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北朝鮮レストラン従業員の送還、軍事演習、テ・ヨンホ…全面攻勢に出た北朝鮮

登録:2018-05-21 05:58 修正:2018-05-21 07:12
南側に中国の北朝鮮レストランからの脱北者の送還を要求 
板門店宣言の離散家族再会と結びつける 
朝米首脳会談を控え韓国に対する不満示す 
韓国にも相応の措置も求めるもよう
米国の北朝鮮専門メディア「38ノース」が今月19日(現地時間)、北朝鮮が豊渓里核実験場の坑道爆破現場を視察するための展望台の設置など、廃棄作業を引き続き進めているものと見られると明らかにした。左は、今月7日に撮影された豊渓里核実験場一帯の衛星写真=デジタルグローブ、38ノース/聯合ニュース

 北朝鮮が韓米合同軍事演習とテ・ヨンホ元駐英北朝鮮公使の講演を取り上げ、南北高官級会談を延期したのに続き、中国の北朝鮮レストランから集団脱出した従業員らの送還を要求した。北朝鮮はこれに先立ち、リ・ソングォン祖国平和統一委員長を通じて「南政権と再び膝をつき合わせるのは容易でないかもしれない」と警告した。北朝鮮が韓米、朝米首脳会談を控え、文在寅(ムン・ジェイン)政権に対して全面攻勢を展開している。

 北朝鮮赤十字会中央委員会の報道官は19日、「朝鮮中央通信」とのインタビューを通じて、2016年4月、中国にある北朝鮮レストラン「柳京」から集団脱出した従業員らの送還を求めた。同報道官は「我々は反共和国対決謀略ねつ造劇であり、極悪な反人倫的犯罪行為である傀儡保守輩党の集団誘引・拉致事件をどう処理するかが、板門店(パンムンジョム)宣言に盛り込まれた北南間の人道主義的問題解決の見通しを決定するうえで、大きな影響を及ぼすということを、南朝鮮当局に想起させざるを得ない」と警告した。

 北朝鮮が従業員らの送還を板門店宣言と結びつけた点が注目される。この問題が8・15を迎えて進めることにした離散家族再会の障害になる恐れがあることを示唆したものと見られる。南北は、板門店宣言で「民族分断により発生した人道問題を早急に解決するために努力すると共に、南北赤十字会談を開催し、離散家族・親戚の再会を含む諸問題を協議、解決していく」ことで合意した。北朝鮮が従業員らの送還を離散家族再会の先行処置に掲げた場合、南北関係全般に影響を及ぼしかねない。

 従業員らの送還要求を、文在寅政府が受け入れるのは容易ではない。すでに韓国国民となった従業員を北朝鮮に帰すのは政治的にも大きな波紋を呼ぶ可能性が高い。チョ・ミョンギュン統一部長官は今月17日に国会で開かれた外交統一委員会で「従業員らは自由意思で韓国に来て定着して過ごしているため、送還は全く考えていない」と答弁した。コ・ユファン東国大学教授は「南北が原則的立場を維持すれば、当然離散家族再会に影響を及ぼしかねない」とし、「板門店宣言を履行する道を開くためには、南北が迂回する方法を見つけなければならない」と話した。

 北朝鮮の最近の対南攻勢は全面的な様相を帯びている。北朝鮮の宣伝メディア「わが民族同士」は20日、一部の脱北者団体による対北朝鮮ビラ撒きを非難した。北朝鮮は23~25日に予告した咸鏡北道吉州郡豊渓里(プンゲリ)核実験場の廃棄現場を取材する韓国側記者団の名簿の受け取りを拒否した。米国と非核化の方法論をめぐって対立する中、韓国の態度に不満を示しているものと見られる。

 大統領府関係者は「北側が柳京レストランの脱北従業員の送還問題を提起するのは、(朝米交渉で)体制保障に対する具体的な約束がないことに不満を抱き、これまで議題から除外してきた問題を提起しているものとみられる」と話した。同関係者は「北朝鮮は、非核化に関して、自分たちにできる措置を取っているにもかかわらず、体制保障問題について具体的な約束がないと思っているうようだ」とし、「韓米首脳会談でこの核心的な問題と関連した方向性が決まれば、他の部分も一気に解決できると見ている」と話した。

 南北関係に異常気流が生じたことで、22日の韓米首脳会談を控えた文在寅大統領の足取りが重くなった。文大統領は20日、ドナルド・トランプ米大統領の要請で20分間にわたる電話会談を行った。「両首脳は、最近北朝鮮が示している様々な反応について意見を交換した」と、ユン・ヨンチャン大統領府国民疎通秘書官が伝えた。北朝鮮が韓米連合軍事演習を理由に南北高官級会談を突然延期した背景などについて、意見交換を行ったものとみられる。

 北朝鮮が厳しい要求を突き付けたことで、南北関係改善をテコに北朝鮮核問題の解決を目指す文大統領の構想にも影が差した。匿名を要求したある専門家は「朝米関係より南北関係がはるかにねじれている」とし、「実務的に解決する状況ではないだけに、首脳間のホットラインを稼動するか、水面下接触を強化する必要がある」と話した。キム・ジュンヒョン韓東大学教授は「南側が朝米の間で盾の役割を果たすべきだったが、それができなかった」とし、「北朝鮮は米国の態度変化を窺いながら、南の変化も確認しようとしているようだ」と話した。

ユ・ガンムン先任記者、ノ・ジウォン、ソン・ヨンチョル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/845452.html韓国語原文入力:2018-05-20 22:44
訳H.J

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