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最近3週間で50人が労災事故死…「キム・ヨンギュン」は韓国社会の至るところにいる

登録:2018-12-18 06:41 修正:2018-12-18 08:14
11月14日~12月7日の労災による事故死の分析 
 
挟まれ下敷きになり墜落して命落とす 
先月の釜山では硫化水素中毒で死亡 
クレーンコンテナが頭に落ちた場合も 
 
労災事故によって年間1千人死亡 
労災による死亡率、英国の18倍 
OECD加盟国の中で職場が最も危険 
産業安全保健法改正案は漂流
17日午後、ソウル光化門広場に設けられた泰安火力発電所の下請け労働者の故キム・ヨンギュン氏の焼香所で、母親のキム・ミスク氏が遺影を抱いて嗚咽している=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 先月14日から今月7日まで、少なくとも50人が死亡した。24日間で1日2人ずつ命を失った。とても平凡な毎日だった。1年間に起きる労災による死亡事故が、同期間も平均的に起きたのだ。韓国では1年に約1千人が職場での事故で命を落とす。1日に換算すると、2~3人が死亡したことになる。

 17日、ハンギョレは安全保健公団と雇用労働部を通じ、先月14日から今月7日まで死亡した労災による死亡者50人の事例を確認した。届け出や集計漏れの可能性を考えると、実際の死亡者はこれより多いだろう。この24日間、50人の「キム・ヨンギュン」は職場で相次いで挟まれ、下敷きになって、墜落して死んだ。今月11日に忠清南道泰安(テアン)火力発電所で死亡したキム・ヨンギュン氏(24)のように寂しく亡くなったが、名前すら知られていない“顔の無いキム・ヨンギュンたち”だ。以下は彼らの最期に関する短い記録だ。

#11月14日午後5時50分、ソウル馬谷洞の工事現場

 同日、工事現場の作業員K氏(61)は、思いもよらない高さから落ちて死亡した。K氏は午後5時50分頃、ソウル麻谷洞(マゴクトン)のある研究院の建物の工事現場で、1階のセミナー室の天井設置工事をしていた同僚を補助していた。K氏が近くにいたA型はしごを上がった際、はしごが揺れ、K氏はバランスを失って墜落した。墜落の高さはわずか1.5メートルだったが、タイル張りの床に頭をぶつけたのが悪かった。K氏は墜落後すぐ病院に搬送されたが、治療中に死亡した。特別不運だったわけではない。多くの工事現場で、労働者たちはわずか2メートル前後の高さから落ちて死亡する。

#11月17日午前10時、京畿道抱川仙丹洞の工場

 日雇い労働者のN氏(44)は爆発で死亡した。抱川仙丹洞(ソンダンドン)のある金属工場で働いていたN氏は、同日午前10時ごろ、メッキ設備を解体するため、グラインダーでメッキ缶の鉄板を切ったところ、突然原因不明の理由で爆発が起きた。意識を失ったN氏は病院に運ばれたが、4時間後に死亡した。

#11月20日午後1時35分、釜山左川洞の物流ターミナル

 釜山のL氏(57)はコンテナの下敷きになり死亡した。釜山東区佐川洞(ザチョンドン)のある船舶物流ターミナルで働いていた荷下ろし作業員のL氏は同日、船の上に上がってコンテナ固定装置の解体作業を行っていた。午後1時35分頃、船からコンテナを降ろしていた40トン級のクレーンのロープが突然緩み、コンテナがL氏の頭上に落ちた。

#11月23日午前10時30分、忠清北道清州の工事現場

 忠清北道清州(チョンジュ)のL氏(53)も重さ4トンの鉄の構造物に下敷きになった。同日、L氏は清州東南地区のある共同住宅の新築工事現場で働いていた。午前10時30分頃、7メートルの高さで移動式鋳型を運搬していたタワークレーンのロープ(スリングベルト)が切れ、L氏は鋳型と貨物トラックの間に挟まれてしまった。L氏も病院に移送されたが、約1時間後に息を引き取った。

 ハンギョレが確認した50人のうち、外国人労働者は1人で、下請労働者は16人だった。残りは元請所属の労働者たちだ。元請所属といっても、委託業務を主に担当する零細企業の場合が多かった。墜落し、挟まれ、転落して死亡した人たちの事故原因も偶然ではない。韓国で、労災による死亡者は主に墜落するか(昨年基準で38.0%)、機械に挟まれ(10.6%)、あるいは転落して(10.4%)死亡する。韓国の事故死亡万人率(1万人当たりの人数)は0.71(2013年)だが、米国は0.37、ドイツは0.17、英国は0.04(以上2011年基準)だ。韓国が英国の18倍だが、このような状況はなかなか改善されていない。韓国で労災によって死亡した労働者数は、欧州連合(EU)の5倍、経済協力開発機構(OECD)加盟国のうちトップだが、彼らが直面した危険な作業環境に対する社会的な関心は低い。

 先月28日には同期間中、最も多くの人が一度に命を失う事故が発生した。釜山学長洞(ハクチャンドン)であった有毒物質中毒事故だったが、廃水処理会社の従業員らが硫化水素中毒になったのだ。事故から4日後、L氏(52)が死亡し、2週間後の今月12日、C氏(48)が死亡した。17日午後にはL氏(38)まで脳損傷で死亡した。K氏(42)はまだ意識がない。

 彼らは廃水処理業者「ソンヤンエンテック」の下水処理装置の操作係だ。警察は、彼らが会社のタンクローリーに入庫された廃水を投入する過程で、硫化水素を吸い込んだものとみて、捜査を進めている。同業者に廃水処理を任せたのはポスコ技術研究院浦項研究所だ。産業安全保健基準に関する規則(第85条)によると、人体に有害な「残滓」は、労働者の健康の障害が生じないよう適切に処理しなければならず、これを業者に委託する際には、有害・危険性に関する情報を提供しなければならない。警察はこの「情報提供」がきちんと行われたかどうかも確認している。

 故キム・ヨンギュン氏が十分な教育を受けられず、助けてくれる同僚もなく、石炭発電所のコンベアーベルトに挟まれたように、労災は安全装置が十分でない状態で起きる“社会的他殺”の場合が多い。「青年非正規労働者故キム・ヨンギュン市民対策委員会」は、17日に発表した声明で、「労働者の安全に関する事業主の警戒心を呼び起こすためには、労災による死亡に対する刑事処分の下限刑を導入し、軽い処罰が行われないようにすべきだ」として、重大災害企業処罰法の導入を求めた。

 キム・ヨンギュン氏の悲劇が起きる前に、「キム・ヨンギュンたち」の不幸が社会の関心の外にあったように、働く人々の命を守る産業安全保健法にも無関心だった。政府は先月30日、産業安全保健法の全面改正案を国会に提出した。1981年に制定された産業安全保健法が全面改正されるのは、1990年以来28年ぶりのことだ。「危険の外注化」を防ぐため、元請事業主が安全措置をとるべき場所を「一部の危険な場所」から「事業場全体」に拡大し、「危険機械」を使う場合の安全対策を元請に義務づける内容を盛り込んだが、国会では議論すらされていない。経営界の反対で、事業主に対する下限刑(1年以上)が削除され、危険作業の例外条項も新設されたが、韓国経営者総協会(経総)などの経営界は「依然として処罰が重すぎると共に、自由契約の原則に反する」として、反対している。

パク・キヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/874802.html韓国語原文入力:2018-12-18 05:00
訳H.J

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