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[寄稿]国益を放棄しながら価値観に没頭する国、韓国

登録:2023-06-12 04:05 修正:2023-06-12 08:03
米国と欧州、あるいはその他の国々も現在の利益を維持しつつ、新たな変化に対応する。日本でさえ米中間で、あるいは米ロ間で、核心利益がかかっていれば損をしないように二者択一を避けようとする。友好同盟国間のサプライチェーンといえど、その中にあっては競争関係だということを知るべきだ。
 
キム・ヨンチョル|元統一部長官・仁済大学教授
尹錫悦大統領と中国の習近平国家主席が昨年11月15日、インドネシアのバリで対面し、握手を交わしている/聯合ニュース

 サプライチェーン分離(デカップリング)からリスク低減(デリスキング)への転換か。

 米国も欧州もリスク低減を強調している。グローバリゼーションを通じて絡み合うようになったサプライチェーンを分離することは、そもそも困難だった。かといって分離戦略の放棄ではない。サプライチェーンの分離という意志と相互依存という現実の格差を認めたうえで、スピードを調節しているのだ。転換の過程では常に過去と未来が、協力と競争が混じり合う。デリスキングというスローガンの下に隠された利益の違いを見極める必要がある。

 米国は先端産業では分離を、伝統産業では依存を選択した。半導体やバッテリーなどの戦略産業では中国との分離を目指し、友好同盟国同士でサプライチェーンを作ろうとしている。しかし同時に、中国との経済的相互依存の現実は認めざるを得ない。2022年の米国と中国との貿易額は6906億ドルで過去最大だった。中国は世界の製造業のサプライチェーンにおける最大の中間財調達者であり、提供者である。米中貿易において相互依存度の高い分野が中間財であり、特に米国の核心産業とつながる電気・機械、石油化学、非金属鉱物の分野において中国とサプライチェーンを分離することは、現実的に不可能だ。

 バイデン政権は「中産層のための外交」を目指し、中国に出ていった製造業を国内に呼び戻そうとしているが、容易ではない。米国政府は安保でアプローチするが、企業は経済で判断する。中国に進出している米国企業が、人件費が安く、原材料の調達が容易で、それゆえ生産コストが削減でき、その一方で巨大な消費市場を抱える中国を放棄できるはずがない。補助金で企業の経済的利益を相殺するのは困難だ。

 米国の消費財市場の中国依存はさらに深刻だ。金利を引き上げることで物価を抑えようとしている米国が、安価な中国製消費財を阻止するのは難しい。中国に中間財を依存するのも、結局は生産コストの節減のためだ。サプライチェーン分離と物価管理は衝突せざるを得ないし、選挙のある民主主義国家においては安保の論理が市場の論理に勝つのは難しい。

 欧州は米中戦略競争とロシア・ウクライナ戦争の過程で「開かれた戦略的自律性」を追求してきた。文字通り開かれた概念で、エネルギー依存度の差によってロシア制裁への参加水準が異なり、産業構造の違いによって米中競争における位置取りが異なる。昨年11月のドイツのオラフ・ショルツ首相に続く、今年4月のフランスのエマニュエル・マクロン大統領の訪中には共通点がある。大規模な企業代表団が同行し、大規模な契約を交わしたのだ。欧州は価値観ではなく利益を、分離の未来ではなく依存の現実を重視する。世界的な経済危機においてはやむを得ない選択だ。中国は米国と欧州を分離するため、この隙間に食い込んでいる。

 現在、本当にリスク低減が必要なのがまさに韓中関係だ。先日、中国のアジア担当局長が訪韓し、従来の韓中THAAD合意の重要性と韓中関係における越えてはならない一線を伝えてきた。このように中国は危険を警告したが、政府には緊張緩和の意志はなさそうにみえる。政府と与党、そして保守メディアは「脱中国」という理念を叫ぶばかりで、数十年間にわたって積み重ねてきた相互依存が空白になった時に、それをどのように埋めていくかについての戦略がない。

 サプライチェーンの再編は長期的な過程だ。米国と欧州、あるいはその他の国々も現在の利益を維持しつつ、新たな変化に対応する。日本でさえ米中間で、あるいは米ロ間で、核心利益がかかっていれば損をしないように二者択一を避けようとする。友好同盟国間のサプライチェーンといえど、その中にあっては競争関係だということを知るべきだ。政府と企業は、安保と経済との間で活発に意思疎通しなければならない。

 韓中貿易において構造的に貿易赤字が膨らみ、それが貿易収支を悪化させている中、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は急速に韓中関係を悪化させている。中国に進出している企業の焦りはつのっており、中国製中間財に依存して輸出競争力を保っている韓国製造業の状況も急速に悪化している。中国との関係の悪化で物価管理にも赤信号が灯って久しい。

 世の道理もサプライチェーンの転換も単純ではなく複雑だ。生きていれば数えきれないほどの二者択一を強いられるが、解決の出口は常にバランスだ。特に転換期においては柔軟さこそ生存の秘訣だ。価値観外交? 過去であれ現在であれ未来であれ、国家利益を放棄し価値観外交を追求した国があるだろうか。利益ばかりを追求する国は多い。利益のために価値観を選択的に利用する国も少なくない。しかし尹錫悦政権の韓国ように国益を放棄し、価値観に没頭する国はない。

//ハンギョレ新聞社

キム・ヨンチョル|元統一部長官・仁済大学教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1095448.html韓国語原文入力:2023-06-11 18:48
訳D.K

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