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映画「7番房の奇跡」の主人公に2億円の賠償判決、国家責任は認められず

登録:2016-11-25 00:42 修正:2016-11-25 06:44
検事、裁判長、国家の賠償責任は認定せず 
チョン・ウォンソプ牧師「国家賠償責任、最後まで問う」
映画「7番房の奇跡」ポスター//ハンギョレ新聞社

 「『真実と和解のための』法まで作られたではないですか。国家には真実を明らかにする責任がないのですか」。映画「7番房の奇跡」の実際の主人公として知られるチョン・ウォンソプ牧師(82)に自白を強要し拷問した警察官らに対しチョン牧師に23億ウォン(約2億2千万円)を賠償せよとする裁判所の判決が下った。この判決に深いため息をついたのは、約40年前にチョン牧師を拷問し証拠を捏造した警察官らだけではない。今回も国家の賠償責任が認められなかったチョン牧師も無念な心情を漏らした。

 ソウル中央地裁民事45部(裁判長イム・テヒョク)は、チョン牧師と家族が自分を取り調べた警察官と起訴検事、1審裁判長および国家を相手に起こした損害賠償請求訴訟で「J氏など警察官3人とその遺族が、チョン氏に23億8800万ウォンを賠償せよ」と判決を下したと24日明らかにした。ただし、検事、裁判長、国家の賠償責任は認めなかった。

チョン・ウォンソプ牧師//ハンギョレ新聞社

 1972年、江原道春川(チュンチョン)で漫画喫茶を営んでいたチョン牧師に、突然、駅前派出所長の10歳の娘に対し性的暴行をした後に殺害した疑いがかけられた。昼夜を問わない拷問の末にチョン牧師は虚偽の自白をし、15年の歳月を鉄格子の中で過ごした。70代になった2007年になり、ようやく「真実・和解のための過去事整理委員会」(真実和解委員会)の決定と裁判所の再審を経て、えん罪を晴らした。2013年、ソウル中央地裁は国家が不法行為に対する責任を取り26億ウォン(約2億5千万円)を賠償するよう判決を下した。チョン牧師は失った歳月をわずかでも取り戻した気分だった。

 しかし、消滅時効が足を引っ張った。その年末に、最高裁判所は消滅時効期間を刑事補償確定日から6カ月と明らかにした。消滅時効は、一定期間権利を行使しなければその行使を制限する制度だ。チョン牧師は確定日から6カ月と10日後に訴訟を起こしたという理由で賠償金を一銭も受け取ることができなくなった。チョン牧師は真実を解明するとし、再び国家を相手に訴訟を起こした。今度は拷問した警察官と起訴検事、裁判長も一緒に提訴した。

 チョン牧師側は「真実・和解のための過去事整理基本法」(過去事整理法)を根拠とした。過去事整理法36条1項は「政府は究明された真実によって被害者などの被害および名誉を回復させるための適切な措置を取らなければならない」と規定している。国家が、真実が明らかになった後も彼の苦痛に沈黙し、被害の回復に向け動かなかった責任を問うたものである。しかし裁判所は「過去事整理法による国家の義務は法令によって具体化しなければ行使されず抽象的」だとし、これを受け入れなかった。

 チョン牧師にはこれを受け容れる考えはない。チョン牧師を代理するチ・ヨンジュン弁護士(法務法人ジャスティス)は、来週憲法訴願を出す計画だ。チ弁護士は「国家は過去事整理法による被害・名誉回復措置を十分に行わなかった。国家暴力の被害者個々人に責任を転嫁することが再び生じてはならない」と趣旨を明らかにした。5月にソウル高裁行政10部(裁判長キム・フンジュン)が、チョン牧師が国家を相手に起こした和解措置など履行請求訴訟を棄却しておきながら「真実和解委員会の真実究明決定から8年が経ったにもかかわらず、国家が名誉回復に必要な適切な措置を履行しなかったことは、過去事整理法の趣旨に照らして望ましいことではない」と明らかにしたことも参考にする立場だ。80歳の高齢者は50年近く「真実と和解のための旅」を続けている。

ヒョン・ソウン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/771844.html 韓国語原文入力:2016-11-24 21:39
訳M.C(1675字)

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