来年から医学部の定員を2000人ずつ増やすと言っていた韓国政府が、大学ごとの教育環境に応じて増員の規模を1000~1700人台で弾力的に調整できるようにした。2カ月間続いている医療界と政府の対立において、主な争点になったのが増員の規模だっただけに、政府が一歩退いた形だ。ただし、医学部の増員政策を原点から見直すことを求めている医師団体は、この程度では受け入れられないという立場を示しており、道のりはまだ遠い。これからは政府が本格的な対話局面を作っていかなければならない。
ハン・ドクス首相は19日、2025学年度の新入生に限り、医学部定員を拡大することにした大学32校が増員規模の50~100%の範囲内で自律的に定員を調整できるようにすると発表した。首都圏外の6大学の国立大学総長らが前日に渡した建議を政府が受け入れる形を取った。建議文を出した6大学が政府の配分した増員規模を半分ずつ減らした場合、全体増員数は2000人から1700人に減る。すべての大学が半分に調整した場合、最大1000人が減る。同日の政府発表には現実的な切迫感がうかがえる。専攻医に代わり患者を診てきた医学部の教授たちは、25日になれば辞表提出から1カ月経過となり自動受理されると圧迫をかけているうえに、4月末までに大学入学選考施行計画の変更を終了しなければ、今年の大学入試選考に大きな混乱をもたらすためだ。
しかし、政府が「果敢な決断」だと意義付けしているものの、今回の修正案は医療界と政府の対立を解決できる打開策になるには不十分だ。医師団体は「増員規模の調整は意味がない」とし、一歩も退こうとしない。むしろ政府が「各大学の教育条件を考慮し」立場を変えることは、政府の従来の政策を自ら否定することだと攻撃した。実際、政府が国立大学総長らの建議を借りて局面転換を図ろうとするのは、無責任な態度といえる。本格的な協議を始めるためには、政府がもっと真剣な姿勢で対立を解決できる対策を示さなければならない。取り急ぎ2025学年度の増員規模は減らし、2026学年度からは2000人を維持するということも、面目を保つためのものであり、現実的な交渉案とは言えない。
医師たちもこれ以上「医学部定員増員」そのものを否定してはならない。集団行動を中止し、対話のテーブルに座るべきだ。救急患者が適時に治療を受けられない事例が増えており、手術が延期されるがん患者の苦しみも深まっている。政府と医療界、国会、市民社会が共に向き合い、医療空白事態を早急に解決しなければならない。