2016年5月、非正規職労働者がソウル市九宜(クウィ)駅のホームドアの修理中に死亡した、いわゆる「九宜駅のキム君」事故後、労働者の安全事故について企業の厳重な責任を問う法案が次々と発議されたが、2年7カ月が過ぎた現在まで、国会常任委員会の敷居さえ越えられていない。先月、政府が28年ぶりに提出した産業安全保健法の全面改正案も、弾力労働制の拡大に対する意見の相違などの懸案にぶつかり、議論が全く行われていない。
12日、国会環境労働委員会の関係者らの話を総合すると、共に民主党は野党時代の2016年6月、「九宜駅ホームドア死亡事故」の再発を防ぐための「危険の外注化防止法」7つをパッケージで発議した。産業安全保健法に規定された危険作業については、社内下請けの使用を全面禁止し、事業主の安全保健の取決め義務を強化する産業安全保健法の改正案などが中心となった。
正義党のシム・サンジョン議員も産業安全保健法違反事項で労働者が死亡した場合、犯罪行為とみなし加重処罰するいわゆる「企業殺人処罰法」(産業安全保健犯罪の取り締まりおよび加重処罰等に関する法律制定案)を発議し、当時国民の党からも派遣労働者保護等に関する法律改正案などを発議し、立法化にむけて力を入れた。
しかし、これらの法案は国会環境労働委など関連常任委で後回しにされている。民主党のある議員は「産業安全保健法強化の場合、企業に大きな負担になったり過度な規制になるという反対論が少なくない」とし、「与野党の院内代表レベルで合意がなされなければ通過は難しいのが実情」だと伝えた。また、別の関係者は「労働時間の短縮というホットイシューのために、産業安全関連の議論は押し出された側面がある」と話した。
国会での議論が遅々として進まないため、政府は10月30日、産業安全保健法の全面改正案を閣議で議決し、国会に提出した。元請け事業主が安全保健の措置をとるべき範囲を「一部危険な場所」から「事業場全体」に拡大し、きちんと措置を行わなかった時に宣告できる懲役刑の上限を現行の1年から下請け事業主と同じ5年に上げる内容などを盛り込んだ。産業安全保健法の全面改正は、1990年以来28年ぶりだ。財界が「処罰が厳しすぎる」と反発し、今年2月に立法予告がされてから8カ月たって閣議で確定することができた。この過程で、労働者が死亡した場合事業主が受けることになる下限刑(1年以上)が抜けるなど、内容が弱まったという指摘が出た。
しかし、同法案に対する国会の論議すらまともに進められていない。民主党の別の議員は「保守野党が弾力労働制の改正を要求して法案審査を拒否し、通常国会で労働関連法案審査小委を一度も開催できなかった」と明らかにした。与党も議論に積極的でなかったという自省の声が出ている。労働界出身のある議員は「もう人のせいにはできない」と話した。
民主党のホン・ヨンピョ院内代表は、ハンギョレとの電話インタビューで「政府が提出した産業安全保健法改正案を国会が開かれ次第、速やかに処理するようにする」と述べた。