「イタリア人がアフリカに行く時、ビザが必要ないケースが多い。飛行機のチケットを買うだけでよい。一方、アフリカ人が欧州に来るためには数多くの官僚的手続きを経なければならない。両者の間にどんな違いがあるというのか。これが今存在する不正義だ」
アフリカなどから欧州にやって来る移民が今年だけで13万人以上になったイタリア最南端の島、ランペドゥーザで今月4日(現地時間)に出会ったサラ・ハイラさん(28)は、こう言った。サラさんは「人道主義的な緊急状況」に直面するこの島で、2年間にわたって働きながら、地中海を横断してくる移民の救助作業にかかわっていた。サラさんも6歳の時に西アフリカから両親に連れられてイタリアにやって来た移民2世だ。多くのアフリカ人にとってパスポートなど無意味だ。
2013年10月3日にランペドゥーザ島の海岸で368人の移民が命を落とした惨事の10周忌を追悼するため、島を訪れたというサラさんと、偶然出会って交わした会話が忘れられない。サラさんは、現在の移民問題を過去の欧州のアフリカ植民地支配と関連付けながら、反移民政策を展開する欧州は偽善的だと言った。「歴史的に西洋はアフリカを数百年間にわたって植民地支配してきた。アフリカ人を強制的に連れてきて、ただで欲しいものを搾取した。今や西洋は十分に発展しており、すべてが良い状態にある。しかし、もうアフリカ人は望まないという。これが偽善でなくて何なのか」
10年前のランペドゥーザ沖の事故で死亡した人々の多くはエリトリア出身だった。イタリアの最初の植民地だった国だ。1880年代から欧州各国は経済的、戦略的利益を得るために、アフリカで植民地獲得競争を繰り広げた。英国はスーダンとアフリカ南部の大半の地域を掌握し、フランスはアフリカの西部と北部の地域を支配した。ドイツ、ベルギー、イタリア、ポルトガルなども競争に飛び込んだ。西欧の主要国で、植民地支配の歴史に関与しない国は見当たらない。
にもかかわらず、現在の欧州各国では「移民は国益を脅かす」という宣伝が力を得ている。シチリアでホステルを営むマリ出身の移民アリさんは、「マスコミは移民問題を扱うが、実際に彼らがなぜあのような危険を冒すのか、欧州にやって来て人生がどのように変わるのかはあまり話さず、政治家は移民に対する嫌悪と恐怖を作り出す」と吐露した。欧州に定着した移民たちが社会に貢献する肯定的な側面はなかなか表に出ず、雇用を横取りしたり犯罪に手を染めたりするというレッテルを貼っているというのだ。移民の大半は、飢え、戦争、独裁政権、宗教的迫害、気候危機などの様々な理由で、持っているものを捨て、命をかけた旅を決心する。
人口減少で労働力が足りない欧州には移民が必要であり、移民は経済発展に大きく役立つという論理は、もはや目新しいものではない。しかし忘れてはならないのは、すべての人間はより良い人生を生きる権利があるということだ。「あらゆる人が自分の国で、自由で公正で安全に生きられるようになるべきだ」。ランペドゥーザの難破事故の最初の救助者である村の元老、ビト・フィオリーノさんの言葉が重く迫ってくる。