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[コラム]もう一つの戦争、招いてはならない…朝鮮半島危機の打開策を

登録:2023-11-28 08:40 修正:2023-11-28 09:14
9・19南北軍事合意の白紙化で朝鮮半島危機が高まる 
外交は消え、軍事だけが幅を利かす現実を直視すべき 
6カ国協議の創意的再開を推進すべき時
2005年9月19日、6カ国協議の首席代表が北京の釣魚台で9・19共同声明に合意、採択した後、明るい表情で記念撮影している。左から米国のクリストファー・ヒル国務次官補(東アジア太平洋担当)、日本の佐々江賢一郎外務省アジア大洋州局長、中国の武大偉外務次官、韓国のソン・ミンスン外交通商部次官補、北朝鮮のキム・ゲグァン外務次官、ロシアのアレクサンドル・アレクセイエフ外務次官/聯合ニュース

 世界中の視線がロシア-ウクライナおよびイスラエル-パレスチナの戦争に注がれている。だから「2つの戦争」という言葉が流行している。しかし、現実はそうではない。国連は今年1月に、全世界の紛争の水準が第2次大戦終戦以降の最高値に達したと発表している。2022年の時点で全世界で55の武力衝突が起き、2020年前後の戦争の平均持続期間も以前の長さにその約3分の1がプラスされた8~11年を記録したとするスウェーデンのウプサラ大学とノルウェーのオスロ平和研究所の共同研究結果も、国連の発表を後押ししている。

 このような状況は何を意味するのだろうか。まず戦争がはじまると、休戦や終戦は非常に難しくなっている。また、国連や米国をはじめとする大国の仲裁努力も少なくなっており、その力量も大幅に落ちている。そのうえ大国が直接・間接的に戦争に介入していることで、状況はいっそうこじれている。「国際平和と安定」のために様々な特権を与えられている国連安保理の常任理事国が戦略競争に余念がないということが、大きく影響している。何よりも対立を仲裁・解決し、戦争を防止する外交がほば失われているのが、こんにちの世界の現在地だ。

 「戦争は始めるより終わらせる方が難しい」という教訓を遠くから探してくる必要もない。まさに朝鮮半島こそ、終戦も平和協定も70年以上ない「停戦状態」に置かれているからだ。そのような朝鮮半島において、再び戦争の可能性を懸念しなければならない状況が造成されつつある。2019年に朝鮮半島平和プロセスが座礁してから確実に積み重なってきていた危機の兆候は、先日南北が9・19軍事合意の無効化を宣言したことで、よりいっそうはっきりとしてきている。偶発的な衝突と拡大を防止する「ガードレール」の一つが除去されつつあるからだ。このような事情にもかかわらず、危機の収拾を目指す外交は失われた状態にある。

 2018年12月に中断された南北対話は、空転状態が1971年以降で最長となっている。2019年10月に中断された朝米対話も同じだ。北朝鮮は対話の扉を固く閉ざしており、韓米は「対話の扉は開かれている」と述べつつも、そのための実質的な努力はしていない。では、朝鮮半島危機を打開する代案はないのだろうか。私は、南北と米中日ロが参加する中で2003年から2008年まで行われた6カ国協議の創意的な復活が必要だと思う。いくつかの理由がある。

 第1に、危機管理の有用性だ。6カ国協議に対する評価は様々ありうるが、この多国間会議が2000年代前半に朝鮮半島危機の管理と防止に貢献したことだけは明らかだ。当時の米国のブッシュ政権は、北朝鮮をイラク、イランと共に「悪の枢軸」、かつ先制攻撃の対象と規定していた。朝米ジュネーブ合意も破棄され、北朝鮮は核兵器開発に本格的に乗り出していた。また米国は北朝鮮との2国間対話を強く拒否していた。6カ国協議は、このような状況の収拾に大きく貢献した。現在も南北・朝米関係は最悪へと突き進んでいるが、2国間対話の可能性は非常に低い。過去の例に照らし合わせ、対話は危機の防止と管理に寄与するという点を考えれば、そこに6カ国協議の有用性を見出すことができる。

