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[寄稿]防衛産業輸出ではなく、防衛産業協力に力を入れるべき=韓国

登録:2024-02-08 06:38 修正:2024-02-18 15:27
尹錫悦大統領が昨年12月7日、京畿道城南市盆唐区のハンファ・エアロスペースで開かれた第2回防衛産業輸出戦略会議を終えた後、先端航空エンジンを観覧している=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 2023年、韓国の防衛産業輸出額は130億ドルだった。同年の輸出10位品目のバイオヘルス(134億ドル)に匹敵する。2022年には173億ドルを記録し、無線通信機器(172億ドル、10位)の輸出規模を越えた。このため、いたるところで「K防衛産業」への賛歌が聞こえており、防衛産業の輸出が「未来の基盤産業」だとか、「グローバル・ゴールドラッシュ」という浮薄な表現が溢れている。

 先月、国会では輸出入銀行の法定資本金限度を現在の15兆ウォン(約1兆6700億円)から最大35兆ウォン(約3兆8900億円)まで増やそうとした輸出入銀行法改正案の議決が見送られた。改正案の発議は30兆ウォン(約3兆3400億円)規模の対ポーランド防衛産業輸出の2次契約を念頭に置いたものだったが、常任委員会で議論さえ行われなかった。

 先日、インドネシアのある技術者が韓国と共同開発中の韓国型超音速戦闘機KF21に関する資料を盗もうとして摘発された事実が報道された。2011年にはその逆のこともあったからか、互いに慎重になっているようだ。インドネシアは開発分担金1兆6000億ウォン(約1780億円)のうち、約1兆ウォン(約1110億円)程度を未払いのまま第3国と戦闘機導入契約を結んだにもかかわらず、韓国は依然としてインドネシアに振り回されている。

 上記の3つのニュースをまとめてみると、韓国は体は大きくなったが、立ち居振る舞いはまるで子どものようだ。防衛産業の輸出が急成長したというが、国内の環境も力も不十分であるのが韓国の現状だ。「なぜ民間大企業の防衛産業輸出を支援し、あんなインドネシアと武器を共同開発するのか」という懸念の声があがるのもそのためだ。しかし、これを「なぜ防衛産業の協力をしなければならないのか」に変えてみよう。そうしたら、何が見えてくるだろうか。経済安全保障の核心手段、防衛産業の姿が明らかになる。韓国政府が先頭に立って進めるべきなのは、防衛産業の輸出ではなく、防衛産業協力であり、これを包括する安全保障協力である。

 ポーランドのような友好国との防衛産業協力は、一触即発の朝鮮半島有事に備えた防衛産業物資の相互運用性の増大と国外生産の効果を持つ。緊密な経済安全保障協力が切実な東南アジア諸国にとって、韓国の防衛産業物資は地域内で膨大な影響力を持つ中国や日本に比べ、明確な競争優位性を持つ希少品目だ。資源大国の中東が韓国を訪れる理由は、大国ではないためだ。これこそ、韓国の経済安全保障戦略の主軸となる手段であり、戦略的テコでもある。

 米国の2023会計年度の防衛産業輸出額は前年より16%増加した2384億ドル(約35兆2200億円)だった。このうち、政府が仲介する対外軍事販売(FMS)は前年より55.9%急増し、過去最高額(809億ドル)を記録した。米国務省はこれを安全保障に重要な対外政策手段とみなしている。だが、戦争の疲労感でウクライナとイスラエルに対する軍事支援が議会の敷居をまたぐことができなかったことを受け、ジョー・バイデン大統領は10月のテレビ演説で「民主主義を守る」というこれまでの防衛産業協力の大義名分の代わりに、「防衛産業輸出が国内の雇用創出に貢献する」という論理を展開したが、共和党に浅薄だという非難を受けた。それもそのはず、ウクライナの苦痛、ガザの絶叫が米国の防衛産業輸出の追い風になったからだ。

 韓国も同じだ。だが、いかなる国も国家の安危と直結した防衛産業に背を向けることはできない。特に内需市場が狭い韓国にとって、防衛産業の輸出は規模の経済を通じて財源の節減、先端技術の獲得に加え、国内生産の誘発、雇用創出という経済的効果ももたらす。にもかかわらず、韓国政府がこれを堂々と自慢し、関連部署と国外公館が防衛産業輸出の実績にこだわる態度は、米国、ドイツなど防衛産業強国の牽制と「武器商人」という汚名を自ら招いた。近視眼的と言わざるを得ない。

 欧州と中東で同時に火炎が広がっている。1月の台湾総統選挙の結果、台湾海峡でもさらに緊張が高まり、北朝鮮の核・ミサイル能力は日増しに高度化している。偶発的な衝突の可能性もあるとみられている。もし11月にドナルド・トランプ前大統領が大統領の座に返り咲いた場合、取引の達人の名にふさわしく、防衛費分担金の引き上げや在韓米軍の撤退カードを持ち出すかもしれない。主要国が、自ら望むかどうかにかかわらず軍備増強に乗り出している理由だ。未来戦の勝敗を左右する宇宙戦、サイバー戦にも備えなければならない。防衛産業の協力は選択ではなく必須だ。

 しかし、今はますます大きくなる体にふさわしい服と品行が求められている。総合的な防衛産業協力インフラとガバナンスの構築が必要だ。中堅民主主義先進国に生まれ変わった韓国の品位を守り、環境と社会的責任、支配構造(ESG)を考慮した防衛産業協力の青写真が必要だ。防衛事業法施行令第68条や戦略物資輸出入告示第6条など関連法制も見直さなければならない。この道の方が長い目で見て韓国にとっては有益だ。レースは始まったばかりだ。

//ハンギョレ新聞社
キム・ヤンヒ│大邱大学経済金融学部教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1127567.html韓国語原文入力:2024-02-07 08:51
訳H.J

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