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[コラム]サムスン・ハンファが示した「コリアディスカウント」の原因

登録:2024-02-17 09:21 修正:2024-02-17 11:05
クァク・チョンス先任記者|ハンギョレ経済社会研究院
尹錫悦大統領が昨年12月6日、釜山中区の富平カントン市場で、サムスン電子のイ・ジェヨン会長(左)、ハンファグループのキム・ドングァン副会長(右)など企業オーナーたちと共に市場の食べものを試食している/聯合ニュース

 韓国政府は「コリアディスカウント」(韓国証券市場に対する低評価)対策として「企業バリューアッププログラム」の準備を進めている。株の空売りの中止、株式の譲渡所得税の大株主基準の緩和など、総選挙用ポピュリズム政策が無為に終わるや、日本の株主寄り政策の後に続こうとしているようだ。だが、中長期的に「コリアディスカウント」を解消するには、企業の古い支配構造という根本問題が解決されなければならないというのが専門家たちの衆論だ。

 国民の関心を引いたここ数年の二つの事件は、慢性病と化している企業の支配構造の後れた姿を示している。サムスン物産・第一毛織合併事件と、ハンギョレが単独報道したハンファのオーナー一家の譲渡制限付株式ユニット(RSU)特別待遇問題だ。

 サムスンは2015年、イ・ジェヨン会長の経営継承と支配力強化のためにグループの未来戦略室主導で合併を推し進め、イ会長の持株比率が大きい第一毛織に有利になるよう合併比率を策定した疑いで起訴された。当時、サムスン物産の企業価値は第一毛織の3~5.5倍だったが、合併比率を決める時には株価を口実に3分の1に低く評価した。このような異常な状況で、取締役会が少数株主や国内外の議決権諮問機関の反対を押し切って合併を強行する合理的な理由はどこにもなかった。

 ハンファは2020年からキム・スンヨン会長の息子であるキム・ドングァン副会長とキム・ドンウォン社長にRSUを付与した。RSUとは、一定の経営目標を満たせば会社が買い入れた株と現金を配る成果報酬制度だ。しかし、ハンファは経営成果の達成基準もなく、入社したばかりのキム・ドングァン副会長(当時副社長)に上位職クラスの専門経営者よりも多い数百億ウォン台(現在の価値基準)のRSUを与えた。キム・ドンウォン社長も当時常務職クラスに過ぎなかったのに、上位職クラスの専門経営者らを抜いて巨額のRSUを受け取った。取締役会は反対せず手を上げる役割しか果たさかった。

 オーナー一家の私益追求と取締役会の責任放棄に対して、裁判所と検察が公正な法基準で厳しく処罰すれば、企業の支配構造改善のきっかけが自然に作られるはずだ。だが、サムスン合併事件の一審(パク・チョンジェ裁判長)は、イ会長の継承を唯一の目的として合併がなされたとみなす証拠が足りないとし、株価操作、背任、会計不正などの疑惑が持たれているイ・ジェヨン会長などに全て無罪を言い渡し、免罪符を与えたとの物議を醸した。1600ページを超える判決文は、強引な論理と詭弁にあふれていた。

 サムスン物産の少数株主の利益が無視されたことはなく、むしろ利益になるという詭弁は圧巻だ。ムン・ヒョンピョ元保健福祉部長官らが国民年金に対し合併に賛成するよう圧力をかけ、数千億ウォンの損失を与え、サムスン物産が合併に反対する株主に提示した株式買収請求価格が企業価値より低すぎたためイルソン新薬が被害を受けた、という従来の裁判結果をすべてでたらめと否定するあきれた判決だ。

 先日、米国デラウェア州の裁判所は、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者に対し、会社から受け取った560億ドル規模のストックオプション(株式買収選択権)の株式を返還するよう判決を下した。規模が大きすぎて一般株主の利益に反し、報酬決定委員会もマスクと密接な関係にある人々が参加していたため独立的ではないという理由だった。

 韓国も会社と株主を裏切ったオーナー一家と取締役会に対して、米国のように厳重に責任を問わなければならない。だが、そのためには裁判所と検察の「目こぼし」の根絶と共に、現行の法体系の不備が補完される必要がある。商法382条の3(取締役の忠実義務)は「取締役は法令と定款の規定により会社のためにその職務を忠実に遂行しなければならない」と規定している。デラウェア州の会社法などが、取締役の充実義務の対象に会社と共に株主を明示しているのとは大きな違いだ。

 取締役会が株主の価値を侵害しても、会社に損害さえなければ法的責任を問うことができないという問題点は、2009年にサムスンエバーランド転換社債(CB)の安値発行に対する最高裁の無罪判決を生んだ。それから15年が経ったが、法の穴は放置されたままだ。RSUもベンチャー企業ではない一般上場企業は法的規制が全くない。

 野党「共に民主党」のイ・ヨンウ議員は昨年、取締役の忠実義務の対象を「株主の比例的利益」にまで拡大する商法改正案を発議した。また、一般上場企業を対象に、RSUの根拠を明示しオーナー一家には付与を禁止した資本市場法改正案も発議した。しかしこれらは全て、国会の法制司法委員会で寝かされ続けている。

 政府と国会は口先だけでコリアディスカウントの解消を叫ぶのではなく、商法と資本市場法の改正を急ぎ、企業の支配構造の改善に向けた制度的装置をまず整備しなければならない。そうでなければ株価浮揚策をいくら出しても「焼け石に水」に過ぎず、第2のサムスン・ハンファ事件を防ぐことはできない。

//ハンギョレ新聞社

クァク・チョンス先任記者|ハンギョレ経済社会研究院

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1128475.html韓国語原文入力:2024-02-15 20:16
訳C.M

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