刻」是正勧告を受け 
12年間で労働者35人が死亡した“死の工場”…犠牲者のうち29人は非正規職  
労働界「キム・ヨンギュン事故と似ている」 
「事故経緯の把握に労組が参加すべき」
忠清南道唐津の現代製鉄唐津工場=民主労総提供//ハンギョレ新聞社

 20日、外注業者所属の労働者Lさん(51)がベルトコンベアーに挟まれて死亡した忠清南道唐津(タンジン)の現代製鉄唐津工場は、労働者たちに「死の工場」と呼ばれる。同工場だけでこの12年間に35人の労働者が各種の事故で死亡した。

 20日午後5時29分ごろ、忠清南道唐津市の現代製鉄唐津工場の鉄鉱石トランスファータワー(乗換え塔)2番ベルトコンベアーで、Lさん(51)が駆動軸(プーリー)に挟まれて死亡した状態で見つかった。同僚3人と一緒に駆動軸に使われたゴムの交替作業に投入されたLさんは、同日午後5時ごろ、ボルトを持ってくると言って約30メートル離れた工具室に向かった後、連絡が途絶えた。唐津警察署は、Lさんがなぜ作業現場から工具室に行く動線の反対側の2番ベルトコンベアーで被害に遭ったのかを明らかにすることに捜査を集中している。警察関係者は「違法の事実が明らかになれば、会社の代表と安全管理者などを業務上過失致死の疑いで立件する方針だ」と話した。

 現代製鉄唐津工場は2007年から12年間で労働災害により35人が死亡した。このうち契約職や下請けなどの非正規労働者は29人にもなる。労働界で「死の工場」と呼ばれるのはそのためだ。

 2016年11月28日には、同工場の乗換塔でベルトコンベアーを点検していた労働者のHさんが機械に挟まれ死亡し、2010年5月にも同じ乗換塔で装備を点検していた労働者が墜落死した。2013年5月にも唐津工場の下請け会社でアルゴンガス窒息事故で5人が死亡し、2017年12月13日には27歳の青年労働者のCさんが工場のA地区熱延工場で整備作業をしていたところ、機械設備に挟まり死亡した。2017年の事故発生現場には非常停止スイッチや安全センサーなど、最小限の安全装置すらなかった。ボタン一つさえあれば命を救うことができたが、現代製鉄は労働者の安全のためにお金を使わなかったという。

 現代製鉄唐津工場は最近、国家人権委員会(人権委)が「元・下請労働者間の差別が激しい事業場」と指摘した所でもある。人権委は先月23日、現代製鉄唐津製鉄所に、社内下請け労働者と元請け労働者間の給与と福利厚生の差別が激しいとし、是正勧告を出した。

 人権委の決定文によると、現代製鉄唐津工場で働く下請け労働者は元請け労働者たちと同じ風呂場を使用しても、脱衣室は別々に使うようにし、脱衣室の備品も元請会社からは提供しなかった。このため下請業者が脱衣室の備品を提供し、下請け労働者はドアロックではなく鍵でできたロッカーを利用するなど差別を受けた。工場は駐車スペースが足りないことを理由に、下請け労働者には車で通勤させなかった。

 工場は給与と福利厚生費を支給する際も、下請け労働者を差別した。同じ仕事をしながらも、下請け労働者の平均給与は元請け労働者の60%の水準に過ぎず、子どもの教育費も元請け労働者は就学前から大学授業料までの支援を受けるのに比べ、下請け労働者は子どもの就学前の児童教育費だけが支援された。祝日の帰省、体力鍛錬費、慶弔費などの支給基準でも、下請け労働者は差別を受けた。医療費の場合、元請け労働者は本人とその家族の入院および外来診療費のうち、本人負担金の部分を支援してもらう一方、下請労働者は健康診断費用のみを支援されていることが確認された。

2017年12月13日、27歳の青年労働者Cさんが死亡した現代製鉄唐津工場のA地区熱延工場=民主労総金属労組現代製鉄支会提供//ハンギョレ新聞社

 このため労働界は、死亡した外注業者の職員であるLさんが「安全差別」を受けたのではないかとの疑惑を提起した。事故が起きた工場がこのように下請け労働者に対する差別が激しかったという事実が伝えられ、労働界は今回の事故も「危険の外注化」の問題を如実に示した事故だと批判した。ホン・スンワン金属労組現代製鉄非正規支会支会長は「昨年、西部発電という公企業でキム・ヨンギュンさんが死亡した後、今年は現代製鉄という民間大企業で同じ死亡事故が起こった」とし、「2人1組の規定がちゃんと守られたかなど、事故の経緯を正確に把握するのに労組が参加しなければならない」と述べた。

 死亡前、Lさんが安全装備をきちんと着用した状態で働いたのか、明らかにされなければならないという主張も出た。現代製鉄唐津工場で働いていた労働者のLさんは、今回の事故について「キム・ヨンギュンさんの事故と類似している」と語った。Lさんは「事故が起きたベルトコンベアーは速度も速く、幅も2メートル以上で規模も大きい。工場の騒音と粉塵もひどく、一人で仕事をするのは危険な場所」と言い、「2016年に現代製鉄工場でベルトコンベアーで仕事中に死亡した事故で、2人1組の規定ができたが、徹底的に守られていたのかを確認する必要がある」と話した。また「工場内で安全管理者が作業する所に立ち寄りはするが、それだけでは安全がきちんと守られるとは考えにくい」と主張した。Lさんは「前回の故キム・ヨンギュンさんの事故の時も、ベルトコンベアーを止めるプルコードという安全センサーが緩んでおり、ちゃんと作動せず、プルコードを押す人もおらず問題になったが、今回もプルコードが正常に作動したのか明確にしなければならない」と付け加えた。

 民主労総世宗忠南地域本部のアン・ジェボム労働安全保健委員長も「現代製鉄唐津工場は、事故が起きるたびに特別勤労監督をしていたのにもかかわらず、事故が後を絶たない。現代製鉄側が危険要因を十分に補完せず、労働者が命を失い続けている」と批判した。

 これについて現代製鉄唐津工場側は「これまで密閉空間の安全強化のためにガス検知器を1人1台支給し、高危険密閉空間作業時は安全管理者が別途管理するなど安全措置を強化してきた」と釈明した。

オ・ヨンソ、イ・ユジン、唐津/ソン・インゴル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/883027.html韓国語原文入力:2019-02-21 21:01
訳M.C

関連記事