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「尹は歴代初『政権発足即レームダック』大統領…残された2つの道」(1)

登録:2024-05-02 02:01 修正:2024-05-02 11:36
[カン・ヒチョル論説委員の直撃インタビュー] 
パク・サンフン元国会未来研究院招聘研究委員・政治学博士
パク・サンフン元国会未来研究院研究委員が29日午前、ソウル麻浦区のハンギョレ新聞社でインタビューに応じている=キム・ヨンウォン記者//ハンギョレ新聞社

 総選挙が終わって20日。勝敗中心の競馬中継のような政治評論は少し落ち着いた。今や専門の研究者の考えを聞く時だ。

 民主主義と政党政治を長く探求してきたパク・サンフン元国会未来研究院研究委員は、2022年8月にもこの「直撃インタビュー」に応じている。政権発足から3カ月あまりの尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の国政支持率が、大統領選挙の得票率(48.56%)の半分以下の24%に急落した直後だった。当時、同氏は「尹大統領が政治に対する狭い視野から抜け出して大きく開眼できなければ、悪い状態が続くだろう」と語った。「米国産牛肉輸入再開反対ろうそくデモ」に直面してから大きく変化した李明博(イ・ミョンバク)元大統領を例に挙げつつ。

 しかし、尹大統領は変わらなかった。その結果が今回の総選挙の成績表だ。ハンギョレはパク元委員と29日に会い、尹大統領と与野党各党、政党民主主義、第21代国会と第22代国会の現在と未来について尋ねた。

■「審判選挙」行き過ぎた単純解釈…有権者心理は複雑

-4・10総選挙をどうみたか。

 「韓国の政治、民主主義を専攻する人間としては、あまり愉快ではなかった。今の政党はいずれも韓国政治が必要とする役割をうまく果たせていないと考えているため、できればどの党も過半数にならないことを願った。だから、各自が自分たちの力の限界を少し考えて、政治の方法で、自ら振り返りながら変化することを願ったが、そうはならなかった。今回の選挙を『審判選挙』だというのは一種の『不誠実な解釈』だと思う。いわゆる『民意』を知ることは、神の意思を知るのと同じくらい難しい。現代政党理論の完成者だと言えるジョヴァンニ・サルトーリの言葉だ。だから、選挙結果を非常に安易に、群れをなすように解釈してもよいのか、そう考えた。投票する人々の心情は少し複雑だったろうと思う。望ましくない政治状況にあって、有権者の選択がどれほど困惑したものなのかも少し考慮しながら解釈すべきではないだろうか。だから今回の選挙の過程を見守っているあいだ中、『本当に韓国政治は病んでいるんだな』と思った」

-「192対108」の意味をめぐって多くが語られているが。

 「韓国政治は民主化から約36年たったが、『3金』前と後、2つの時期に分かれると思う。民主化初期の過程は非常によく、3金はうまく仕上げたと言える。3金後は政治が揺れ動きはじめる。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領時代には初めて政権党が過半数の議席を持ち、その次の選挙では野党第一党が81議席という最低の議席数になった。その後、李明博、朴槿恵(パク・クネ)、文在寅(ムン・ジェイン)の時代は一方的な勝利が繰り返された。このような変化は、いかりを下ろせないでいる船が波に揺れるような「社会的基盤なき政治」だと言える。このように空回りするものだから「偏り現象」が生じるし、今回もそうだった。だが韓国政治は、選挙で勝利した政党さえ自分たちの思い通りに立ち回ることはできていない。韓国政治には、行き過ぎを強制的に規制する枠のようなものがある。例えば、第18代国会で民主党は81議席だったが、与党に勝手なふるまいはできなかった。今回の選挙で多くの議席を獲得した民主党と民主党の亜流政党も同じだ。一定の限界の中で互いに節制しないと、自分たちの地位も安定した評価は受け続けられないのではないか。すなわち『圧勝した』または『責任追及だ』、だからこれからは民主党が主導すべきだというのは、党派的解釈ではありえても、韓国政治のこれまでの状況に合う解釈ではない」

-政治において重要な「言葉」の問題、「ファンダム政治」は総選挙を経て、より悪化したように思える。

 「韓国社会の様々な意見が同等に考慮される『多元民主主義』を願ったが、ファンダム民主主義が与野党いずれにおいても支配的傾向となったということを確認した。ファンダム民主主義は自分たちだけが正しいという主張を繰り返す。与野党で違いはない。協議、交渉、討論ではなく相手を最悪の状況におとしめ、自分たちが一方的に望んでいるものをすべて得るべきだという方向へと向かっている。ファンダム民主主義は、すなわち『政治なき民主主義』を指向するものだ。扇動家役や公益の破壊者役を果たす人々がより優遇される選挙をやったのではないかと思う。韓国社会が巨大な『虚偽の構造』にぴったりとはまってしまった気がする。失望にとどまらず絶望さえ感じる」

-単に勝敗や結果に関心があるだけで、「過程」の問題は問われなくなってしまった。

 「先の大統領選挙から言われだした『非好感選挙』という言葉は、実は韓国社会の重大議題が扱われていないということを意味する。単に権力を持つことになる状況にある人々の安全、当落に関する情報があるだけだから、韓国社会の世論を主導する中産層は本当に偏狭なエリート中心の政治観に深く浸っているんだな、と思う」

■政治をやる大統領…だめなら「椅子だけ守っていろ」との声があがるはず

-尹錫悦大統領の過去2年間の任期遂行について評価するとしたら。

 「尹大統領の出現は与野党の政権交代だったのかを再考せざるを得ない。それは韓国の有権者がいらだちを表現する方法だったのではないか。その前の文在寅大統領時代の不動産や不平等の問題、若い世代の機会や未来が不安定になったことに対するアンチテーゼのようなものだったのだが、あの人が野党や何らかの政策を代表していたわけではない。有権者は未来の公共政策の方向性を考えて決めたのではなく、何らかの『シグナル』を送るために使ったのだと思う。その後は期待をかけるに値する反応が示せなかったものだから、政権獲得がまさに政治的意味の終わりであり、その後は歴代大統領の中で初の『政権発足が即レームダック』である大統領が登場したのかもしれない」

-尹錫悦大統領の残りの3年の任期の見通しは。

 「2つの道がある。これまでとは異なり『政治をやる大統領』となる道。そして変数の役割を果たせない大統領になる可能性もある。前者はよい道だ。大統領制においては、行政府と立法府の間で調整がうまくいかず、こう着したら困るからだ。政治をやるというのは、それを解決するということだが、その点で尹大統領は経験がなさすぎるし、性格も少し合わないようだ。それでも周囲の意見をせめて少しでもよく聞いて適応してくれることを期待する。だが、それができない状況なら、尹大統領はもはや変数とはなり得ないと思う。政治的に尹大統領の存在感が認められないなら、今後は多くの人々に『ただそこに座っていろ」と言われる程度の存在になるのではないかと思う。前者が難しいなら、むしろ後者の方がましかもしれないと思う。大統領が力の限界を尊重せず、現状打破を過度に試みれば、かえって否定的な変化を許す可能性もある」

-総選挙が終わってから「大連立」、「同居政権」についての議論がぐんと増えた。

 「政治的には何であれ可能であるべきで、それが政治の役割だ。与野党の合意、事の解決のやり方次第だが、しないよりは試してみた方がましだ。実験は失敗しても前例になる。盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の大連立提案も、だから何度も復活するのだ。後に土壌が成熟すれば変化があり得るからだ」

(2に続く)

カン・ヒチョル|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1138842.html韓国語原文入力:2024-05-01 07:00
訳D.K

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