済州(チェジュ)にやって来た549人のイエメン人を抱えた済州島民が苦境に立たされている。中央政府など「公的システム」がイエメン人を放置するとき、彼らを「緊急救済」した済州島民を相手に、怒った世論の批判が提起されているのが実態だ。出入国当局の緊急な要請でイエメン人を就職させた済州島内の事業所でも、当局の放置に対する不満がたまってきている。イエメン人が居場所を決めた済州の島民たちは積極的に「難民問題」の答を探しているのに、政府の対応は依然として「中央ご都合主義」にとどまっているということだ。
最近、済州のある家族の助けで彼らの家に滞在していたイエメン人のKさん一家は、済州市外郭に別途宿泊所を得た。マスコミ露出などで彼らの家に難民らが滞在しているという事実が知られ、隣人の抗議が押し寄せたためだ。インターネットでは家族の自宅を訪ね害を与えてやるというコメントが書かれた。そもそも行くところのない難民家族の安全を守ってあげようと自分の家を提供した好意に対して拍手どころか、自分の家族の安全まで脅かされることになった。彼らの家族のように、何の公的支援なしにイエメン難民を抱えた済州島民が、むしろ傷つけられているのが一度や二度ではないというのが、済州島難民対策委の説明だ。
慌てて開放した就職現場の葛藤も尋常ではない。済州出入国外国人庁は先月、漁船・養殖業・飲食業など内国人雇用の需要が少ない業種に対して、イエメン難民申請者たちの就業を支援した経緯がある。しかし、難民申請者に働き口を提供した漁船と養殖業などのオーナーたちの悩みは深い。職業現場に対する理解が足りなかったり、店主らと意思疎通が円滑でないため職場を辞めるケースが早くも続出しているためだ。
済州水産業協同組合のある関係者は「難民申請者が漁船の作業環境に対する理解もなく、船の仕事に飛び入りして、船酔いを訴えて途中であきらめるケースが多い」とし、「船主たちの間で不満の声が少なくない」と話した。また、養殖業組合によると、養殖場に就職したイエメン人180人余りのうち、先月29日基準で70人余りが仕事を辞めた。養殖業組合のある関係者は「出入国当局は就業を斡旋しただけで、事後管理は手を放してしまっている状態」と話した。
イエメン人たちも行き詰った状況だ。先月28日、ハンギョレが訪れた済州市内のある観光ホテルの2人部屋には、20代のイエメン人5人が一緒に暮らしていた。彼らは一人も就職できていない状態だ。この部屋に住むアブドラ(仮名・22)をはじめ3人は、漁船に乗ったがすぐに耐えられなくなり、最近下船した。梅雨の大雨が降る海原で揺れる波に、船酔いと嘔吐を繰り返し、結局、下船を決めたという。アブドラは「一週間は乗っていたが、吐いてばかりで船から降りることになった」と話した。内戦中の負傷で片足に大きな傷があるアメッド(仮名・29)は「養殖場、食堂などに就職しようとしても、業主たちが雇用を渋る」とし、「いつまで周りに頼ることはできない。自立したい」と話した。生計の支援のないイエメン人は自ら仕事について金を稼がなければ、周囲の助けに依存するしかない状況だ。
第一線の活動家たちの間では「難民問題」を済州道に任せっぱなしの政府のご都合主義を問題視している。集団難民申請に困惑した政府が設けた対策は、彼らを済州という島に縛っておく「出島制限」と「早期就業許可」程度だったためだ。キム・ソンイン済州難民対策委員長は「韓国社会全体に与えられた『難民』という難題を、現在のところ済州島民らがひとり耐えている状況」だとし、「葛藤の管理に失敗した法務部などの初期対応が一番残念だ」と話した。政府が今からでも積極的な葛藤の管理に乗り出すべきだという提言だ。
彼らの定住を支援できる最も効率的な手段は職場の提供であるだけに、内国人との衝突がない職域に対する就業支援が伴わなければならないという意見も出た。済州平和人権研究所ワットのシン・ガンヒョプ所長は「雇用許可制を通じて韓国に入ってきた移住労働者とは違い、イエメン人は1~2時間の教育だけ受けて緊急に就職現場に投入され、混乱が避けられなかった側面がある」とし、「就職後にも事業主とイエメン人の間の通訳を支援し仲介をするなど、当局のより積極的な努力が必要だ」と話した。キム・ソンイン委員長も「済州島民の雇用と衝突しない範囲で業種制限を緩和する必要がある」とし、「同時に、子どもがいる家庭などは安定的な生活を営むことのできるソウル圏のイスラムコミュニティに行けるように先に処置を取らなければならない」と助言した。