米国のトランプ大統領は、北朝鮮が「57発の核兵器」を保有しているとして具体的な数値を示したものの、「非核化」が朝米対話を目指す目的かとの質問には明確な回答を避けた。「北朝鮮が核を保有している」という事実を受け入れる現実論を下敷きとして、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長との4回目の首脳会談に臨もうと決意しつつあることがわかる。対して韓国政府は「北朝鮮の核能力の高度化の阻止」(凍結)が北朝鮮との交渉の第一目標だが、究極的には「核なき朝鮮半島」という大原則が揺らぐことがあってはならないとの立場だ。朝米対話の推進過程で韓国の立場が必ず反映されるよう、あらゆる外交力を注ぎ込むべき時だ。
トランプ大統領は19日(現地時間)午前、記者団に「年末に金委員長と会えると予想するか」と問われ、「そうなるだろう」と答えた。続けて「彼は57発の非常に強力な核兵器を保有している」としつつも、「我々が賢明な大統領を擁する限り、彼は大丈夫だろう」と語った。数を明示したのは、北朝鮮の核が否定しがたい「具体的な現実」であることを強調しようというトランプ大統領特有のレトリックだと解釈しうる。トランプ大統領は続く午後のイベントで「金委員長との再関与の目的は依然として非核化か」と問われ、「答えたくない」と言って話を遮った。
北朝鮮の核問題に関して第2次トランプ政権が示してきた公式な立場は、「北朝鮮の完全な非核化」(2025年11月の韓米共同説明資料)または「北朝鮮の非核化」(今年5月の米中首脳会談についての米国の説明資料)を推進するというものだ。しかしそれと同時に、トランプ大統領は2期目の初日から北朝鮮を「核保有国」と呼んでおり、国防総省も今年1月に発表した「国家防衛戦略(NDS)」から非核化に関する文言を完全に削除している。そのため、米国の真意をめぐっては論争が絶えない。大陸間弾道ミサイル(ICBM)の廃棄など、米国に対する脅威だけを取り除いて制裁を解除するなどの妥協をトランプ大統領にされると、「核なき朝鮮半島」は完全に遠ざかり、韓国の安保上の利益は大きく損なわれざるを得ない。
朝鮮労働党のキム・ヨジョン副部長は19日、米国が合同演習縮小カードを切ったことについて「評する価値すらない」と述べつつ、事実上「対朝鮮敵視政策」の廃棄を求めた。北朝鮮は続いて、東海(トンヘ)に向けて10発あまりの短距離ミサイルを発射した。これから朝米間で繰り広げられる綱引きを注視しつつ、韓米のコミュニケーションを強めることによって、何とか韓国が対話の場に直接かかわる機会が得られるよう模索すべきだ。