最後まで接戦と言われていた5日(現地時間)の米大統領選挙で、ドナルド・トランプ前大統領(78)がやすやすと勝利を収めた。米国の国民は、「米国第一主義」を掲げ、物価と移民問題の解決を積極的に主張したトランプ氏を選択した。これにより、米国の対外政策も、価値観を共有する同盟国を糾合して中国とロシアに対抗するという「価値観外交」から、自国の利益を排他的に掲げる「一方主義外交」へと修正される可能性が高まった。韓国政府も「トランプリスク」を最小化するために、コミュニケーションを強化しつつも、「価値観」より「国益」を前面に掲げる柔軟な外交への方向転換を模索すべきだ。
トランプ氏は6日午前2時27分ごろ、フロリダ州ウェストパームビーチにあるコンベンションセンターに登場し、「第47代大統領に当選して光栄だ」として勝利を宣言した。トランプ氏は、共和党候補として2004年以降で初めて全国単位の選挙でも勝利するなど、接戦が予想されていた7つの州すべてで対立候補を破った。民主党のカマラ・ハリス副大統領は勝負どころだった「ラストベルト」3州すべてで、比較的大きな差をつけられて敗れた。共和党はこの日の上下両院選挙でも勝利し、過半数の議席を確保した。
今回の選挙の最重要争点は、物価や移民などの、米国人の実生活と密接に関係する国内問題だった。トランプ氏は、萎縮しつつある米国人の心理と外国人嫌悪を積極的に助長する演説で、白人支持者の票を集めた。極端な孤立主義や保護主義の色彩をあらわにしつつ、「すべての国に10%の普遍関税、中国には60%の関税を課す」と述べたほか、韓国を「マネーマシン」と呼びつつ、現在の実に10倍の年間100億ドル(約14兆ウォン)の防衛費分担金を取ると叫んだ。結局、米国社会の多数派を構成する白人の中産階級労働者が「米国を再び偉大に(MAGA)」を掲げるトランプ氏の訴えに答えたわけだ。
韓国は今、バイデン政権と歩調を合わせて推進してきた「価値観外交」で大きな外交的苦境に陥っている。南北関係は事実上「敵対的な二つの国家」へと変質し、冷戦終結から30数年ぶりに朝ロの戦略的接近を許した。国家安保室のキム・テヒョ第1次長は6日のブリーフィングで、過去2年半の間に「グローバル中枢国家ビジョンに則って韓国の安保・経済利益を極大化」したと主張するが、朝鮮半島の戦争リスクはいつにも増して高まっている。
このような危機の中、来年1月20日に任期がはじまる第2期トランプ政権までもが自国の国益ばかりを前面に押し出し、度を越した圧力を加えてきたら、韓国は「四面楚歌」の危機に陥ることになる。考えたくもないが、先月初めに合意された韓米防衛費分担特別協定(SMA)の無効化を要求しつつ、「在韓米軍撤退」や、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が最大の外交的成果だとする「ワシントン宣言」を紙切れにすると脅してくる恐れがある。このような状況において、ウクライナに殺傷兵器を提供しうるとしてロシアと対決し、中国との対立を続けることは、何の国益にもならない。