「偽ニュース工場」として明らかになったエステル祈祷運動が、朴槿恵(パク・クネ)政府時代「右派団体活動家」を養成するとし、国家情報院に43億ウォン(約4億4千万円)の資金支援を要請していたことが明らかになった。各領域別に若い専門家を集中的に訓練し、米国の「ヘリテージ財団」や日本の「松下政経塾」のような保守シンクタンクを作る計画だった。2012年の大統領選挙当時、朴槿恵候補を支援する選挙運動をしたことが確認されたエステルが、大統領選挙が終わった後、本格的な右派活動を展開するとして、国情院に数十億ウォンの支援を要請したのだ。
1日、ハンギョレが入手したエステルの内部資料によると、エステルは2012年の大統領選挙前の2011年11月、「統一運動家訓練学校自由統一アカデミー(仮称)」事業企画案を作成した。「35歳以下の若者40人を1期生とし、3カ月間月80万ウォン(約8万円)を渡して集中訓練し、正常に修了した者には月120万ウォン(約12万円)を与える各領域別の専門幹事」に育てあげるという「3年学士課程」の企画案だ。イ・ヨンヒ代表(嘉泉大学グローバル経済学科教授)が監修したと書かれている。自由統一アカデミー事業の具体的な目標は、市民団体創設者・代表の養成▽インターネット(メディア)ニュース・放送創設者および論客・記者養成▽キャンパス運動家養成などだ。
この文書で特に目につくのは、2012年の訓練課程だ。「4月11日総選挙に向けた分野別フィールド(field)使役」(3月中旬~4月中旬)、「8・15広場祈祷会に向けた分野別フィールド使役」(4月末~8月末)、「12月19日大統領選挙に向けた分野別フィールド使役」から構成されている。2012年は総選挙と大統領選が同時にある年だった。ハンギョレは、エステル内部でインターネット世論作業を「インターネット使役」と呼び、2012年の大統領選挙で実際「大統領選使役」を実行したと確認し報道したことがある。
大統領選使役を通じてオン・オフラインで力量を確認したエステルは、朴槿恵大統領当選後、自由統一アカデミー事業企画案を国情院に送った。イ・ヨンヒ代表は2013年11月、エステルの中核幹事のB氏に国情院幹部のL氏(3級・副理事官)のメールアドレスを教えて、企画案を発送するよう指示した。発送された文書には、自由統一アカデミー事業の訓練課程とともに予算計画および未来ビジョンの「ベンチマーク例」が詳しく記されている。エステルは今後5年間、自由統一アカデミー事業を推進して計43億3千万ウォンの予算(年間9億ウォン前後)の後援が必要だと明らかにした。全体予算のうち10%は「教会および個人会員の後援要請、市民団体、政府支援金要請」などを通じて自主的に調達するが、90%は後援金で賄わなければならないという計画案だった。
未来のビジョンに関しては、自由統一アカデミーを今後韓国版「ヘリテージ財団」や日本の「松下政経塾」のような保守シンクタンクのモデルに発展させていくとした。「ヘリテージ財団」は米国の保守的な外交安保政策世論に影響を及ぼすという点、「松下政経塾」は多数の政治家を輩出しているという点を強調した。
エステルはこの企画案を国情院側に渡した後、数日を経て年間予算を9億ウォンから3億ウォンに減らした企画案に作り直し、国情院側に送った。誰かの指示で予算を減らしたものとみられる。
国情院がこの企画案にどう反応したかは確認されていないが、この事業は自由統一アカデミーから「青年ビジョン統一韓国アカデミー」に名前を変えて実施されたとみられる。統一韓国アカデミーは、2014年2月の第1期を皮切りに2017年8月まで計9期の教育生を送り出した。国情院の報告後、事業規模がかなり縮小されて再調整された点が目につく。当初国情院に報告されていた事業方向とは異なり、その後行われた統一韓国アカデミーはインターネット世論と関連した授業にカリキュラムを集中させた。エステルは若者を募集して「インターネット宣教」「韓国社会とメディア」「インターネットニュースとポータル」「SNSの戦略的活用」「インターネット使役の実際事例報告」などの授業を進めた。これに対してエステルの元活動家だったA氏は「若者を引き入れて右派の下部を組織し、世論戦を繰り広げる事業がエステルの強みだった」と話した。
数十億ウォンの予算がかかる企画案を作って伝える程度なら、エステルと国情院幹部の間に普段から一定の信頼関係が存在した可能性がある。イ教授とエステルの中心事業を議論したH牧師は、ハンギョレとの通話で「(イ教授と国情院幹部L氏の)二人を私が紹介した。お互い親しいと聞いている」とし、「私がキリスト教側の支援窓口はイ代表でなければならないと会社(国情院)に話した」と伝えた。茶山(タサン)人権センターのパク・ジン常任活動家は「国情院に事業提案をしたという事実より、そのようなことができたという点に注目しなければならない」とし、「事業提案以前から密接な関係をつくっていなければ不可能な方式の仕事の処理」だと指摘した。パク活動家は「仰々しく国情院の積弊清算がなされたが、依然として多くの部分は触れられてもいないようだ。特に李明博(イ・ミョンバク)政府時代の国情院問題は多くが明らかになったが、朴槿恵政府の国情院が何をしたかはほとんどわかっていないため、検察捜査で究明しなければならない」と話した。
イ・ヨンヒ代表は「国情院の職員と挨拶したりすることはありうるが、国情院の職員とはもうかなり久しく会っていない」とし、「(国情院と)つなげようとしないでほしい。国情院の支援を受けたことはない」と話した。国情院職員のL氏は数回取材の事実を伝え、通話を要求したが、連絡が取れなかった。大統領府関係者は「企画調整室長がちょうど変わり国情院組織が変わっているときなので、具体的な確認は困難だ」と答えた。