 第2に、朝鮮半島問題の6カ国化だ。最近の朝中、朝ロ関係は、北朝鮮の不可逆的な核保有国宣言と核の高度化にもかかわらず、1990年代初頭以降で最も深まっている。特に朝ロ関係は軍事協力すら可視化している。韓米・日米同盟も日増しに強まっており、韓米日関係もやはり3カ国軍事同盟といえるほど癒着しつつある。そのため、朝鮮半島問題をめぐって「韓米日」対「朝中ロ」という対決構図が本格化するのではないかという懸念も高まっている。これは逆に、6カ国が集って6カ国が共に朝鮮半島の緊張緩和に努めなければならないということを意味する。

 第3に、実現の可能性だ。議長国である中国は6カ国協議の再開が必要だという原則的な立場と、「双中断」および「双軌並行」に代表される均衡的な解決策を維持してきた。また、中国は6カ国の中で他のすべての加盟国と意思疎通できる唯一の国だ。先日、激しい競争と対立を繰り広げてきた米国や日本と首脳会談をおこなったことからも、それが分かる。大きな注目は集められなかったが、ロシアの提案も注目に値する。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は10月19日、北朝鮮のチェ・ソンヒ外相との会談後の記者会見で、朝中ロは「前提条件なしに朝鮮半島の安保問題を話し合うための定期的な交渉プロセスを構築することを支持する」と述べた。6カ国協議という名称は使っていないものの、内容的にはそれを意識した発言だ。韓米日も北朝鮮との対話の必要性を絶えず提起してきた。これらを総合すると、6カ国協議の再開を通じて朝鮮半島の緊張緩和を図ることが最も現実的な選択となりうる。

 6カ国協議が実現したら、最大主義ではなく最小主義からはじめることが望ましい。6カ国協議は当初、朝鮮半島の非核化と平和体制の構築、南北関係の発展と朝米・日朝関係の正常化、北東アジア平和安保体制の構築を目指していた。しかし短期的には、このような目標を実現することは不可能だ。特に韓米日が強調してきた非核化や、北朝鮮が要求してきた米国の敵視政策の撤回がそうだ。このような状況で最大主義の目標を掲げれば、6カ国協議は口げんかに終わり、状況のさらなる悪化へとつながる公算が高まる。

 したがって最小主義の課題を設定し、まずはその実現を目指す必要がある。肝心なのは、朝鮮半島における偶発的な衝突とその拡大を防止するとともに、崩壊した軍事的信頼を回復する措置を講じることだ。これは、まず既存の合意を復活させることから始められる。崩壊した9・19軍事合意と南北ホットラインの復元、北朝鮮の核実験、および弾道ミサイル技術を用いたすべての発射の中止と、大規模な韓米合同演習の中止がそれに当たる。また、朝ロ軍事協力の中止と、米国の朝鮮半島戦略資産の展開および韓米日合同演習の中止も議論の対象にしておく必要がある。6カ国が武力の使用および威嚇をしないという消極的な安全保障を宣言することも同様だ。

 6カ国が「共同研究グループ」を作ることも考慮に値する。このグループでは中長期的かつ根本的なアプローチが必要不可欠な事案、すなわち朝鮮半島の核問題の解決、停戦体制の平和体制への転換、北東アジア平和安保体制の構築、朝米・日朝関係の正常化、北東アジアにおける軍備統制と軍縮の推進などの問題が扱えるだろう。もちろん、当事者の立場が鋭く対立する可能性はある。協議体をまず共同研究グループとして提案した理由もここにある。6カ国を含む国際社会の民間専門家たちが参加する集まりになれば、さらに良い。民間の専門家たちの方が、率直ながらも創意的でバランスの取れた意見を提示できるからだ。

チョン・ウクシク|ハンギョレ平和研究所所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1117955.html韓国語原文入力:2023-11-27 10:00
訳D.K

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