原発セールス外交に取り組む尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が22日、チェコ訪問を終えて帰国した。大統領室は、韓国水力原子力(韓水原)のドコバニ原発の受注の最終契約の見通しについて「100%断定することはできないが、(チェコにとって)韓国以外の代案はまったくない」と訪問の成果を誇った。しかし、安過ぎ受注批判に続き、大きな障害として浮上した米国ウェスティングハウスとの知識財産権をめぐる対立は、依然として解決できていない。
尹大統領は19日(現地時間)に行われたチェコのペトル・パベル大統領との共同記者会見で、チェコの記者に知的財産権について問われ、「韓米政府は原発協力についての確固たる共感を互いに共有している」として「この問題はアラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原発の時のようにうまく解決できるだろう」と述べた。しかしハンギョレの報道を見ると、両社はまだ合意に至っておらず、ウェスティングハウスは来年下半期までに国際仲裁決定が下されるのは難しいとまで述べている。
尹大統領が言及したバラカ原発の例は、2009年に韓国電力がウェスティングハウスから主要部品の供給を受けるという方式で合意を引き出したというもの。問題は、当時と今とでは状況がかなり異なるという点だ。当時はウェスティングハウスと事前に輸出協議が行われていたが、今回はそうではない。また、昨年4月の韓米首脳会談の共同声明には、原発協力について異例にも「各国の輸出規制規定と知識財産権を相互に尊重」するという文言が入っている。米国政府を背景にして、ウェスティングハウスがさらに厳しい要求を突き付けてくる可能性があるということだ。チェコが韓国にチェコ現地企業の原発建設への参加率を60%とするよう要求している状況で、ウェスティングハウスに合意金まで支払うことになれば、韓国の懐に入るものは多くないだろうと指摘されている。
米日などの主要国の企業とは異なり、原発建設で経済性が確保できれば韓国の国家経済に役立つのは事実だ。しかし、チェコとの「100年を共に見通す原発同盟」、「『チーム・チェコリア』を結成して原発ルネサンスを共に成し遂げよう」という尹大統領の発言は行き過ぎだ。争点が解決されていない状態であるにもかかわらず、大統領が自ら過度な期待を植えつけると、駆け引きをすべき実務交渉で不利になりかねない。また、ウクライナ戦争を契機として一部の主要国が原発を改めて建設する傾向があるのは事実だが、かといって「原発ルネサンス(復興)」まで期待するのは時代錯誤だ。原発至上主義に陥り、再生可能エネルギーの拡充という世界的な潮流に取り残されてはならない。