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[寄稿]韓国、価値観同盟に固執していたら孤立する…BRICSで生存外交模索すべき

登録:2023-08-18 08:04 修正:2023-08-18 09:05
イ・ブヨン|自由言論実践財団名誉理事長
昨年6月23日、オンラインで開催された第14回BRICS首脳会議に南アフリカ共和国(左上から時計回り)、中国、ブラジル、インド、ロシアの首脳が出席している=北京/新華・聯合ニュース

 韓国メディアではほとんど目立たないBRICS(ブリックス)という単語が、世界の主要メディアにはたびたび登場する。ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国の頭文字だ。領土が広く1億以上の人口を抱える開発途上諸国だ。ロシアは資本主義体制へと転じたが、かつては米国と張り合っていた超大国ソ連の後身だ。ロシアを除いて、これらの国は第2次世界大戦以前までは米国、日本、西欧諸国に帝国主義植民地支配を受けていた。60年あまりが過ぎた2009年から独自の声をあげはじめている。

 この5カ国は今年8月22~24日、南アフリカのヨハネスブルグで第15回首脳会議を開催する。トルコ、アルゼンチン、イラン、インドネシア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプト、アルジェリア、メキシコ、ナイジェリアなどがBRICSへの参加を希望している。参加には創設5カ国すべての賛成が必要だ。BRICSは創立以来、「ブレトン・ウッズ体制」(統制型の国際金融システム)に代表される欧米中心の国際秩序の改編を目指してきた。この過程でBRICSは、他の開発途上諸国の声を同等に反映すると表明してきた。中国、ロシアを含むBRICSにサウジアラビア、イラン、アラブ首長国連邦という主要産油国まで加われば、米国をはじめとする主要7カ国(G7)に挑戦する勢力が登場すると評価される。彼らはブレトン・ウッズ体制の象徴である国際決済通貨のドルに代わる「BRICS通貨」の導入なども議論する予定だ。2014年6月15日にブラジルのフォルタレザで行われた第6回首脳会議は、新開発銀行(NDB)を創設した。資本金1000億ドル、準備金1000億ドルの規模を持つものだ。同行はBRICS諸国の輸出入銀行と協力している。ブレトン・ウッズ体制に赤信号がともった。

 BRICS運動は1955年にはじまった。植民地主義帝国主義の時代は終わりを迎えつつあり、長くは300年以上、短くは40~50年にわたって植民地支配を受けてきた数多くの国と民族が独立を迎え、あるいは民族解放戦争を展開した。1955年、インドネシアのバンドンで中国の周恩来、インドのジャワハラル・ネルー、ユーゴスラビアのヨシップ・ブロズ・チトー、エジプトのガマル・アブデル・ナセル、インドネシアのスカルノが、二大超大国の米国とソ連から中立的地位を守るという非同盟運動を宣言した。彼らはかつて大国に対して反植民地闘争を展開した国と民族の指導者たちだ。バンドン精神は、第2次世界大戦後に植民地の宗主国が再び植民地に戻ってきて抑圧と搾取を再開しようとすることに対して反対するだけでなく、米国とソ連が資本主義と共産主義の二大イデオロギー陣営に新生独立諸国を編入しようとすることを拒否する「非同盟宣言」でもあった。1990年を前後して、ドイツ統一を機にソ連とワルシャワ条約機構が解体されたことで、米国一極体制の脱冷戦時代が到来したが、改革・開放政策によって世界の工場として登場した中国が米国の一極体制に挑戦しはじめた。イデオロギーを越えて米国と日本、そして西欧先進諸国に対する代案運動を展開する契機を作った。

 韓国は開発途上国から先進国入りした唯一の国だ。韓国を見つめるBRICSをはじめとする新生開発途上国の視線は複雑だ。自分たちと何ら変わりのない植民地支配の被害国でありながらも米国、日本、NATOに友好的な国に韓国を分類している。民主化、産業化だけでなく、文化国家として開発途上国の羨望の対象となっている。韓国の将来の市場は、先進国よりも世界のほとんどを占める開発途上国にある。彼らに必要な中上級技術と製品を最も多く保有している。韓国製の洗濯機、テレビ、エアコンなどの家電製品は最高の人気を博している。いまだに分断の苦しみを強いられている韓国に同質感と連帯感を示している。

 しかし尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、大多数の開発途上国が忌避するかつての植民地支配国に密着している。欧米先進国の軍事同盟であるNATOの首脳会談に行き、戦争中のウクライナを訪問している。時代錯誤的な価値観同盟と、朝鮮半島を植民地支配した日本に接近している。国際会議で出会った外国の知識人たちは、韓国の脆弱な民主化に疑問を呈し、朝鮮半島の戦争危機を懸念してもいた。

 尹錫悦大統領の発想の転換が必要だと思われる。第15回BRICS首脳会議に関心を表明するか、少なくとも外相をオブザーバーとして出席させることはできるだろう。途上国から孤立する可能性を事前に防ぐことが必要だ。朝鮮半島の地政学的地位にふさわしく、米国、日本、NATOだけでなく、今や世界史の新たな主役になろうとしている途上国にも近づく生存外交が必要だ。

//ハンギョレ新聞社

イ・ブヨン|自由言論実践財団名誉理事長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1104557.html韓国語原文入力:2023-08-16 18:44
訳D.K

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