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[社説]「尹大統領夫人の疑惑」取り上げるたびに重懲戒、報道の聖域なのか=韓国

登録:2024-05-01 05:53 修正:2024-05-12 23:17
言論掌握阻止共同行動が4月29日、ソウル南部地検前で「マスコミの口をふさぐ選挙放送審議委員会の制裁乱発を告発する」記者会見を行っている=言論労組提供//ハンギョレ新聞社

 4月10日の総選挙に関連する報道の公正性を審議する選挙放送審議委員会(選放委)は4月29日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領夫人のキム・ゴンヒ女史のブランドバッグ授受とドイツモーターズ株価操作疑惑を取り上げた「文化放送」(MBC)の時事番組「ストレート」に、最高レベルの法定制裁である「関係者懲戒」を議決した。放送通信審議委員会(放審委)と選放委が、キム女史の株価操作疑惑に言及したとの理由で放送局に法定制裁を下したのは、すでに6回目だ。キム女史関連疑惑については放送で一言も触れてはならないということなのか。

 「ストレート」は2月25日、チェ・ジェヨン牧師がキム女史にブランドバッグを渡す際にこっそりと撮影した映像の一部を流した。これに対して選放委員の多数が「悪意的な偏向放送」だとして、「関係者を懲戒すべき」という意見を出した。チェ・チョルホ委員(与党「国民の力」推薦)はキム女史を「平凡な主婦」に例え、「断るのが心苦しくて贈り物を受け取っただけなのに、それを渡した人が突然放送に出て請託性の賄賂を受け取ったと騒いだら、どれほど当惑し惨憺たる気持ちになるだろうか」と述べた。最高権力者である大統領の夫人は当然権力監視の対象だという常識は、眼中にもないようだ。キム女史の機嫌を損ねないようにするための努力は涙ぐましいほどだ。

 選放委員の多数は、キム女史とその母親がドイツモーターズの株式売買を通じて23億ウォン(約2億6千万円)の収益を上げたという放送内容についても、偏向報道だと批判した。この事案と関連した6回目の法定制裁だ。これまで選放委が4件、放審委が2件の制裁を下した。検察が裁判所に提出した意見書に添付された韓国取引所の資料に明示されている内容だが、これがなぜ法定制裁の対象になるのか、理解に苦しむ。もっとも、「キム・ゴンヒ特検法」に触れる際、「女史」という呼称を付けなかったとの理由で行政指導(勧告)を行うほどだから、言うまでもないかもしれない。

 昨年12月11日に発足した第22代総選挙選放委がこれまでに議決した法定制裁件数は30件に達する。過去最多記録を早くも塗り替えた。30件のうち最高レベルの「関係者懲戒」は14件にものぼる。今回の選放委以前まで「関係者懲戒」は2件に過ぎなかった。法定制裁はほとんど例外なく尹錫悦大統領夫妻と政府・与党を批判した時事・報道プログラムを対象にしたものだ。全体の法定制裁の57%である17件が政権に睨まれているMBCに下されたことは、示唆するところが大きい。「標的・過剰・政治」審議を日常的に行う放送審議機関は、言論の自由、ひいては民主主義を損ねる凶器にほかならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1138818.html韓国語原文入力:2024-04-30 23:49
訳H.J

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