成長の果実家計に届かない
消費の増加、成長率の半分に止まる
「不安な未来のせいで財布のひも堅い」
「国民所得が3万ドルに達しようというのに、自分の収入が増えるのは物価上昇率とあまり差がないと思います。いつ仕事を失うか分からないし、老後のための蓄えも必要だし、住宅ローンももうすぐ元金返済を始めなければならないので、支出をできるだけ減らすのは当たり前ですね」
デザイン会社に勤務するキム氏(48)の話だ。昨年、韓国の1人当たりの国民総所得(GNI)が2万8000ドルを超え3万ドル時代を控えている韓国銀行の発表が、彼には遠い国の話のように聞こえるようだ。
25日、韓国銀行が発表した「2014年国民経済計算(暫定値)」によると、昨年の韓国経済は3.9%成長(名目国内総生産基準、実質経済成長率は3.3%)し、1人当たりの国民総所得(GNI)が2968万ウォン(約322万2000円)で、前年度に比べ3.5%(101万3000ウォン、約11万円)増えた。ドルでは7.6%(2001ドル)増の2万8180ドルに達した。ドル換算所得が大きく増加したのは、ウォンの価値が昨年3.8%切り上げられたからだ。
しかし、企業や政府の収入を抜いて、国民の個人の懐具合が確認できる1人当たり家計の総可処分所得(PGDI、税金・年金などを抜いて、個人が任意に使える所得)は3.3%増にとどまり、1人当たり国民総所得の増加率(3.5%)には及ばなかった。また、家計の消費を中心とした民間の実質消費は実質経済成長率(3.3%)を大きく下回る1.8%増にとどまった。家計が財布のひもを堅く締めて消費支出を極度に抑えているのである。
1人当たり家計の総可処分所得は、昨年1662万6000ウォン(約180万5000円)と集計された。 4人家族基準では、平均6650万4000ウォン(約722万円)だ。対前年比増加率は3.3%で、通貨危機当時の1998年(3.2%)以来の最低値であり、世界的な金融危機直後の2009年(3.3%)と同じ水準だ。これは、成長の果実が家計にまで届かなかったという意味だ。
1人当たり家計総可処分所得は、2012年と2013年にそれぞれ3.4%と4.5%増加し、1人当たりの国民総所得の増加率(3.3%、3.0%)を上回ったが、昨年の国民総所得の増加速度についていけなかった。こうして国民総所得で家計の総可処分所得が占める割合も昨年56.0%で、前年(56.2%)より小幅減少した。この比率は、2001年(61.7%)までは60%を超えたが、以降、企業所得が家計所得よりも早く増え、50%半ばまで下落した。経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均は62.6%(2012年基準)水準で、韓国より7%ポイントほど高い。
経済にはまだ活力が不足している。実質経済成長率は、2012年に2.3%から2013年2.9%、昨年3.3%と非常に緩やかな速度で上昇した。家計支出の抑制による消費の低迷が経済の活力回復に大きな障害となっている点が、昨年より顕著になった。昨年の実質民間消費増加率は1.8%で、2009年(0.2%)以来最も低く、3年連続で1%台を超えなかった。家計所得の増加も不振だったが、負債の返済や先行き不安に備えて貯蓄を増やす傾向も、一因とされる。家計純貯蓄率は6.1%で、2004年(7.4%)以来10年ぶりに最も高かった。
キム・ヨンテ韓国銀行国民経済計算部長は「家計貯蓄率が高いのは、経済の安定性の面では肯定的だが、いくつかの要因により家計消費性向が低くなったことは、景気の負担になりかねない」と述べた。イ・グンテLG電子経済研究院首席研究委員は、「質の低いサービス業を中心に雇用が増えて自営業状況が悪化するにつれ、国民所得の増加分ほど家計所得が増えないうえに、世界的な金融危機以降、低成長基調が続く中、将来への不安まで重なり、家計がお金を使わない」と診断した。
最も包括的な物価水準を示すGDPデフレーターは、昨年0.6%で、前年(0.9%)よりもやや低くなり、2年連続で0%台水準を維持した。
韓国語原文入力: 2015.03.25 21:09