国際労働機構(ILO)が韓国政府に対し、サムスングループの“労組瓦解”文書である「Sグループ労使戦略」に対する検察の捜査結果を遅滞なく国際労働機構に通知するよう勧告した。国際労働機構はまた、間接雇用労働者の「結社の自由」を強化する方案を政府が用意するよう勧告した。国際労働機構がサムスンの労組弾圧疑惑と関連して勧告したのは今回が初めてだ。
国際労働機構は22日(現地時間)、スイスのジュネーブで開かれた第329次理事会で、2013年に金属労組と民主労総、国際労総(ITUC)、インダストリオール(IndustriALL)などが「サムスンが下請・間接雇用を背景に、無労組政策を展開し、サムスン電子サービスとその協力業者が労組組合員を差別して脅迫した」として、サムスンを相手に結社の自由委員会に提訴した事件の中間報告書を採択した。
提訴した団体は「サムスンが『Sグループ労使戦略』文書を基に無労組政策を展開し、結社の自由を侵害している」と主張した。この文書には2012年サムスンエバーランドで労組を作ろうとしたチョ・チャンヒ金属労組サムスン支会副会長などに対する懲戒と労組を結成しようとする“問題人物”に対する罪証、企業寄りの労組の設立と団体協約締結方案などの内容が含まれている。報告書で委員会は、文書に対して「提訴内容の深刻性を強調し、政府が持続的に検察調査結果を遅滞なく通知することと、労働者が自身の選択により労働者組織を結成し加入する権利を全面的に保障するため必要な措置を取ることを要請する」と明らかにした。
該当文書は2013年10月、シム・サンジョン正義党議員が公開した。サムスンは公開直後「グループ内部検討用文書」として自分たちが作成したことを認めたが、一週間後に「私たちが作った文書ではない」と主張を変えた。雇用労働部と検察は、サムスンの主張を受け入れ文書を「サムスンが作ったものと見られない」という捜査結果を2014年11月に出しもした。しかし、大法院(最高裁)は昨年12月、副支会長が起こした不当解雇関連訴訟で「サムスンが作った」と認めた。サムスンが当初自分たちの内部文書だと明らかにしたことや、報告書の内容が具体的でその内容が実際に執行された点を勘案した結果だ。
たとえ行政訴訟とはいえ、大法院がサムスン自身の文書であることを認め、国際労働機構が文書の内容の深刻性を指摘したにもかかわらず、雇用部は再捜査方針を出さずにぐずぐずしている。雇用部関係者は「告発人の追加的な証拠提出を通した再捜査要請など、事情に変更があれば再捜査を検討する」と明らかにするにとどまった。委員会はまた、金属労組サムスン電子サービス支会弾圧を「深刻な反労組行為」(serious anti-union actions)と規定した。2013年、当時サムスン電子サービスの労働者が労働組合を作るとすぐに、これらの労働者を雇用しているサムスン電子サービスの協力企業などは会社を閉鎖したり組合員に仕事を与えずに狙い打ち監査を実施し、この過程でチェ・ジョンボム、ヨム・ホソクの両氏が労組弾圧に抗議して命を絶った。委員会は「労組破壊、および弾圧の結果、組合員が経済的・精神的苦痛に瀕し、チェ氏とヨム氏が自ら命を絶ち、こうした弾圧が全国的に現れたという点に深刻な憂慮を表わす」として「韓国政府は不当労働行為の調査を経て違法行為に対する措置が取られたと述べたが、労組が強調した多くの弾圧に対して調査結果を詳細に提示しなかった」と明らかにした。
委員会は政府が間接雇用労働者の「結社の自由」を保障する方案を講じるよう勧告した。サービス・請負などの間接雇用が広範囲に広がっているが、間接雇用労働者は元請を相手にした交渉をできないばかりか、労組ができれば元請が協力業者との契約を終了するなどのやり方で間接雇用労働者の「結社の自由」が侵害されるケースが多かった。委員会は「サムスン電子サービスの労働者が韓国法に規定された“不法派遣”に該当するという結論に至らなくとも、すべての間接雇用労働者が団結権・団体交渉権を効果的に享受するうえで障害物になったか否かを調べる必要がある」として「政府が結社の自由に対する多様な障害物を十分に考慮して、労使団体と協議して下請労働者の結社の自由と団体交渉権の保護を強化するための適切なメカニズムを開発するために取った措置に関する情報を提供せよ」と勧告した。
雇用部高位関係者は24日、ハンギョレとの電話通話で、国際労働機構の勧告に対して「韓国の法手続きが終わった事案に対しては終わったと報告し、勧告内容にうなずける内容があれば受け入れる」と話した。