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[コラム]尹大統領の「米国夢、中国夢、総選挙夢」外交

登録:2023-11-24 00:36 修正:2023-11-24 08:20
パク・ミンヒ|論説委員
尹錫悦大統領と中国の習近平国家主席が2022年11月15日(現地時間)、インドネシアのバリ島のホテルでおこなわれた韓中首脳会談で握手を交わしている/聯合ニュース

 春までは「中国たたき」に意気込んでいた尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、夏以降「中国との関係管理」に対してにわかに自信を示しはじめた。9月にはチョ・テヨン国家安保室長が自ら「習近平主席の訪韓の可能性」まで予告し、期待を非常に高めた。当局者たちは「韓中関係の管理は非常にうまくいっている」と豪語した。

 結局、その期待はアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議で習近平主席が尹大統領との首脳会談を拒否したことで、水泡に帰した。

 誤判断の原因は何だろうか。まず、尹錫悦政権の「中国夢」だ。尹錫悦政権の外交・安保当局者たちは「8月のキャンプデービッド首脳会談で韓米日は事実上の準同盟国になったのだから、韓国の戦略的地位が高まり、中国は韓国に握手を求めてくるだろう」と期待した。国際秩序が極めて不安定な中、韓国にとって米国と日本との協力の強化は必要ではある。問題は、それをテコとしてどのような外交を展開するかだ。米国、日本などは韓米日の「準同盟化」で中国に対する圧力のテコを強化すると同時に、緻密に中国との外交チャンネルを稼動して成果を出しはじめている。

 韓国も、日米の後を追って動かなければならないということに遅まきながら気づいた。ところが、ちょうどその頃に「中国経済危機論」、「チャイナピーク論」が騒がしくなった。当局者たちは「中国は衰退へと向かいはじめた。焦っているのは中国の方」だとの誤った判断を下した。中国経済が厳しくなっているのは事実だ。不動産に依存した成長モデルの限界、習近平体制の硬直した党・国家主導の経済政策、安保強迫的政策が経済を抑えつけている。

 しかし、電気自動車をはじめとする中国の先端製造業の競争力は強大だ。明暗は共存している。何よりも、中国の成長が鈍化したからといって、中国が滅びるわけではない。米中競争は長期間続くだろうし、米国の孤立主義がさらに強まれば、アジアにおける中国の影響力は予想より急速に強まる可能性もある。

 尹政権の「中国亡国論」は、「北朝鮮が経済難で崩壊すれば、核問題は自然に解決されるだろう」とする「北朝鮮崩壊論」が保守政権で絶えず繰り返されてきたのと似ている。難しい問題を冷徹に分析し、長期戦略を立てて粘り強く外交によって実現することはできずに、安易な「期待」に依存しているのだ。

 尹大統領の「米国夢」も時代錯誤だ。尹大統領の頭の中の「米国」は、世界秩序を左右していたかつての米国だ。彼は、米国の後ろにさえ立っていれば、「アメリカンパイ」を熱心に歌っていれば、米国が韓国の安保、外交、経済の難題を解決してくれると勘違いしているようにみえる。

 米国の大統領選挙まで、あと1年もない。「トランプの帰還」の可能性は高まっている。もちろん今は誰が勝者となるかは分からないが、問題はトランプ個人ではない。「米国第一主義」と孤立主義はすでに大きな流れになっている。かなりの数の米国人が、米国が国際秩序を維持し、世界各地に介入することに金と力を使わないことを求めている。「フィナンシャル・タイムズ」は、「バイデン大統領は『同盟を基盤とした国際秩序』を守ることを目指す最後の米国大統領になるかもしれない」と警告した。

 尹錫悦政権が最近になって対中関係の改善を叫んでいるのは、「総選挙夢」が大きな理由だ。北朝鮮の核の脅威の管理や経済問題などで中国とどこまで協力し、何を警戒するかについての戦略ではなく、「文在寅(ムン・ジェイン)政権は中国に屈辱外交を展開していながら食事すらも一人でさせられたが、自分たちは日米の側に立ちつつも中国から優遇されている」ということを示そうとしたのだ。中国が尹政権の計算に気づいていないはずがない。習近平主席は、日米はもとよりメキシコ、フィジーとも首脳会談を行いながら、尹大統領との会談は拒否した。「目を覚ませ」という警告だ。韓中日首脳会談も来年4月の総選挙前におこなうのは困難だとみられる。

 尹大統領は20日に英国に向かう際、英国メディアとのインタビューで、「中国とロシア、北朝鮮は利害が異なる」としつつ、「中国の役割が重要だ」と述べた。朝ロの軍事協力と距離を置き、韓国と協力しようという中国へのメッセージだ。まさにその日、中国外務省の報道官は尹大統領に対して「中国が何をしようが何をしまいが、他人があれこれ言ってはならない」と応じた。極度に危険が高まっている朝鮮半島情勢について、中国に尹錫悦政権と協力する意思はない。

 ある外交専門家は、「米中の間で原則を確立し、中国とはどの程度の外交空間があるのかを明確にしながら対話しなければ、生産的な結果は導き出せない。単に対話しようと言ってばかりいては、成果を期待するのは難しい」と診断する。

 米国と日本は中国との通路を開削したにもかかわらず、韓国だけが「孤立」を自ら招いてしまった。そのような中、中国は韓国に圧力をかけ続けることで、尹大統領が今年4月の米国国賓訪問を前に台湾について「出過ぎた」発言をしたことの代価を受け取ろうとするだろう。

 毎月の外遊で忙しい尹大統領の外交とは何だったのか。英語による演説と豪華な「国賓儀典」で忙しかった。儀典と外交を勘違いしてはならない。中国から高価な請求書が送られてくるはずだから、しっかり準備してほしい。

パク・ミンヒ|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1117519.html韓国語原文入力:2023-11-23 11:17
訳D.K

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