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[ニュース分析] 朴大統領の両王手…“刃返し斬法”と“補欠選勝負”

登録:2015-04-29 01:07 修正:2015-04-29 08:37
 対国民メッセージ後の嵐
 選挙前日“親朴”集中ターゲット
 →焦点移して文在寅代表圧迫
 少数の核心参謀の助けで直接作成
 →セヌリ支持層結集策
キム・ソンウ大統領府広報首席が28日午前、大統領府春秋館で朴槿恵大統領のメッセージを発表している=青瓦台写真記者団//ハンギョレ新聞社

■両王手1 「ソン・ワンジョン赦免」を持ち出した理由は?

 朴槿恵(パク・クネ)大統領は28日、ソン・ワンジョン前京南企業会長の赦免を「万悪の根源」と規定して「ソンワンジョン・リスト」問題の震源地とした。 「きちんと真実を明らかにせよ」という話は誰が見ても検察に対する捜査指示と読み取れる。

 朴大統領はなぜソンワンジョン・リストの政治局面で赦免問題をターゲットにして攻撃に出たのだろうか。 野党は典型的“焦点ぼかし”と判断している。 新政治民主連合の「親朴権力型不正ゲート対策委員会」委員長のチョン・ビョンホン最高委員は「赦免問題がある程度は国民に受け入れられていると判断した朴大統領が、再補欠選挙を翌日に控えセヌリ党を助けた」と話した。

 しかし、朴大統領が単純に再補欠選挙だけを意識して赦免問題を持ち出したとは思えない。ソンワンジョン・リストに上がった8人の名前のうち、7人は“親朴”の中心人物だ。 聖域なき検察捜査が進行すれば、その刃は意図に反して朴大統領側を狙う可能性も排除することはできない。 政権の統治基盤が根本から揺らぎ、手のほどこしようもない権力漏水局面に駆け上がることになる。

 ところで2007年の赦免は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領と大統領選で当選した李明博(イ・ミョンバク)氏の間でなされた。 この問題に食い込めば、“親朴”を狙った刃を“親李”と“親盧”に向けることができる。 事件の焦点も“親朴の政治資金授受”から“親李・親盧の赦免”に移すことになる。 2007年の赦免当時、大統領府秘書室長だった文在寅・新政治民主連合代表を縛り付けるカードにもなる。 大統領府側から見れば“神の一手”に近い。

 朴大統領のメッセージは、高度な企画と精巧な調整を経たものと見られる。 大統領の“健康悪化”発表直後に出して効果の最大化も試みた。 核心を“赦免問題”に集中させ、メッセージの分散も防いだ。 ソンワンジョン・リストに関連した検察の捜査と与野党の内密な雰囲気、4・29再補欠選挙精密状況などを総合的に検討した跡が伺える。 与党の動きに明るい関係者は「朴大統領は普段は原則的で大きな枠組みだけを話したが、今度は非常に具体的だ。 文在寅代表を狙うことに焦点を合わせた。 大統領府高位級の企画ではないかと思う」と語る。

 朴大統領が赦免問題に対するガイドラインを提示したことにより、法務部と検察もいかなる方法であれ、後続措置に悩むことになる。 ファン・ギョアン法務部長官は今月20日、国会法制司法委員会で「多少異例的な赦免に対して国民が心配しているので、問題点が発見されれば捜査する」と述べた。 2007~2008年の政権交代期に「ノ・ゴンピョン―イ・サンドク(李前大統領実兄)ライン」が稼動したという一部報道と関連して、検察がある種の“赦免ロビー”情況を捕捉したのではないかという観測も一部出ている。 だが、具体的証拠が出てこなければ朴大統領の意図とは異なり、逆風がまき起こることもありうる。

イム・ソクキュ記者

■両王手2 なぜ健康悪化にかかわらず“電撃対国民メッセージ”

キム・ソンウ大統領府広報首席(前列中央)が28日午前、春秋館でいわゆる「ソンワンジョン・リスト」と関連した朴槿恵大統領の対国民メッセージを発表した後、記者たちの質問を聞きながら歩いている=青瓦台写真記者団//ハンギョレ新聞社

 「ソンワンジョン・リスト」問題に関連して28日午前に発表された朴槿恵大統領の対国民メッセージは、大統領府の核心参謀さえ当日朝まで発表日程を把握できないほどに電撃的に行われた。

 「安静を要する」という診断を受けた朴大統領が、この日午前に予定された閣僚会議主宰日程まで取り消したために、与党や内部参謀は「29日の再補欠選挙以後にでもメッセージを出すだろう」と予想していた。 ミン・ギョンウク大統領府報道官も朝のブリーフィングで「(ソンワンジョン・リストに対する)立場の表明と関連した計画は何も知らない」と明らかにした。 ブリーフィング後わずか2時間で状況が変わったのだ。

 朴大統領が直接出られない状態なのに、あえてこの日に対国民メッセージを発表したのは、結局29日に行われる補欠選を意識したためとみられる。 ソンワンジョン・リスト問題で窮地に追い込まれた与党支持層の結集のために、大統領自身がより強烈なメッセージと収拾策を出す必要があると判断したわけだ。 補欠選結果が悪い場合、世論の悪化を放置したという責任論が朴大統領に降りかかってきかねないためだ。 補欠選が与党の敗北に終われば、朴大統領のメッセージがこの日のように強硬には出しにくくなり、強度調節が必要になり、その場合には今後のソンワンジョン・リストの政局で、大統領府が司正ドライブを通じて政局の主導権を取りにくい状況が続きかねないという点を意識したと思われる。

 補欠選を翌日に控えた雰囲気が、セヌリ党に不利ではないとの展望も朴大統領の選択に影響を与えたようだ。 選挙結果が良ければ朴大統領が病床からセヌリ党の選挙勝利に重要な役割をしたと評価され、これはすなわち与党に対し大統領府が優位を占める動力になりうる。

 この日の対国民メッセージは公式ラインではなく、少数の核心参謀の助けを得て朴大統領が直接作成したと伝えられた。 キム・ソンウ大統領府広報首席はメッセージを代読した後「大統領がいつメッセージを準備したのか」という質問に「大統領が出国し金武星(キム・ムソン)セヌリ党代表に会い『帰国してから決める』と話した。歴訪先でいろいろ考えて整理された」と伝えた。

ソク・ジンファン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/688913.html 韓国語原文入力:2015-04-28 21:46
訳J.S(2662字)

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