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[コラム]目覚めてみれば後進国6…現実を痛感させられたジャンボリー

登録:2023-08-15 01:52 修正:2023-08-15 09:59
「危機」を作ったのは政府であり、「対応能力」を示したのは国民だ。本当に手のかかる政府だ。政府が国民を心配するのではなく、国民が政府を心配しなければならない状況だ。 

クォン・テホ|論説委員室長
11日、ソウルワールドカップ競技場で「ジャンボリーK-POPスーパーライブコンサート」が開かれ、IVEが公演している=文化体育観光部提供//ハンギョレ新聞社

 韓国で全国民が気をもんでいた「2023セマングム世界スカウトジャンボリー」大会がついに終わった。ジャンボリーで露呈した尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の無計画・無能・無責任は、もはや驚くべきではない。ただ、内心「もう韓国も先進国」だという自負を持っていた韓国国民は、一夜にしてシーシュポスになったかのように過去に引き戻された虚しさに襲われた。道端でジャンボリー隊員に会った市民が「申し訳ない」と言いながらミネラルウォーターやアイスクリームをあげたりしたのも、このような心境のためだろう。ところが、尹錫悦政権の後進性は事態収拾の過程でさらに浮き彫りになった。

 戦時国家動員令を連想させるほど、企業や大学など民間部門が資産とサービスを集中投入しなければならなかった。過程も型破りの連続だった。突然コンサートの日付と場所が変更され、出演を取り消したIVE(アイブ)が「ジャンボリー隊員との約束を守るために」(パク・ボギュン文化体育観光部長官)予定されていた他のスケジュールを変更して出演し、コンサートの日に開かれる予定だった「韓国放送(KBS)」の「ミュージックバンク」が取りやめになり、当初出演予定がなかったNewJeans(ニュージーンズ)もこのコンサートの舞台にあがった。ソウルワールドカップ競技場では急遽決まった大規模な行事を行うため、台風の北上で雨風が吹きつける行事前日にも舞台の準備が行われた。国難を克服するため、全国民が和合団結し、危険を冒して奮闘した。文化体育観光部はカカオフレンズのキャラクター商品と防弾少年団(BTS)のフォトカードなどが入った「コンサート・リメンバー・キット」を約4万3千人のスカウト隊員全員にプレゼントした。HYBE(ハイブ)が8億ウォン(約8700万円)、カカオが10億ウォン(約1億900万円)を支援したという。文化体育観光部はいずれも「自発的」な支援だと強調した。同一線上で比較するのは難しいかもしれないが、朴槿恵(パク・クネ)政権でもミル財団とKスポーツ財団に韓国の40社以上の企業が774億ウォン(約84億2千万円)を「自発的」に拠出した。キム・ヒョンスク女性家族部長官はこのような状況について「危機管理対応能力を示した」と述べた。「危機」を作ったのは政府であり、「対応能力」を示したのは国民だ。本当に手のかかる政府だ。政府が国民を心配するのではなく、国民が政府を心配しなければならない状況だ。

故チェ・スグン上等兵の捜査と関連し、「集団抗命首壊」の疑いで立件されたパク・チョンフン前海兵隊捜査団長が11日、ソウル龍山区国防部検察団前で立場を表明するため、待機している/聯合ニュース

 ある国の政府が「後進的」と言われるのは、その国の経済水準以外にも、国家運営が体系的ではなく、重要な決定が独断によって即興的かつ非公式的に下され、過程が不透明で責任所在が不明確で暴力的な様相を見せる時だ。そのような点で、尹錫悦政権の後進性は、豪雨被害による行方不明者の捜索命令を遂行する過程で死亡したチェ・スグン上等兵事件の捜査過程でさらに克明にあらわれる。海兵隊捜査団は救命胴衣も着用せず急流に兵士を投入したことについて、イム・ソングン海兵隊第1師団長以下8人に過失致死の疑いがあるという結論を下し、7月30日に国防長官に報告して決裁を受けた。ところが翌日、その決定が突如覆された。キム・ゲファン海兵隊司令官が「長官の指示」だとして保留を指示したが、これを受け入れなかった捜査団が8月2日に慶北警察庁に捜査結果を移牒し、これに対し軍検察がパク・チョンフン捜査団長を「集団抗命首壊」の疑いで立件した、というのが国防部の主張だ。ところが、パク捜査団長の言い分は違う。司令官に「すでに(7月)28日に遺族にも説明した状態なので、遺族が反発する可能性もある」とし、警察が判断した方が良いという意見を示しており、司令官は「どうしよう、どうしよう」と言うばかりで決定を下せなかったという。また、パク捜査団長は「国防部が『直接的過失のある人』(大隊長以下)に(容疑を)限定すべきだ」という意見を示したとも語った。これに対し、国防部は「初級幹部にまで業務上過失致死容疑を指摘したのは行き過ぎだ」と、正反対の主張を展開している。「大隊長以下」と「以上」のどちらが処罰されるかを見れば、誰の話が事実なのか分かるだろう。

 幹部8人の過失致死容疑に対して「行き過ぎ」だと判断できるかもしれない。ならば、これは決裁の段階で言及すべきことだ。また、現場との意見の相違があったなら、文書で根拠を残して責任の所在を明確にしなければならない。だが、口頭や電話で話すだけで処理する。真実をめぐる攻防が繰り広げられるのもそのためだ。現場の「忖度」で処理してほしかったからだろう。卑怯極まりないやり方だ。パク捜査団長の「抗命」ではなく、「外圧疑惑」を捜査しなければならない。それが先進的であり、その逆は後進的だ。

 最後に、14日のキム・テウ前江西区庁長の特別赦免は後進性の頂点ともいえる。最高裁の有罪確定判決が言い渡されてからわずか3カ月で、政府がそれを覆した。司法府の判断を批判することはできる。しかし、政府が裁判所の判決が気に入らないからといって、露骨にそれを無効化するのは、民主主義の根幹である三権分立を崩すことだ。尹錫悦政権は総統制を望んでいるのか。

 「目覚めてみれば後進国」だ。国民が政府の言うことにそのまま従わず、裁判所が政府の望む通りに判決せず、マスコミが政府の望む通りに記事を書かないこと。それが先進国であり、それが「自由」だ。

大統領府特別監察班の民間人査察疑惑などを暴露した疑い(公務上秘密漏洩)で起訴されたキム・テウ元江西区庁長(元検察捜査官)が昨年8月12日、京畿道水原市の水原地裁で開かれた2審判決公判を終えて裁判所を後にしている/聯合ニュース

(昨年11月11日分から2月24日分までパク・ヒョン論説委員が「目覚めてみれば後進国」というコラムを5本連続で書いた。このコラムの題名はそれを引き継いだ番号を付けた)

//ハンギョレ新聞社
クォン・テホ|論説委員室長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1104302.html韓国語原文入力:2023-08-14 2023-08-15 00:37
訳H.J

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