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■国民の力の危機は目指す理念や価値の不在が本質
-与党は総選挙で3連敗を喫した。消滅を予測する人もいる。
「そのような予測は本当に無意味で、少し節制してほしい。以前の3党合同の際、多くの人は韓国も日本のように保守長期政権へと向かうと予想した。チョン・ドンヨン氏が大統領選挙で大敗し、民主党が81議席にとどまった時、『保守20年政権説』を進歩学者たちは口にしていたではないか。そのような予測は当たらないと思う。政治で最も重要なのは階層基盤だ。結局、職業と所得の機会の問題だ。むしろ今、より重要なのは、『国民の力は保守政党なのか』という問いだ。半分は保守政党、残りの半分は無理念政党に近い。自分たちが作ろうとしている世の中について理念や価値を語るものがあまりない、ということの方がより大きな危機だ」
-総選挙が終わって20日たつのに、いまだに支離滅裂だと評されている。
「かつての国民の力は野党に比べて組織がしっかりしていた。党役員の第1期目は1963年に作られた共和党のものだ。安定した党役員と地域党員の組織があった。しかし、それが朴槿恵(パク・クネ)元大統領の弾劾の際に割れた。分裂の傷は癒えていない。それにリーダーシップまでもが、ハン・ドンフンやホン・ジュンピョのような『揶揄(やゆ)する言語』ばかりが支配するようになったため、危うくなっているのだ」
-一方、民主党はイ・ジェミョン推戴論、親ミョン中心の指導部の樹立の動きが主流になっている。
「韓国社会の保守の側は、一方的で陣営的な同意はしない。尹錫悦(ユン・ソクヨル)が絶対視されることはなく、朴槿恵(パク・クネ)に投票した人々が『このような政治はだめだ』と立ち上がってもいる。韓国社会の多元化にある程度歩調を合わせている。むしろ、今は民主党の方が韓国民主主義にとって負担になりつつある。端的に言うと、民主主義を標榜する政党において最も重要な公職者候補の決定過程が完全に知りえない状況になっている。すべてが党代表の恣意的な決定に任せられている。『委任民主主義』と呼べる状況へと向かっている。これを民主主義ではないと言うことはできないが、声の強い少数の人間が党の状況を左右し、残りの人間を恐怖に陥れて沈黙させるというのは、民主主義の価値と相反する。民主党は自分たちの歩んでいる道を振り返ってみるべきだ」
-今回の総選挙を語るには祖国(チョグク)党の登場も欠かせない。
「国際政治学界に報告されるに値すると思う。個人の名前を前面に掲げて一度の選挙でこれほど多くの議席を得た例があるだろうか。尹錫悦ら権力者へのアンチテーゼとして自分たちの権力を追求するこのような政党の出現をどう評価するかは、議論が必要なように思える」
-国会の中から見守った第21代国会を評価するとしたら。
「多くの議員が責任感を持って働いたということは認めなければならない。第22代国会も、おそらく半数以上はそうだろうと思う。ただ、政治をすべきではない、立法者の規範を備えていない人々が増えているのも事実だ。多くは初当選者だ。経験を通じて力の節制を学ばなければならないが、国会議員として政治キャリアを開始したため、そのような意識があまりない。キャリアのはしごを上ってきたのではない法律家も多い。『法律どおりの』国会運営も問題だ。立法府は法を作る場所であるため、法のとおりにやってはならない。最後まで妥協し、調整しつつ、法律そのものより先例や規範を尊重する『不文律』が、第21代国会ではだいぶ破壊された」
-候補公認のルール、党大会のルールなどでますます「政党民主主義」が退行しているとの指摘が多い。
「政治は責任政治が原則であり、権力を持った人間は責任を取らなければならない。ところが、責任が問われない党員の中に権力者を作り、法を作り、党を勝手に運営させるとしたら、それは『権力者党員』を作るものだ。野心家たちの短期的な権力追求の手段に過ぎず、『何だこの政治は』という冷笑主義を繰り返させるという点で『悪い民主主義』だと言える。世論調査の使いすぎも深刻だ。今回は宗教もどきになるところだった。政治が荒れた原因のひとつだ。世論調査は『消極的に用いる時』にのみ意味があるという言葉がある。積極的に何かを決める際に用いれば大きな問題が生じる。世論は作られるものであって、発見されるものではない」
-小選挙区制や衛星政党など、選挙制度の問題はどうか。
「いかなる選挙制度も中立的ではありえない。選挙制度はそもそも大きくて強い政党に有利だ。準連動型、連動型にすれば多党制になると言われるが、大きな政党はいかなる選挙制度を導入しても利益を得る機会がはるかに多い。だから、大きな政党であっても作ったり変化させたりする選挙制度の数学的効果を歪曲できないように、選挙制度の合意過程で完璧に『拘束』することが重要だ」
-緑色正義党は散々な成績だった。原因、進歩政党の未来をどうみるか。
「進歩政党は国会での議席獲得後、概して一度は失敗を経験するようだ。口では進歩的価値を公約するが、実際には非常に権力政治をしなければならないという現実がある。政治の世界は権力を扱うため、権力の分配問題が本当に難しい。党員、代議員、活動家、党のリーダーシップ構造を自らうまく作り出さなければならない。正義党はこの第一段階で失敗した。さらに言えば、落選したシム・サンジョン議員はこの第一段階の問題を象徴する人物となった。人々の期待は高かったが、それを実現するにはシム議員も経験などで少し格差があった。結果は気の毒なものだが、人々の冷静な診断かもしれない。しかし、人々の心の中から進歩政党がなくなることはないと思う。韓国社会での中間と右の大きさを考えれば、韓国政治の未来は左しかない」