2023年12月、パレスチナの女性農民運動家ハナディ・ムハンナの避難の道のりは、他の人々と少し異なっていた。イスラエルの占領軍に破壊された「種子銀行」の廃きょから小麦、大麦、ほうれん草などのパレスチナ在来の種子をまず救い出さなければならなかった。イスラエルはパレスチナ農民にイスラエル産や外国産の遺伝子組み換え種子の使用を強制してきた。これに抗してムハンナは、多くの水と除草剤が不必要で適応力に優れた在来の種子を農家に供給する運動をしてきた。集団虐殺の初期にガザ地区の唯一の種子銀行をなきものにしたイスラエルは、今年7月にはパレスチナ西岸地区の種子銀行も掘削機で押し潰してしまった。
78年目に入ったイスラエルによるパレスチナ植民地支配史の中でも、最も暗い時期を今、パレスチナは通過している。イスラエルはすでに2007年に封鎖していたガザ地区を、2023年10月7日以来全面封鎖しており、米国製の兵器でホロコーストを繰り広げている。子どもの死者が2万人を超えて久しく、生存している子どもも96%が、死が迫っているという恐怖を抱いている。イスラエルは、学校や病院などの民間施設を爆撃したうえで、医療スタッフ、救助隊員、記者が現場に到着すると再び爆撃し、殺害した救助隊を救急車、消防車とともに埋めた。家と農地の90%以上を破壊し、救援食糧の持ち込みを禁止して飢餓を設計した。600カ所以上から4カ所に減らした救援食糧配給所で毎日数十人の飢えた人々を撃ち殺している。車が通れなくなった道で負傷者を運ぶロバを撃ち、虐殺後に遺体を放置して野良犬に食わせている。
生態虐殺は集団虐殺の一部だ。最初の12カ月でイスラエルがガザに浴びせた爆弾は8万5千トンに達し、第2次世界大戦時の爆弾の総量を上回った。ガーディアンは、最初の15カ月でたまった5千万トンのコンクリートの残骸を片付けるには3100万トン以上の炭素が排出されると報道している。不発弾があふれ、有毒物質で土壌と水が汚染されているガザは、不毛の地になりつつある。近ごろ翻訳された『パレスチナを破壊することは、地球を破壊することである』でアンドレアス・マルムが指摘しているように、ガザでは「生態虐殺と集団虐殺は以前には見られなかったあり方で融合している」。
理解できないのは、ガザでパレスチナ人を絶滅させた後に、ユダヤ人農業共同体を作る計画をイスラエルが立てていることだ。不動産取引まで行われている。にもかかわらず、核兵器できれいにしてしまおうとまで主張して生命の住めない土地にしているのだ。動物の皮を使わない「ビーガン軍靴」を履いて数百万本のオリーブの木を根こそぎにし、聖書時代の権利を主張する、欧州からやって来たこの侵略者たちは、決してこの地に属する者ではない。
もしかすると、このように極端な集団虐殺と、韓国で私たちが叫ぶ気候正義は、かけ離れたものと感じられるかもしれない。コロンビアの大統領グスタボ・ペトロは「ガザは未来のリハーサル」だと指摘して、富裕な列強が自分たちに屈服しない人々にどのようなことをしうるのか、どのようなことをしても許されるのかを示すために遂行している実験だと述べた。私たちが目撃しているのは、全地球的な生態虐殺のリハーサルでもある。私たちと無関係だなどということはありえない。
いかなる戦争も虐殺もせずとも、軍隊は存在するだけで、全世界の炭素排出量の5.5%を排出する。昨年、ガザの集団虐殺にまい進することで、イスラエルの軍事費は65%も増加し、世界12位を記録した。韓国は支出を11億ドル増やして順位を1つ上げた。
集団虐殺の最初の月、20日間の爆撃の末にイスラエル地上軍がガザ地区に侵攻した翌日、イスラエルはガザ沖のガス田の探査ライセンスを発行した。それを取得した企業の一つは、韓国石油公社が株を100%所有しているダナ・ペトロリアムだ。私たちがなおさら無関係ではない理由がここにある。来たる9月27日の気候正義行進で集団虐殺と生態虐殺の終息を叫ぼう。このリハーサルで私たちは必ずや共に勝利しなければならない。
テョンヤピン|「パレスチナと連帯する韓国市民社会緊急行動」活動家 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )