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[記者手帳]朴大統領無能・無責任症候群の原因菌

登録:2015-06-11 00:21 修正:2015-06-11 07:59
朴槿恵大統領が8日午後、MERS防疫対応と防疫支援の状況を確認するために、政府ソウル庁舎に設けられた、政府MERS対策支援本部状況室を訪問している。前列右はファン・ウヨ社会副首相兼教育相=青瓦台写真記者団//ハンギョレ新聞社

 朴大統領が訪米を延期したが、心配はおさまらない。今後もどれだけ多くの混乱を加えることになるのだろうか。MERS感染者の発見以来、MERSではなく、政界と戦争を繰り広げた彼女のことだ。今になって4つも対策機構を並べ立て、民間の専門家に超法規的に行政権全権を与えると宣言した彼女なのだ。

 ハン・インソプ・ソウル大学教授は8日付のハンギョレ・コラムで「国民の生命と安全性の問題のために、現政権の無能には鳥肌が立つほどだ」と述べた。それに先立ち、歴史学者チョン・ウヨン博士は1日、「MERSよりも恐ろしく致命的なのは、朴槿恵(パク・クネ)政権の無能と国家運営の資質不足」だと述べた。その日は、最初のMERS確定患者が出てから12日目だった。それまで朴大統領が行ったことといえば、同日の首席秘書官会議で関連省庁の「初動対処の不十分さ」を叱責し、流言飛語に対する取り締まりを促しただけだった。

 イ・ジュング・ソウル大学名誉教授の言うように、無能はこの政権を説明するキーワードになって久しい。しかし、無能は病状であって病因ではない。事実、朴大統領は、選挙では驚くほど有能だった。野党が標榜できるキャッチフレーズと公約をすべて先取りした。しかし、政権発足後、記憶装置が壊れ、正常的な思考と判断が麻痺され、さらに災害状況においては条件反射の機能まで失った。

6月9日 漫画//ハンギョレ新聞社

 MERSウイルスは、肺疾患、免疫疾患、腎臓疾患、糖尿病などを患っている人に致命傷となるという。この政権は、不通と我執、過失と責任転嫁、ごまかしという病を患ってきた。そのような宿主に寄生する致命的ウイルスの作用がなくては考えられない状態だ。朴大統領の無能・無責任症候群を引き起こすウイルスの実体については既に多くの人が言及している。報復を恐れて直接的な言及を避けただけだ。チョン博士はこのように付け加えた。「(朴大統領が)公職者を叱責したと感激するものがいるけど、このようなものが民主主義を死に追いやるウイルスだ」

 今月1日はMERSによる初めての死亡者が出た日だった。朴大統領が、MERSではなく、政界と真っ向対立することに決めた日でもある。与野党の合意で通過した国会法改正案に対する拒否権行使を公式化したのだ。国会法改正は、委任の限界を超えた政府政令で立法趣旨が損なわれ、行政独裁につながる流れに対する議会の牽制措置だった。しかし、緊急措置など“維新”の総統制の視点に立つと、理解できるはずもない。

 さらに、MERS感染者の発見以来、族閥メディアも、MERSではなく、国会法改正案が国をダメにするかのように騒ぎ立てた。ある族閥新聞は2日、MERS患者初の死亡ニュースを押しのけて、国会を“コメディー”のようだと嘲笑する分析記事を1面トップに掲載した。そのような報道に意気揚々としたのか、朴大統領は2日、気持ちも軽やかに麗水(ヨス)創造経済イノベーションセンターに飛んだ。

 しかし、その日は、政府がマジノ線と決めていた3次感染が確認された日でもあった。全国の210校が休校に入った。政府は総力対応を宣言したが、大統領府はセヌリ党が要請した党と政府、大統領府の会議を拒否した。そんな状況だというのに、その族閥新聞は社説で「パク・ウォンスン・ソウル市長のMERS政治、軽率だった」と批判し、朴大統領はMERSではなく、パク市長を相手に喧嘩を売った。そして、2大族閥新聞は数日前「迷惑市民」あるいは「後進的な保健意識」という内容の記事で、市民の責任論を取り上げ始めた。金武星(キム・ムソン)セヌリ党代表は、「国民の敏感対応」を非難した。ウイルスの実体が一目瞭然に現れる過程だった。

 昨年セウォル号の惨事が起きた当時に感染した朴大統領の無能・無責任症候群は、もはや治療不能状態に陥ってしまった。市民が目を覚ましていたのなら、社会的な免疫システムが作動し、国の中枢神経まで麻痺されるような事態は防げただろう。しかし、正反対の市民が奮い立った。朴大統領がパク市長を攻撃していた数日前、徳寿大漢門(デハンモン)前では韓服姿で小堤と太鼓を鳴らしながら、パク市長を非難する一部のプロテスタントたちの奇妙なデモが行われていた。彼らは、「MERS惨事」の中、パク市長を同性愛ウイルスの流布者と罵倒していた。彼らもまた、この政権の症状を悪化させるウイルスだった。

 朴大統領は自分のアバターとも言える首相候補者を、狂信に近い宗教的な偏向者か、手段を選ばない金の亡者か、それとも疑惑付の兵役免脱者だけを選んで指名した。症候群によって、脳および中枢神経が麻痺されていなくては不可能な選択だった。ファン・ギョアン首相候補者はおととい聴聞会でこのように答えた。 「(MERS事態に対して)朴大統領が然るべき時に然るべき対応をしたと思う」。彼もまたすでに麻痺状態だ。朴大統領が一体これまで何をしたというのか。イ・ジェオ・セヌリ党議員は3日、こう言い放った。「政府が何を考えているのか疑わしい」

 国の中枢が麻痺され、国家の安全と国民の生命と暮らしは四面楚歌に置かれている。なのに、ウイルスを退治する方法が思いつかない。ウイルスがすでに脳を掌握している。切り取らなければならないが、誰が、どのような方法で実行できるのだろうか。

クァク・ビョンチャン先任論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2015-06-10 22:22

https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/695470.html 訳H.J

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