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健康でも幸せでもない仕事漬けの韓国人…

登録:2015-06-02 23:40 修正:2015-06-03 13:32
OECD「より良い暮らし指標」発表
夜勤のために明るく点灯しているビル=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

 私たちはこれから「より良い暮らし」を手に入れることができるだろうか? 2008年の「グローバル金融危機」以降、韓国の暮らしの指標は回復しているのか?

 経済協力開発機構(OECD)は、「より良い暮らしのためのより良い政策」が可能であるという考えから、2011年から毎年5月に「より良い暮らし指標」(The Better Life Index)を発表している。今年も3日から2日間、フランスのパリで開催される閣僚会議を控え、分野別の点数と国家順位が公開された。

 この指標は、代表的なマクロ経済指標である1人当たりの国内総生産(GDP)が経済的要因を反映しているだけで、政治、社会的要因を適切に反映していないという反省から作られた。グローバル金融危機以降、ジョセフ・スティグリッツとアマルティア・センなどの世界的な碩学たちが参加し「経済的実績と社会の進歩の測定に関する委員会報告書」を国連に提出した。問題の焦点は、「国内総生産は増加するのに、なぜ人々の暮らしはより困難になっているのか」というものだった。報告書は、「経済的指標の測定方法が、私たちの信念と想像力を決定する。社会の進歩を評価する経済的社会的な指標の開発が必要である」と提案した。より包括的な方法で社会的進歩と幸福を測定する必要があるという声が高まり、所得以外10の多層的領域を含む「より良い暮らし指標」が開発された。

 韓国の「より良い暮らし指数」はどうだろうか?今年も例年同様、教育や安全などの分野で上位を占めたのに対し、共同体、健康、仕事と生活のバランスなどで最下位圏にとどまった。詳しく見てみると、教育分野の中で高校卒業者の学力で1位を、仕事と生活のバランス分野の中では長期労働で33位となった。学生と労働者が1日の大半を学業と労働に費やしていることを裏付ける結果だ。一方、個人が危機に直面したときに助けを求められる関係網(共同体)は、最下位の36位だ。長時間学業と労働に苦しみながらも、共同体からは最悪の保護を受けている国であることを、この指数は示している。

2015年韓国の「より良い暮らしの指数」(単位:10点満点、括弧の中は順位)綜合平均点数5.3(27)//ハンギョレ新聞社

 教育の分野で高い成果を出したのは、高校卒業者の読み取り、数学・科学の学力で1位を占めたからだ。一方、大学教育を含む教育達成の分野では16位で、急激に順位を落としている。高校教育まで、世界1位の水準を維持しているのに、大学などの就職市場に直接影響を与える高等教育においては中程度の順位に留まっているのだ。大学教育の質が韓国の教育問題で解決すべき優先課題であることを示して成績表だ。

 共同体の崩壊は深刻な水準だ。韓国は「困ったとき、社会的ネットワークから助けてもらえる」との回答が73%で、調査対象国の平均的な88%を大きく下回っている。特に、高学歴者は83%が共同体の保護を感じる一方、義務教育を受けただけの低学歴者の場合は、53%だけが共同体から助けてもらえると答えた。

 健康の分野でも33位と最下位圏に入った。細部指標の中で期待寿命は81歳として14位に当たるが、「あなたは健康ですか?」という質問に対する「自己診断健康」は35位で、最下位圏にとどまった。「良い」または「非常に良い」という肯定的な回答は35%で、OECDの平均的である68%を大きく下回った。文化的な影響もあるだろうが、その分多くの人が健康である自信を持てないということだ。これは、長期間労働で仕事と生活のバランスが崩壊(33位)されたのと密接に関わっているものと見られる。

国家別の暮らしの満足度(2015年)資料:経済協力機構(OECD)//ハンギョレ新聞社

 「より良い暮らし指標」は、各国の制度と現実を表すには、一定の限界もある。代表的なのが、住宅分野だ。細部指標である「住宅関連支出」で、韓国は2位(低い順)を占めた。住宅関連の支出は家賃、ガス、電気、水、家具、修理費などが含まれており、傳貰(チョンセ=韓国独自の保証金制)など、韓国ならではの住宅コストを適切に反映されていない。持家を好む韓国人は家計融資を通じて金融費用を支出しているが、これはまた、住宅関連費用に含まれていない。家賃方式の使用料だけを反映しているせいで、住宅のコストが過度に過小評価されているのだ。一方、所得分野の世帯当たりの金融資産には、賃貸収入などの不動産収入は含まれていない。

 雇用分野でも16位を占めているが、人々が感じる雇用不安、現実とは多少かけ離れている。細部指標の職業の安定性で4位を、長期失業率では1位となった。職業の安定性は、2013年に指標が変更され、最下位の35位から2014年に4位に垂直上昇し、指標の信頼性に疑問が提起されている。これらの11分野別の指数は「暮らしの満足度」という主観的評価に包括的に反映されている。健康、教育、所得、個人的な充満感、社会的状況などの体感度を反映する指数だ。暮らしの満足度は昨年25位から今年は29位に、順位を落とした。

 韓国の特徴は、上位指数と下位指数が克明に分かれているという点にある。分野別の点数が比較的に均一な分布を示す他の国とは対照的だ。教育、市民参加、安全など、いくつかの分野は首位圏に入っているのに対し、社会的要因を反映する共同体、健康、仕事と生活のバランス、環境、生活の満足度などでは最下位レベルを抜け出せずにいる。所得の不平等などの経済的要因も重要だが、社会的安心感を与える共同体の復元が切実で、仕事と生活のバランス、環境、生活の満足度など、これまで関心が少なかった分野を中心に政策の優先順位を付けなければならないことを示唆している。

イム・チェウォン/ソウル大学国家リーダーシップ研究センター研究員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力 :2015-06-01 18:26

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/693720.html  訳H.J

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